タマ子が読んでいる漫画は山下監督が以前に映画化した「天然コケッコー」。こんな遊び心もいっぱい。
(C)2013「もらとりあむタマ子」製作委員会

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もっとアクティブにならなくちゃ! と思いながらも自宅でマンガを読んでしまう。
すぐ片付けなくちゃ!と思いつつ、食べた食器はそのまま。
親孝行したいと思いつつも、ちゃっかり甘えきっている。
それでも、これでも、何とかしなくちゃと思ってる。内心は…。

もし、こんな心のつぶやきにちょっとでも共感する方がいたら、現在公開中の映画「もらとりあむタマ子」をおススメしたい。前田敦子さんが主演ということで話題になっていますが、前田さんファンでなくとも、ちょっぴりだらしがない女性なら(=私)、きっと楽しんで頂ける内容になっている。まずはストーリーからご紹介しよう。

■ストーリー
タマ子(前田敦子)、23歳。無職。母と離婚した父(康すおん)がひとり暮らしをする実家で、家事を手伝うこともなく、就職活動もせず、とにかくよく食べ、よく寝る。そして、マンガを読む。テレビのニュースを見れば「ダメだ、日本は。」と何故か上から目線。父が営むスポーツ店にやってきた男子中学生(伊藤清矢)と仲良くなり、アゴで使う日々だったが、だんだんと立場が逆転。どこにでもある日常の日々を過ごしながら、タマ子はそれでもちょっとずつ前進してゆく…!?

■とにかく食べる、タマ子
本作は春夏秋冬、4つの季節に別れて、タマ子の何気ない日常が綴られてゆく。が、その半分は食べているんじゃないかと思うほど、よく食べている。ロールキャベツ、秋刀魚、アイスクリーム、お団子、ゴーヤチャンプル、あきれるほど食べる(ちなみに料理をするのは父)。しかも、決してお行儀は決して良くない。自分の心の隙間を埋めるように何かを口にするタマ子の姿は、どこか共感してしまう女性の方もいるかも!? そして、食べながらやりとりされる父との会話、中学生との会話の中に、さまざまなドラマがあって、また彼女が小さく巻き起こすあらゆる出来事の中から少しずつ成長していく姿が、何とも愛しい。

■一枚のアルバムを聞くように観る
本作を手がけるのは、『リンダリンダリンダ』、『天然コケッコー』、『マイ・バック・ページ』『苦役列車』の山下敦弘監督。ここ数年は小説や漫画等の原作を旬の俳優たちを迎え映画化、世に送り出してきた。しかし、もともとは世間からはダメな部類に入る人間たちを独特のタッチと笑いで、その人生を肯定する世界観を得意(!?)とし、多くのファンを増やしてきた監督。そして本作は、久々のオリジナル脚本。常々、山下監督とタッグを組んできた向井康介が担当している(近作では『陽だまりの彼女』等)。彼らが作る以上、“前田敦子"というアイドルっぽい可愛さは気持ちいいくらい感じない。父親が「タマ子〜!」と探すも、トイレで漫画を読みながら、タマ子がかったるく「トイレ!!!」と叫ぶシーンなんかもあるくらい。

山下監督は初日舞台挨拶の際に、「とりわけ何か大きな事が起こるわけではないんだけど、観る度に何か発見がある映画。一枚のアルバムを聞くように観てもらえたら」とコメントしていた。

■最後に
確かに映画らしいドラマチックな展開はない。しかし父親との関係にホロリとしたり、タマ子の小さな挑戦やあがきに不思議な元気をもらったり、ダメな自分を必死で正当化するタマ子にニヤけたり、何だかずっと見ていたくなる。そして、山下監督ならではの細部にまで至るこだわりに、観る度新しい発見が。確かに監督の言葉どおり、リラックスした気分で一枚のアルバムを観るように、タマ子の日常を見ていたら、何だかダメな自分さえも、ちょっと何かが変われるような、不思議な幸福感がもらえる、そんな映画だ。

「もらとりあむタマ子」は現在公開中。