『少年よ耽美を描け』6巻(新書館)。

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 男子高校生には、およそ馴染みのないであろう"BL"。しかし、もしも男子高校生がBLにハマってしまったなら、一体どうなってしまうのだろう?

 10月25日に6巻が発売された『少年よ耽美を描け』(新書館/作者:ミキマキ)は、彼女がBLにハマったせいでフラれたイケメン高校生の新葉が、そんな彼女を見返すためにBLマンガを描こうとして、BLの魅力にハマってしまう物語だ。さらに、一緒に勉強している幼馴染で生徒会長の嶺良を始めとした友達も、BLの世界に巻き込まれてしまう。彼らはBLマンガを描くことを目標に日々さまざまなことを勉強しているのだが、男子高校生から見たBLとは、どんなものなのだろうか。

 はじめは、BLの意味すらわからなかった新葉と嶺良。嶺良は「Beauty&Lucky(美と幸運)」、新葉に至っては「Banana Labyrinth(バナナの迷宮)」だと思っていたほど。しかし、実際のBLは"男同士の恋愛もの"で、一番最初にBLマンガを読んだときは「こ...こいつら本当にタマついてんのか...」と青ざめていた。しかし、"攻め"の「ここ...すごく甘くておいしい...」というセリフを見て、新葉は「オレはどーせケツから甘い匂いを発することができない凡人だよ!」とフラレた理由を勝手に分析。BLマンガに登場する男の子たちはやたらかわいいともてはやされるけど、自分がこうなるのは不可能だから、自分もBLマンガを描くという結論に至るのだ。

 しかし「BLにはファンタジー要素もある」と言われ、男子がツチノコやネッシーに恋焦がれるという全然BLじゃない話を描いてしまうなど、BLにおけるファンタジーを理解できない。描き始めたばかりの頃は、腐女子の妄想の定番である「鉛筆×鉛筆削り」のカップリングにも激しく動揺していた。が、次第に「銀河×ブラックホール」の掛け合わせを考えたり、「コロコロ×床に落ちてる恥ずかしい毛」の擬人化BLを描けるようになっていく。

 ついには、もっともBLっぽいコスプレを考えた際に、新葉はカブトムシが止まっている木のコスプレをしてくるまでになる。ただなされるがままの木こそ、最強の"受け"だという結論にたどり着くのだ。それに、普段バスケをしているときでも「ゴールは究極の淫乱受と思え!!」とか言い出すし、化学式を見たら「ああ酸素の誘い受なのかな」などと想像してしまうほどに成長。昔話をモチーフにしたBL絵本を描くときには帯まで考えるのだが、『桃太郎』には「ご主人様のお腰につけたもの...くださいな(はぁと)」。『アリとキリギリス』に「―下半身だけは働き者なんだな。」......などと書いたりする。

 そして、こうやっていろんなことを勉強していると最近の傾向も見えてくるよう。自分たちが愛読しているマンガ『わん☆ボク』に出てくるキャラのカップリングが入れ替わっているのを見ると「うわああああっ」と叫びながら軽いパニックに陥る彼ら。"受け攻め"がどんどんニュートラル化する最近のBLに対して、その微妙な差がわかりづらいからと、BLに登場するキャラに現在の「受攻パラメーター」を表示しようとする。BLについて知れば知るほど、彼らの前にはまた次の新たな扉が待ち受けているのだ。

 さらに、ただBLマンガを描くだけでは飽き足らず、「春過ぎて 夏来たらしい白ブリの パンツ干してる 隣のお兄さん」といった手作りBL百人一首に加え、BLの挿し絵つきで勉強の疲れを萌えで癒す痛辞書。ビリヤードの痛キューと痛ボール。「BL百景」ガイドブックとして、年下攻めが受けの身長を追い越す情景などをまとめたりして、BLの普及活動にも力を注ぐ。そこで、新葉たちは「百個におさめるのは苦労したな!」と言うほどBLが情緒あふれるものだということに気づくのだ。

 いろんなことに興味を持って手を出してみたくなる高校時代に、どれだけ興味を持ってBLを勉強したとしても行き着く先は見えない。彼らは、BLについて学ぶことで、初めてその果てしない奥深さを知るのだ。それをすべて読み解ける日は来るのだろうか? いや、彼らでなくとも、BLを完璧に読み解くことなど不可能なのかもしれない......。
(文/田口いなす)