フランスの週刊誌『カナール・アンシェネ』が、日本が2020年の夏季オリンピックの開催地に選出されたことを風刺する漫画を掲載したことは記憶に新しいところ。同誌は日本から寄せられた非難の声に対し、「責任をもってこの風刺画を掲載した。いささかも良心に反するところはない」とコメント。日本人にはユーモアのセンスがないと嘆いたというニュースが話題になりました。日本人に対する「ユーモアがない」という印象は、海外では以前から語られていたところです。また、日本人のイメージについて外国人に調査すると、必ず上位に挙げられるのが「勤勉」という言葉。この「ワーカホリックで笑いのセンスに乏しい」というようなイメージは、日本人自身の自己認識にも少なからず影響を与えているようです。直木賞作家の五木寛之氏は、11月26日に発売になった『新版 生きるヒント1』のなかで、その認識に対して異を唱えています。五木氏が回想するのは、ラスベガスに滞在したときに目にしたとある光景。マイクを前にジョークを連発する芸人に対し、アメリカ全土から集まった観客たちが、悲鳴のような声をあげながら笑い続けていたことへの違和感でした。生存競争のすさまじい自由主義社会で生きているアメリカ人は、バカンスに行ったり、そこで笑いを切実に求めたりすることで精神のバランスをなんとか取り戻しているのではないか、と分析します。一方、日本人は新聞を読んだり、打ち合わせと称して喫茶店に行ったり、仕事が終わったら同僚や先輩と麻雀をしたり、接待を兼ねてゴルフに行ったり...と日々の隙間の時間に"瞬間のバカンス"を楽しむ知恵を持っているのではないかと指摘しています。また、ユーモアについても、「含み笑い」や大正期に流行した微笑と苦笑を合わせた「微苦笑」などの表現に象徴されるように、繊細で絶妙な笑いの文化を持っていると語ります。しかし、五木氏は、日本の若者が人を笑わせることや自分が笑うことにおいて、極端な傾向の笑いに向かっているのではないかと警鐘を鳴らしています。最近日本で多発している、モラルに反する写真をSNSへ投稿し、それが炎上するという問題。自分とつながっている友人たちへの"受け"を狙うあまり、違法行為まで行ってしまうまでの悲壮さは、五木氏がいう「アメリカ的笑い」と重なるところがあるのではないでしょうか。「私たちは自分たちの笑いかたを反省するよりも、むしろそういった強迫観念にとらえられている自分を笑うような自己批評の知性を磨きあげたほうがいいのではないかという気がします」20年前に『生きるヒント1』が刊行されて以来、累計600万部のエッセイとなった「生きるヒント」シリーズ。「いまを生きる」をコンセプトに、新版として編み下ろしたのが本著です。時間が経っても風化しない現代日本への痛切なメッセージには、私たちがどのように生きていけばいいのかということに対するヒントが示されています。日々の生活のなかで悩みに出くわしたら、日本を代表する作家の慧眼と深い洞察力と向き合ってみてはいかがでしょうか。
『新版生きるヒント1』 著者:五木 寛之 出版社:学研パブリッシング >>元の記事を見る

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