2012年、2013年と、AKB48からは複数の人気メンバーが卒業することとなった。前田敦子、篠田麻里子、板野友美...。同グループの看板的存在だったこれらのメンバー以外にも、河西智美や増田有華らといった長らく多くのファンに親しまれてきたメンバーも卒業。そんな卒業したメンバーたちにとって現在目下の課題となっているのが、AKB48という後ろ盾がなくなった状況で、いかに知名度を維持し、新たな活躍の舞台を切り開けるかということだろう。

おニャン子クラブやモーニング娘。の例を見ると、グループ全盛期にトップクラスの人気を誇っていたメンバーがグループ卒業後にも人気を維持できるかといえば、そうとは限らない。むしろ、グループ時代はいまひとつ人気が爆発しなかったメンバーのほうが、卒業後に新たな自分を開花させて芸能界を生き残っていくという傾向がある。

AKB48も、上の2グループと同じく社会現象を起こしたグループ。同じような傾向は見られるかもしれない。そこで注目したいのが、2013年8月という篠田や板野と近い時期にグループを卒業した、秋元才加(25歳)だ。

AKB48時代は、名前の漢字をカタカナに分割した「オカロ」という愛称で親しまれた秋元。アイドルらしからぬ小麦黒な肌や女子体育会系的な体つき、ハーフならではの彫りの深いルックスによって異質で目立つ存在となり、チームKのキャプテンを務めたり、「笑っていいとも!」のレギュラーになったりと、グループでもテレビでも活躍していた。

しかし、人気の試金石である総選挙では、12位(2009年)、17位(2010年)、17位(2011年)、20位(2012年)と、ベスト10や"神7"には入れず。知名度は高いものの、順位はそこそこという、世間とAKBファンとのあいだで人気が少々乖離した存在であったといえるだろう。そして、2013年8月に卒業を迎えたのである。

そんな秋元が、雑誌『GQ JAPAN』の2013年12月号で、AKB48の"制服"を脱ぎ捨てたグラビアを披露したことが話題になっている。AKB48内では異質であった彼女の特徴を存分に活かしているこのグラビア。濡れたオールバックの髪型と惜しげもなく肌を露出したその姿勢は、「25歳の元アイドル」ではなく、「25歳のトップモデル」のようだ。まさに、イメージチェンジである。

同誌のWeb版にも掲載されたこのグラビアは、ネット上で大反響を巻き起こしており、ツイッターには「かっこいい」という評価の声が男女のユーザーから続々投稿されている。このグラビア一発で、「かわいい」という形容が主であるアイドルという立場から脱却したのだ。

そして、同誌の記事では、簡潔できっぱりと名前を名乗る秋元の挨拶の素晴らしさにも触れている。先に、秋元の体つきを"体育会系的"と書いたが、秋元はその礼儀正しさも"体育会系的"に徹しているのだ。これについては、漫画家の杉作J太郎が2012年2月28日に放送されたTBSラジオの番組『トップ5』の中で印象的なエピソードを語っていた。

アイドル好きでありながら、最初はAKB48に対して距離をとっていたという杉作。そんな杉作がAKB48に興味をもったきっかけは、グループ時代の秋元とパチンコ番組で共演したことにあるそうだ。

秋元と杉作はその番組の収録後、「お疲れ様でした」と挨拶を交わし、杉作は長い廊下を歩き始めた。そして、30メートルほど歩いたところで後ろを振り返ると、秋元が最初に頭を下げたままの90度の角度でまだお辞儀をしていたというのだ。秋元のお辞儀は、杉作が廊下を曲がるまで続いていたとのこと。この出来事により杉作は心を動かされ、AKB48の劇場に足を運ぶことになったと語っていた。

このエピソードから読み取れるのは、秋元は間違いなく、人の心を動かすほどの人間力を持っているということだろう。ルックスや華が生き残っていくうえで大事な要素となる芸能界。しかし、一緒に仕事をする人たちから好かれているということは、どんな仕事をするうえでも重要な要素であり、それは芸能界でも例外ではないはず。

いち早く新たな個性を開花させ始め、人間力も兼ね備えている。そんな秋元が、AKB卒業後に最も輝く元メンバーのひとりになる可能性は、決して低くはないだろう。

【参照リンク】
・AKBの制服を脱いだ女──秋元才加 「GQ JAPAN」
http://gqjapan.jp/2013/11/25/sayaka-akimoto/
・「ザ・トップ5」