ひよこソフト代表の飯田氏(左)と広報の古川氏(右)

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 これまでに4本ものタイトルを発表し、着実にファンを増やしている美少女ゲームメーカーのひよこソフト。設立6年で、まだ決して大きなブランドではないが、ユーザーからの指示は熱い。そんなひよこソフトはちょっと珍しい事務所訪問というサービスを展開している。

 事務所(開発室)を写真などで公開したりするブランドはあるものの、直接ファンに訪れてもらうというのはあまり聞かないファンサービスだ。実際ユーザーからすれば、どんな場所でソフト開発をしているのか気になる。筆者はひよこソフトのゲームをプレイした経験もあるのだ。

 だったら行ってみようじゃないか!

 早速アポイントを取り、事務所訪問をさせてもらった。そのついでにインタビューまでもさせてもらった。忙しいさなか、答えてくれたのはひよこソフト代表兼イラストレーターの飯田氏と、営業兼広報の古川氏だ。

――事務所訪問というサービスを展開しているブランドってあまりないですよね。どうして始めたのですか?

飯田(以下、飯):いまは会社という形態を構えていますが、もともとぼくは美少女ゲームの1ユーザーであり、1ファンでした。そこからフリーという立場で美少女ゲーム制作の現場に携わり、この業界に入ったんです。だからできるだけユーザーの皆さんと同じ感覚を持っているし、感覚を共有していきたいんです。事務所に訪問してもらうことで、できるだけ多くの方とコミュニケーションが取れればいいなと考えたのが始まりです。

――これまでにどのくらいの方が訪れたんですか?

古川(以下、古):150名くらいですね。多くの方がコミケとか、イベント前後に来てくれます。そのせいか、地方の方が多いんですよ。

――訪れた方にはどんな対応をされるんですか?

:美少女ゲーム業界志望の学生さんに、案外多く来ていただいているんですよ。「どうすれば業界に入れますか?」っていう感じで。そういう方には入るためのアドバイスをしたり、業界の現状なんかを包み隠さずお話しして、「軽い気持ちで入ってきたら大変だぞ」って釘を刺したりします。

:理想と現実の乖離が激しい業界ですからね(苦笑) でも、スタッフのサインとか、グッズがあったらそれをお土産にしてもらったり、そういった応対も当然していますよ。

――現在従業員は何名いらっしゃるんですか?

:全員で7名です。うちのシナリオライターは、事務所訪問がきっかけで社員になっているんですよ。

――この6年間に4本の作品をリリースしていますが、これは理想のペースですか?

:デビュー作の『月染の枷鎖 -the end of scarlet luna-』がリリースまでに2年かかってしまった以外は、だいたい年に1本ペース出せているので順調ですが、本当は8ヶ月に1本リリースするのが理想です。

:ぶっちゃっけ出そうと思えば出せるんですよ。でも作品に対するこだわりがあるし、手は絶対に抜きたくないんです。だからやっぱり遅れてしまう部分はありますね。

――ひよこソフトのこだわりを教えてもらってもいいですか?

:楽曲のクオリティですね。前作の『あいこみゅ!! -IDOL Communication-』はアイドルものってこともありましたが、11曲も歌を書き下ろしたりして、豪華にしました。良い曲が揃ってますよ。あとはCGですね。うちは立ち絵の種類や表情をたくさん用意するんです。後ろ向きや手の動きに変化をつけたりね。

――他にはありますか?

:これは作品へのこだわりなどではないのですが、会社としてゲーム以外の収益でユーザーの皆さんからお金をもらおうとはあまり考えていません。先程もお話したように、ぼくらはユーザーの皆さんと近い場所にいながら、ブランドとして成長していきたいと考えています。『月染の枷鎖』でもアルバムCDを作っているのですが、無償で配ってしまいました。

:ユーザーの皆さんには支えてもらっている分、大切にしたいし、還元もしていきたいですよ。でもそれが会社の経営を圧迫したりもするんですが。

:(苦笑)

――最近美少女ゲーム業界は業界自体が縮小しているなんてことも言われたりもしていますが、それを実感することはありますか?

:あります。ぼくがこの業界に入ったときにはショップでの年間売り上げランキングが10位のソフトでも8000本くらい売れていました。でも、いまは10位だと3000本程度じゃないかと思います。半分以下になってしまったという印象です。

――その原因はなんだと思われますか?

:情報があふれてしまっているからではないでしょうか。ぼくらがユーザーとして現役の頃は、ネットがまだそれほど普及していませんでした。試し買いなどもよくしていたのですが、いまはすぐにネットで情報を得ることができてしまうので、ユーザーの中で「買う」「買わない」のふるい分けがはっきりとできてしまうんです。

:ユーザーの数で言っちゃえば、そんなに少なくなっているとは思わないんですけど、美少女ゲームメーカーもたくさんありますからね、ユーザーの目が肥えてしまったってこともあるんじゃないですか。

――ひよこソフトでは何本くらいを売れればもとが取れるという計算なんですか?

:制作費を回収するという意味では2000本くらいです。前は4000本くらいだったんですけどね。

――制作費に変化はありますか?

:『サクラの空と、君のコト -Sweet Petals For My Dear-』をリリースしていた頃は制作費に3000万以上かけられていたのですが、いまはその半額くらいになりました。

:ゲームのクオリティを削ることは絶対にできないんで、他を切り詰めてますね。外注を上手く使うとか、コストは抑えようと思えば抑えられるんです。

――『サクラの空と、君のコト』で思い出しました。個人的な意見で申し訳ないんですが、主人公の幼馴染の凪紗の攻略ルートがありませんでしたね。あれはショックでした。

:よく言われます。(笑) 実は凪紗ルートのテキストは用意してあるんです。ですが、リリースしてからずいぶんと時間が経ってしまいましたから、どういった形態で発表するかは検討しています。テキストでダウンロードとか簡易的なものかもしれません。もちろん無償で発表しようと考えています。

:うちの魅力的なサブキャラには攻略ルートがないっていうのはよく言われるんです。もはや伝統に近い。(笑)

――今後のリリース予定を教えてください。

:構想は色々とあるのですが、スケジュールやリソースのこともあって、ひよこソフトでのリリースはまだ先になるかと思います。ただ、立ち上げて6年が経って、ぼくと原画家以外は未経験者だった他の社員も、かなり成長してくれました。18禁にこだわっているわけではないので、会社として色々なことに挑戦していく予定です。今後も期待していてください。

:応援よろしくお願いします。

 ひよこソフトの事務所は8畳くらいのマンションの一室に人数分のデスクとPCが置かれていて、決して広いとは言えない場所だった。しかし、その狭さが企業然としていないアットホーム感があった。収益を無視してファンにCDを配ってしまう非営利っぷりもうなずけてしまう。

 次回作はまだ先だと飯田氏は言っていたものの、古川氏が「社長は大作を出したがっているんですよね」ともポロリと漏らしていた。児童ポルノ法案だとか、ソフ倫がどうとか美少女ゲーム業界への風当たりは厳しさを増すばかりだ。制作費が半分になろうが売り上げ本数が半分になろうが、負けずにこれからもファンを大切にしながら質の高いゲームをリリースしていってくれることだろう。
(文=Leoneko)