2016年のリオからゴルフが五輪競技として復活すると決まって間もなくのこと。09年の全米プロで「リオ五輪に出たいか?」と尋ねられたタイガー・ウッズは、その質問にストレートに答えなかった。その代わりにタイガーは、ゴルフと同時に五輪入りが決まったラグビーに話を振って、「僕も頑張ってラグビーチーム入りしたい」と冗談交じりに語ってメディアを煙に巻いた。
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 だが、その後、コトは具体的に動いていった。五輪におけるゴルフの競技方法が決まり、2020年の東京五輪開催が決まり、世界のゴルフ界はどんどんその視線を「五輪」へ向けつつある。
 つい先日、フィル・ミケルソンが「今、僕は2016年に向けて取り組んでいる。オリンピック・アスリートになりたいんだ」と語り、話題になった。現在43歳、2016年には46歳になるミケルソンがリオ五輪出場を目標に掲げることが、どれぐらい現実的か否かは本人にも誰にもわからない。が、好成績を出せるかどうかの現実性はさておき、五輪を目指す心意気と姿勢をミドルエイジの選手が抱いているという現実がうれしい。
 とはいえ、五輪競技として復活するゴルフの舞台づくりは完全なる現実性の中で進めていかなければならない。その際、五輪だから五輪委員会任せにするというのではなく、世界の既存のプロゴルフツアー、とりわけ米ツアーが中心になって五輪のための舞台づくり、環境づくりを進めていく。そんな協力体制とその成果が、先週のワールドカップで見て取れた。
 ワールドカップは2人1組のチーム戦として開催されてきた大会だが、今年は五輪におけるフォーマットを意識して個人戦を主体にする形式に変更された。世界ランクに基づいて選出された選手たちが4日間72ホールのストロークプレーでスコアと順位を競い合う。ただし、国別対抗戦のワールドカップという大会の伝統的な性質をいきなり皆無にするのはどうかという意見も尊重し、今大会は各チーム2名のスコアを合算して競うチーム戦も同時に行なった。賞金も個人戦には7ミリオン、団体戦には1ミリオンという配分で、完全に個人戦に重点を置いた五輪対策となった。
 開催コースのロイヤル・メルボルンには米ツアーのティム・フィンチェム会長も赴き、五輪に対する熱い想いを世界へ向けて積極的にアピールした。
 リオのコース整備には若干の遅れが出ているという懸念の声も出ていたが、フィンチェム会長は「舞台づくりは、ほぼ順調に進んでいる」と太鼓判を押した。
 そして、フィンチェム会長が最も強調していたのは、この点だ。
 「リオ五輪はゴルフを五輪で復活させるためのファーストフット(最初の一歩)だ。だからこそ、ファーストクラスの(最高級の)舞台づくりを心がけなければいけない。なぜなら、2016年の五輪の後、ゴルフを五輪競技として定着させるべきかどうかの投票が行われるからだ」
 2016年五輪で失敗は許されない。「最初だから」「不慣れだから」といったエクスキューズも許されない。100年以上ぶりに復活するゴルフを、未来の100年へ、未来永劫へ、つなげていけるかどうか。その運命を左右することになるのが、最初の一歩となるリオ五輪なのだ。
 頭が下がるのは、フィンチェム会長率いる米ツアーや米ゴルフ界が、米国開催ではない五輪に対して真剣な想いを抱き、迅速に動き始めているところだ。ブラジルでも日本でもなく、米国の彼らが「2016年と2020年を主眼に置いて、五輪に備えよう」と必死になっているところだ。
 彼らのすべての原動力は、ゴルフというゲームの繁栄を願う心。国境、国籍を超えてゴルフを愛する広い心。だからこそ、あのミケルソンも「オリンピック・アスリートになりたい」と公言したのだろう。
 
 そんな伏線があったせいか、ワールドカップを眺めながら、気持ちや意識はとかく五輪に向いてしまった。それはフィンチェム会長たちの目論見にはまった証拠。でも、こんな目論見なら是非ともはまりたいと思うほど、彼らのプロモーションはいつも緻密で繊細だ。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
<ゴルフ情報ALBA.Net>

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