東京オリンピック開催決定。長期投資家は相場観を感じ取り、早め早めの行動あるのみ!
夏枯れ相場が終わり、いよいよ秋相場に入っていこうとしていたタイミングで、2020年のオリンピックとパラリンピックの開催が東京に決まった。日本中がパッと明るくなり、待ってましたとばかりに株価はぶっ飛んだ。だが、それも5月下旬からの調整局面の戻しにすぎない。当然のことながら、われわれ長期投資家はいつもの応援投資にいっそうの気合を入れることだ。

オリンピック相場はリズムよく捉える投資戦略が必要だ

2020年の東京オリンピック、そしてパラリンピック開催決定を受けて、株式市場ではゼネコンなど、オリンピック関連銘柄が人気を博している。神宮外苑のメインスタジアムの建設だけでも、1300億円。競技関連施設を含めると、約5000億円は投入されるだろう。

といっても、これは7年間で投入される金額。年換算では700億円ほどでしかない。したがって、オリンピック相場で株式市場は大騒ぎしているが、そう長続きはしないとみる。まあ、折に触れてオリンピックをテーマとした相場が繰り返されるだろうから、それをリズムよく捉えていく投資戦略で行こう。

具体的には、その恩恵にあずかる企業の株を安いときに買っておくこと。そして、オリンピック関連で相場が吹いたら、着実に利益確定する。その作業を淡々と繰り返すのだ。われわれ長期投資家は、そのくらいの冷静さをもって、オリンピック開催を歓迎しようではないか。

オリンピック関連施設の建設は5000億円ほどだが、全体では3兆円の経済効果があるといわれている。だから、この相場はもっと大きなものになるはずだ。

では、どんな業種や企業が3兆円の恩恵を受けるのだろうか。

これとこれだと、具体的には言えないだろう。それが普通だ。経済効果とは、経済活動全体を押し上げるということで、具体的に産業や企業を特定できなくて当たり前だ。だからこそ長期投資家の出番となる。なにしろ、われわれ長期投資家はいつも将来に向けてのイマジネーションを大事にする。それも、しなやかに柔らかく将来の可能性を想像する力だ。

開催決定をきっかけに、老朽化した首都高速道路など交通インフラの整備は一気に進むだろう。圏央道など進捗中の工事も促進されるだろう。

オリンピックでは国の予算投入とは別に、民間資金が相当に動く

リニア中央新幹線の開業は間に合いそうにないが、全国各地で道路や橋、トンネルなどの補修強化工事の加速が予想される。また、福島の原発汚染問題は完全にクリアされなければならない。そうでないと海外から観光客を呼び込めないので、国を挙げての大事業が展開されるはずだ。

そういった国の予算投入とは別に、民間資金が相当に動くと推測される。それは、オリンピック関連ということではなく、もっと大きな意味でということだ。

簡単な話、開催が決まっただけで日本中がこれほど明るくなったではないか。その分は、間違いなく経済活動を活発化させる要因となる。

それが個人消費を刺激したり、企業の拡大投資を促したり、経済のあらゆる分野で前向きの動きが高まる。そう、開催決定はアベノミクスですでに動き始めていた日本経済を一段と加速させる効果を引き出してくれるのだ。

ということは、オリンピック関連に投資対象を絞り込まず、もっと広範囲に?景気回復を買う〞投資戦略を進めればいい。

焦点を絞るとすれば、国内関連ビジネスが狙い目だ。オリンピックの開催決定で、マスコミをはじめ、海外からの観光客は急増するだろう。その人たちが「日本で、何を見つけるか」を推測するのも、われわれ長期投資家にとっては大事な作業となる。

ひとつ例を挙げるとすれば、温水洗浄便座だ。「ウォシュレット」の名でおなじみのこの商品は、日本では当たり前のものとなっているが、海外ではまだ普及が始まったかどうかといった段階である。

訪日客が日本滞在中にホテルやレストランはじめ、至るところでこの便座を使い、そのよさや快適さのとりことなってしまう。それを自国に向けてどんどん発信してくれるとなれば、日本の温水洗浄便座は海外でどんどん普及していく大きな起爆剤となる。そして、それをきっかけに、日本の節水型トイレへの評価も一気に高まることだろう。

日本を訪れる多くの人々が、進化中の日本を知ることになる!

ひとつの動きが始まると、人々の連想は横へ横へと広がっていくものだ。調べてみると、節水型の洗濯機や?超〞のつく省電力タイプの冷蔵庫やエアコンなどが日本にはゴロゴロしている。それらを家電量販店で実際に見ることで、海外からの訪日客は日本製品を再認識することになるはずだ。

すると、液晶テレビでは惨たんたる敗北を喫した日本の家電業界が、意外としぶとく業績拡大の手を打っていることを彼らは知る。なにしろ、今や2万円台、3万円台の液晶テレビに対し、省電力タイプの冷蔵庫は高額なものでは1台30万円以上もするのだ。どちらが、よりうまみのあるビジネスかは考えるまでもない。日本を訪れる多くの人々が進化中の日本を知ることになる。

そのあたりのことを踏まえ、今後の投資戦略をじっくり考えてみようではないか。

澤上篤人(ATSUTO SAWAKAMI)
さわかみ投信取締役会長

1947年、愛知県名古屋市生まれ。73年、ジュネーブ大学付属国際問題研究所国際経済学修士課程履修。ピクテ・ジャパン(現・ピクテ投信)代表取締役を経て、96年にサラリーマン世帯を対象にさわかみ投資顧問(現・さわかみ投信)を設立。『5年後の日本をいま買う長期投資』(小社刊)、『今から長期投資を始めて2億円にしよう!』(主婦の友社)など著書多数。



この記事は「WEBネットマネー2013年12月号」に掲載されたものです。