日本女子ツアーの2013年シーズンもあと2試合。白熱の賞金女王争いが面白くなってきた。

 本命は森田理香子だった。開幕戦のダイキンオーキッドレディス(3月8日〜10日)でプレーオフの末に横峯さくらを下して優勝すると、5戦連続でトップ10フィニッシュ。賞金ランクのトップを独走した。その後、一時は佐伯三貴にその座を譲ったものの、5月の中京テレビ・ブリヂストンレディスで今季2勝目を挙げてからは、ずっとトップの座に立ち続けてきた。

 永久シード選手で、テレビ解説などでもお馴染みの森口祐子プロは、春先の森田について「開幕戦から隙がないゴルフをしていた。今年の彼女は『やるな』と思った」という。

 予選落ちをするなど、調子を崩したときもあったが、すぐに盛り返してくるところが、今年の森田の強さだった。もちろん、ツアーの練習日に指導・助言をする、師匠の岡本綾子プロ(日米で賞金女王に輝いたカリスマ)の存在も大きかったに違いない。

 しかし、賞金ランクトップを維持する重圧はかなりのものだったのだろう。

 シーズン終盤のマスターズGCレディース(10月24日〜27日)で、今季3勝目を挙げた賞金ランク2位の横峯が、一気に森田との差を縮めたときだった。森田は、記者たちから賞金女王レースについて水を向けられると、「そういうことは聞かないでください」と強い口調で質問を制した。

 それが翌週、今度は打って変わって、メディアに囲まれた森田はこう語ったという。
「(賞金女王に向けて)プレッシャーもかかりますが、下位にいたら(そういうことは)聞かれないわけですから、この先もずっとそういう質問をされるようにがんばります」

 人間は、わずか数日でこれほど心境が変化するものだろうか。そこには、おそらく"師匠"からの助言があったのだろう。師匠の岡本綾子はカリスマである。その言葉はとてつもない影響力を持つ。岡本を師と仰ぐプロは、誰もが岡本に心酔し、岡本のようになりたいと思っている。ゆえに、森田の対応は一変したのではないか。

 彼女は、岡本綾子のような気持ちの強さを持って、残りの試合を戦えるだろうか。これからの2試合で、その真価が問われる。

 一方、先日の伊藤園レディス(11月15日〜17日)で、今季4勝目を挙げた横峯が、ついに森田をとらえて、賞金女王レースのトップに立った。5月のサイバーエージェントレディスでおよそ2年ぶりの優勝を飾り、本来の強さが戻ってきた。

 横峯の好調ぶりについて、森口プロはこう語る。
「パッティングが良くなりました。昨年までは、悪いとき、フォローでフェースが跳ね上がり、(インパクトで)こすって右へプッシュするような球が出ていた。それが今年は、(パットの)トゥとヒールの出方がスクェアに出ています」

 もうひとつの要因は、8月からついているメンタルトレーナーの森川陽太郎氏のトレーニング法が横峯の性格と合っていたからだという。

「これまでのメンタルトレーニングと言えば、マイナス的なことは口にせず、常にポジティブに物事を考えるというやり方が多かったのですが、自分を追いつめることで上に登ってきた横峯さんには、そのような方法は合わないと思っていました。でも、今のトレーナーのやり方は、今ある自分と向き合い、自分に過度な期待をせずに、自分に合った目標設定をするということでした。これは、横峯さんに合っていると思いましたね。自分は今の自分でいいんだと思うことで、気持ちが開放されたんだと思います」(森口プロ)

 2008年、横峯はわずか数十センチのパットを外して優勝を逃したことがある。その後彼女は、森口が言うように愚直に「ヘッドアップをしないように」と自分に言い聞かせ、苦手なパッティングを克服しようとしてきた。さらに2009年、初の賞金女王となったものの、「メンタルの弱さ」は常に指摘され、自分自身もそれを認めていた。そして今年、今の自分と向き合うことで、気持ちの弱さに打ち勝とうとしている。

 たとえ、どんなに優れたコーチがいても、パットの際に上がる頭を抑えたり、自分の弱さを認めてそこから這い上がったりするのは、最後は自分の力である。今の横峯の強さは、そうやって自分自身で作ってきたものだ。4年も5年も苦しんでたどり着いた境地なのである。

 さて、今季は29週もの間、賞金ランクのトップで居続けた森田。最終局面でその座を奪われた内心は今、どんなものか。森口プロが推察する。

「今の森田さんは、マラソンで言えばゲートをくぐって競技場に戻ってきたあたりで抜かされたようなもの。抜き返せる気力があるかどうか。正直、もっと早く逆転されていたらという感じはある」

 片や、この土壇場でトップに立った横峯の心境はいかなるものか。彼女はこうコメントしている。

「今度は追われる立場になるので、違ったプレッシャーがある。その分、『OKライン(自分に課すハードル)』を上げてしまいがちになる。でも、しっかり自分を見極めて戦っていきたい」

 森田と横峯。カギになるのは、気持ちの余裕がどちらにあるか。これまで培ってきた経験からすれば、横峯に分があるだろう。しかし首位の座を明け渡して、開き直ることができれば、森田にもチャンスはある。残り2戦、その興味深い激闘をじっくりと楽しみたい。

古屋雅章●文 text by Furuya Masaaki