今年納めの九州場所が10日から福岡市の福岡国際センターで始まっている。優勝争いは史上2人目、2度目の5連覇を目指す横綱・白鵬が中心になるのは間違いないが、もうひとり、横綱、大関顔負けの熱い視線を浴びているのが、先場所に史上最速の初土俵からたった3場所で幕内に駆け上がり、何もかもが初体験というプレッシャーをはねのけて見事に9勝した遠藤だ。

 幕内2場所目となる今場所は西前頭7枚目まで番付を上げ、三役陣との初対決も予想されるだけにファンの関心も高く、周辺はいつも黒山の人だかりだ。しかし、肝心な遠藤の体調は決して良くない。というのも、先場所、捻挫して14日目から休場に追い込まれた左足首の回復が、予想以上に遅れているからだ。
 「人気者の悲劇というか、周囲に引っ張り出される形で10月の秋巡業に出たのが悪かったようですね。まだ稽古するのは早いのに、次々と先輩力士らに指名されてぶつかり稽古をやらされ、悪化させてしまった。その後、剥離骨折していることも判明しました。福岡入りしてもろくに四股さえ踏めない状態で、一時は師匠の追手風親方も休場を示唆していました。本格的な稽古を再開したのは初日の3日前。最悪の事態は何とか回避しましたが、本来の調子とは程遠いと言っていい」(担当記者)

 まさにぶっつけ本番の状態。これで大勝ちできるほど幕内の水は甘くない。案の定、初日は豊響に押し倒されて黒星発進。本人も「勝ち星数よりも、最後まで取りきれば十分です」と話しているが、ここで大負けし、挫折感を味わうのも決して悪いことではない。
 大横綱の千代の富士も貴乃花も、入幕早々は苦汁をなめ、後にそれを糧に大成している。中でも、千代の富士は幕内の壁にハネ返された上に肩の脱臼というバブルパンチを食らって幕下まで降下した。このときの屈辱が、31回優勝の大きなバネになったと千代の富士は振り返っている。

 ここまで“壁知らず”で伸びてきた遠藤。この試練は、力をためて飛躍するチャンスと言っていい。