格付け引き上げで期待が高まるフィリピン。海外労働者の送金で個人消費も好調推移
今年5月に過去最高値を更新して以来、低迷が続いたフィリピン株。だが、不調をもたらしたのはあくまで米国や中国などの外部要因であり、フィリピン経済そのものは好調だ。海外からの資金も戻り、反転攻勢の兆しが見え始めた!

慢性的な貿易赤字だが海外からの送金で経常収支は黒字基調に

フィリピンを代表する株価インデックスであるフィリピン総合指数は、昨年から今年5月前半にかけて力強い上昇トレンドを描き続けていた。

だが、5月15日に過去最高値の7403ポイントをつけて以来、ボックス圏相場に転換。6月25日に5678ポイント、8月28日には5562ポイントと?二番底〞を打ち、その後も伸び悩んでいる。

「米国のQE(量的緩和)縮小懸念と中国のシャドーバンキング問題が、フィリピン株相場にも大きく影響しました。フィリピン経済自体は好調そのものなのですが……」と語るのは、今年6月からフィリピン株の個別銘柄取引サービスを開始した東海東京証券の町山浩幸さん。

確かに、フィリピンのGDP(国内総生産)成長率は1〜3月が前年同期比7・7%、4〜6月が7・5%と絶好調。8月に首都マニラ周辺で発生した洪水の影響で、7〜9月は7%前後まで減速する見通しだが、それでも東南アジアでトップクラスの成長率を維持することは間違いなさそうだ。

東海東京証券は、フィリピン証券大手のファースト・メトロ・インベストメント・コーポレーションと提携しているが、「同社の関係者に聞いたところ、『フィリピンのファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)自体は悪くないが、残念ながら経常赤字に苦しむインドネシアなど他の東南アジアの国々と同列に捉えられ、売られてしまっている』と悔しそうに語っていました。しかし9月に入ると、東南アジアの中でもいち早くフィリピン株に外国人投資家の資金が流入し、買い越しに転じています。QEの縮小懸念が落ち着き、最も有望な国のひとつであるフィリピンに資金が戻り始めているのです」(町山さん)。

フィリピンの力強い経済成長を支えているのは、GDPの約7割を占める個人消費だ。そして旺盛な個人消費を支える要因のひとつが、海外で働くフィリピン人労働者による本国送金である。

「毎月の送金額は15億〜20億米ドル(約1455億〜1940億円)、年間では2兆円近くにも上ります。フィリピンは慢性的な貿易赤字を抱えていますが、海外からの送金のおかげで経常収支は黒字続き。財政についても、スタンダード&プアーズ(S&P)から投資適格級に当たる『BBB+』のソブリン格付けを受けています。このように比較的健全なステータスを保ち続けていることも、外国人投資家に好感される理由でしょう」と町山さんは語る。

さらに10月3日にはムーディーズがフィリピンのソブリン格付けを投資適格級の「Baa3」に引き上げた。

「S&P、ムーディーズの2大格付け会社がそろって投資適格と評価したことで、フィリピンへの資金流入はますます拡大するはず。セクター別では、格付けの引き上げが追い風となる投資銀行などの金融分野や、個人消費拡大の恩恵をストレートに受ける小売り、自動車などの分野に注目したいですね」(町山さん)

ピュアゴールド・プライスクラブ(小売り)

フィリピンを代表する小売りチェーン。総合スーパーマーケットなどを展開している。1998年に1号店をオープンして以来、全国に店舗網を広げ、2013年6月末の店舗数は192店に拡大。2015年までに200店舗の目標を掲げているが達成は目前。目標の上方修正もありうる。
8月末時点の時価総額は2294億円と、日本の小売業大手ユニーグループ・ホールディングス(1489億円)よりも大きいが、純利益はユニーの約6割。それだけ成長に対する市場の期待が大きいと言えそうだ。

株価:45.35ペソ
日本円だと:約102円
売買単位:100株
時価総額:1254億5600万ペソ
PER:33.8倍
配当利回り:0.44%

メトロポリタン銀行(金融)

総資産額でフィリピン2位の商業銀行。傘下に投資銀行、証券会社などを擁する。親会社はフィリピンを代表するコングロマリット(複合企業)、GTキャピタルで、株式25%超を保有している。
2000年12月期からの13年間で、純利益が年率22・7%と急成長。今期中間の純利益は前年同期比約2・5倍の181億フィリピンペソに達し、半期ベースでの過去最高益を大幅更新した。ムーディーズが格付けを引き上げたことで、債券市場が活性化し、投資銀行部門の業績が拡大する期待も。

株価:85.05ペソ
日本円だと:約192円
売買単位:10株
時価総額:2334億4500万ペソ
PER:9.10倍
配当利回り:0.90%

GTキャピタル(コングロマリット)

トヨタ自動車との合弁による自動車販売、フランス金融大手アクサと合弁の保険販売、メトロポリタン銀行などの金融サービス、高級住宅などの不動産開発が主力。オリックスとの戦略的提携を通じて発電事業も展開している。
自動車販売は国内シェア4割を握るが、インドネシアなど他の東南アジアの国と比べてフィリピンの自動車普及率が低いことから、成長の余地は大きい。
不動産開発を担う子会社フェデラルランドのIPO(株式新規公開)を検討しているとの情報もある。

株価:800ペソ
日本円だと:約1800円
売買単位:10株
時価総額:1394億4000万ペソ
PER:18.1倍
配当利回り:0.38%

※株価、指標は2013年10月8日現在。為替は1ペソ=約2.3円。

町山浩幸(HIROYUKI MACHIYAMA)
東海東京証券 アジア株式営業推進部長

1960年、千葉県生まれ。84年に東京証券(現・東海東京証券)入社し、調査部、国際営業部に勤務。外資系のファンドマネジャーを経て、2005年に東海東京証券入社。以降、外国株式部門でアジア株を中心に分析・営業推進を展開。



この記事は「WEBネットマネー2013年12月号」に掲載されたものです。