「豊かな老後を送るため資産運用する時代は終わりました。これからは老後の生活を守るために必要です」と断言するのは経済アナリスト・森永卓郎さん。その理由と具体的なアドバイスを述べてもらおう。

【提言 1】お金は賢い人に集まる

 お金には2つの大きな特徴があります。さびしがり屋なのでほかのお金と一緒に集まろうとすること。それと、賢い人のもとに集まるということです。『金持ち父さん 貧乏父さん』にあるような話ですが、私の経験からも真実です。この場合の賢い人とは、貯蓄や投資といった資産運用の勉強をしている人たちのこと。きちんと勉強をして実践している人は、それに見合った資産を築いています。したがって、すべての人にとって資産運用の知識と経験は必要なのです。

 しかし、勉強といっても、忙しいビジネスマンには限界があるもの。そこで、まずはプロに運用を任せる投資信託から始めてはどうでしょう。コストはかかりますが、それは費用だと割り切るべきです。また、プロに任せるとはいえ、投資信託での運用にも最低限の知識は必要なことも忘れないでください。

【提言 2】デフレ時代の常識を捨てる

 私は、日本はすでにデフレが終わり、インフレの時代が到来しつつあると思います。その理由を説明しましょう。下のグラフは、消費者物価指数の前年比伸び率を表わしています。統計のブレ幅の大きい生鮮食品の価格を除いたもので、日本銀行が政策目標としている指数と同じものです。

 全国の伸び率は、東日本大震災の影響で、東北地方で物価が上昇するなどの影響で、2011年と12年に前年比でプラスの伸び率になったりしました。しかし、その間、そうした影響が薄かった東京都区部は一貫してマイナスです。デフレ経済が続いていました。しかし、それが、13年5月に約4年ぶりにプラスに転じ、6月の速報値でもプラスが続きました。これはアベノミクスの効果で、私は完全にデフレが終わったと考えています。今後、趨勢的にプラス幅が大きくなってくるでしょう。

 そうなると、資産運用も変わらざるを得ません。デフレ時代は、銀行にお金を預けるだけで良かったのですが、物価の上昇が始まることで、預貯金は実質的に目減りをすることになります。金利水準によっては、住宅ローンの繰り上げ返済よりも、運用したほうが有利になるケースも多くなるでしょう。これからの資産運用はインフレを意識する必要があります。

●消費者物価指数前年比伸び率(生鮮食品の価格除く)

消費者物価指数前年比伸び率(生鮮食品の価格除く)

【提言 3】資産運用なくして生活防衛はできない

 日本の公的年金の財政状況を考えると、将来的に、受給開始年齢の引き上げや、給付額の引き下げは避けられません。恐らく、開始年齢は欧米並みの67〜68歳になるでしょう。

 また、厚生労働省がモデル世帯とする、夫の平均的年収が560万円の夫婦(妻は専業主婦)の受給額は現在約23万円ですが、これが30年後には16万円程度になると予想されています。するとどうなるか。左のグラフのように、現在、高齢者世帯は毎月約4万7000円の赤字です。貯蓄を切り崩して補てんしているのですが、この赤字額が30年後には約12万円に膨れます。仮に、65〜80歳の15年間毎月12万円の赤字とすると2100万円以上の貯蓄が必要になります。これは生活費だけで必要な貯蓄で、消費税増税や物価上昇は考慮していません。運用をしないと生活もままならない時代が来ます。

●高齢無職世帯の家計収支(総世帯)-平成24年-

高齢無職世帯の家計収支(総世帯)-平成24年-

【提言 4】「NISA」は絶対活用すべき

 来年1月から、「少額投資非課税制度」である「NISA(ニーサ)」がスタートします。非課税制度という名称が示すとおり、株式や投資信託で資産運用をして得られる「値上がり益(キャピタルゲイン)」や「配当・分配金(インカムゲイン)」への税金がゼロになるというものです。来年1月からは、キャピタルゲインやインカムゲインに対する税率は約20%になりますので、相当な税制優遇といえるでしょう。これを逃す手はありません。これまで資産運用の経験のない人でも絶対に利用すべきです。

 使い道の決まっているお金など、現金は一定の金額を保有しなければなりませんが、それ以外の当面使わない余裕資金は、わずかであってもNISA口座に入れることをおすすめします。給料の積み立て投資をしても良いと思います。とにかく、活用することです。

【提言 5】クレジットカードのポイントで消費増税分を取り戻す

 これまで資産運用の重要性について述べてきました。しかし、運用には元手が必要ですし、その前段階として、生活不安を生じさせない貯蓄がなければなりません。30代、40代は教育資金や住宅資金を用意する時期でもあります。そうしたお金をリスクの高い運用に回すことはやめましょう。無駄な出費を抑え、貯蓄に回すお金を少しでも増やすのです。そのために、出費する時はクレジットカード(以下、クレカ)を積極的に使うべきです。

 特に最近は、ポイント還元率が高いカードが増えてきました。もはやポイントの二重取り、三重取りは当たり前、ネット上のサービスと組み合わせれば、3%以上のポイント還元率を得ることも難しくはありません。消費税の増税分くらいは、クレカの活用で取り戻せるでしょう。お金は賢い人のところに集まります。

 クレカを使うと浪費につながるという意見もありますが、私はそうは思いません。心がけ次第ですよ。私のマイカーは、ファミリーカーの『AQUA(アクア)』ですし、普段の飲み物は、水筒にお茶のティーバッグを入れて持ち歩いています。クレカのお得な活用など、普段のちょっとした努力と工夫が貯蓄体質を作り、ひいては本格的な資産運用につながっていくのだと思います。

 経済アナリスト 森永卓郎さん

経済アナリスト
森永卓郎さん

1957年生まれ(56歳)。経済アナリスト。獨協大学経済学部教授。東京大学経済学部卒業後、現日本たばこ産業、経済企画庁、UFJ総合研究所を経て現職。テレビのコメンテーターとしても大活躍中。