(イラスト/村田らむ)80年代の小学生はエロに飢えていた。

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――今から30年前、そう僕らが子どもだったあの頃に読みふけったマンガたちを、みなさんは覚えていますか? ここでは、電子書籍で蘇るあの名作を、振り返っていきましょう!

 まだまだアダルトビデオは出始めたばかりの頃で、小学生が見られるものじゃなかった。もちろんエロ本はすでにあったが、入手するのはなかなか困難だった。運良く拾ったり、勇気をふりしぼって「週刊プレイボーイ」(集英社)とか「平凡パンチ」(マガジンハウス)など"ソフトエロ"雑誌を買ったとしても、保管するのは家である。母親に見つかったら大目玉だったのだ。

 そんな中、当時の「月刊少年マガジン」(講談社)は、前述のリスクを回避しつつエロを得られるアイテムとして、とても人気があったのだ。表紙は『なんと孫六』とか『名門!多古西応援団』など、エロとは無縁の硬派っぽいマンガが飾っていたため、地獄の"母親チェック"をかいくぐることができた。そんな「マガジン」には『Oh!透明人間』『いけない!ルナ先生』『2人におまかせ』などなど、エロ満載の作品はたくさんあったわけだが、僕のお気に入りは『ハートキャッチいずみちゃん』だった。

 早速Kindleで購入し、iPadにダウンロードする。約30年ぶりの再会に心なしかワクワクそわそわしている。

 ......そして1話目を読んで衝撃を受けた。

「主人公、原田いずみは人の心を読むことができる。その超能力のせいで転校を繰り返している」

 という設定を、当時小学生だった僕は完璧に忘れていたのである。「主人公が超能力者」って、かなり大きな要素である。しかし読み進めていくうちに、なぜ忘れていたのかが判明した。最初の頃はたしかに読心力を発揮しているのだが(といっても、男子主人公の明智菊丸の心を読むことにしか使われない。必ず菊丸のエロ妄想が描かれる)、途中からはその設定は完全に忘れ去られ、一切出てこなくなるのだ。

 ストーリーはだいたい毎回同じで、いずみちゃんや同級生の女の子が何らかの理由で、閉所などに閉じ込められる。菊丸は、女子が自由を奪われたのを良いことに、オッパイを触ったり、パンツを脱がせたり、とエロいいたずらをする......というもの。そして最後は必ず、いたずらがバレて怒られる。

 毎回、毎回、判で押したように同じ展開。普通のマンガでは回を重ねるうちに、登場人物たちの造形はより深くなっていくが、このマンガでは回を重ねるうちに主人公たちの造形は薄くなり、形骸化されていた。

 主人公たちは高校生だが、読者の多くは小学生。セックス描写はありえない。毎回エロい展開になるのに、ボディタッチ以上の進展はありえない。無間地獄である。

 読者も、精通を迎えていない小学生。エロい展開にモンモンとするものの、どうしたいいか分からず、枕に股間を押し付けながら眠れぬ夜を過ごす。こちらも無間地獄である。

 でも小学生はどんどん成長して大人になる。大人は、小学生では考えられないような、エグいエロを見たり、実践する。ちょっとやそっとのことでは興奮しなくなる。

 そんな汚れた大人になって、ふと『ハートキャッチいずみちゃん』を見ると、ふるさとに帰ったような懐かしさを感じたのだった......。

●村田らむ(むらた・らむ)
1972年、愛知県生まれ。ルポライター、イラストレーター。ホームレス、新興宗教、犯罪などをテーマに、潜入取材や体験取材によるルポルタージュを数多く発表する。近著に、『裏仕事師 儲けのからくり』(12年、三才ブックス)『ホームレス大博覧会』(13年、鹿砦社)など。現在は、太田出版のWEB連載サイト「ぽこぽこ」にて、マンガ家の北上諭志と共に『デビルズ・ダンディ・ドッグス』を連載中。
●公式ブログ<http://ameblo.jp/rumrumrumrum/>
●『デビルズ・ダンディ・ドッグス』連載ページ<http://www.poco2.jp/comic/dddogs/>