ホテルのメニュー表示から始まった食材偽装表示問題がおさまらない。使用されている代替食品まで貶められる勢いだ。確かに偽装は過ちだが、成型肉そのものが悪いわけではない。この機会に、高度な肉加工技術の結晶である成型肉や脂注入肉を、代替品としてではなく新しい名称をつけて新食材として味わうべきだという人もいる。「本店の旅」著者で外食チェーン店1号店ジャーナリストのBUBBLE-Bさんが、その美味しさについて解説する。

――肉加工品でもハムやソーセージならその美味しさが話題になるのに、成型肉については味が話題になることがありません。なぜなのでしょうか?

BUBBLE-B(以下B-B):成型肉には他の肉にはない美味しさがあるのに積極的に評価する人が少ない。適切な名前がついていないせいなのでしょうが、不幸なことです。普通の肉に比べて好きな形にしやすいので食べやすいサイズにも、ステーキのような大きなサイズにも自由自在なのに、残念なことです。

――結着肉によるサイコロステーキや赤身の牛肉に脂を注入して霜降り肉に似せたインジェクション牛肉(霜降り加工肉)がよく知られています。加工業者のなかには、成型技術に誇りをもち独自のブランド名を冠して販売しているところもありますが、なかなか認知されません。肉料理の食材としての成型肉には、どのような美味しさがあるのでしょうか?

B-B:僕自身はハンバーグが洋食の肉料理の中では一番くらいに好きです。味の個性の出し方が幅広いので、チェーン店ごとに食べ比べるのも楽しいですよ。

 ハンバーグは挽肉につなぎとしてパン粉や小麦粉、タマネギを使って固めたもので、ナイフとフォークで食べる肉料理です。かたや成型肉は、つなぎではなく少量の決着剤と肉をギュッと固めたものです。成型肉の方がつなぎがない分だけ純粋な肉に近く、ハンバーグとステーキの中間の肉料理だと思って食べています。有名飲食チェーンにも成型肉のメニューがあり、大好物です。

――最近10年ほどの肉加工技術の進歩で、成型肉は急速に広まり多くの飲食店で利用されています。かなり浸透してきた食品だと思うのですが、まがい物の代表のように言われることもあります。

B-B:ちょっと分野は違いますが、豚肉の薄いスライスを何層にも重ねてミルフィーユ状にしたとんかつも成型肉みたいなものですよね。ミルフィーユとんかつの場合、代替品どころか女性にも人気のメニューです。でも、不幸にも成型肉には適当な名前が無く『ハンバーグステーキ』というまぎらわしい名で呼ばれることもあります。造語でもいいですから、肉汁したたる感じの名前さえあれば一気に人気の食べ物になりますよ。

――赤身に脂を注入した肉、インジェクションビーフ(脂注入肉)も味が議論されることはあまりないですね。

B-B:牛肉は部位によって味が違えばグラムあたりの単価も全く違う。特にサーロイン・ロース・ヒレの3部位は1頭あたりから採れる量が少なく味わいが上品なので、ステーキは高級料理になっているわけです。良い肉なら100グラムあたり1000円オーバーは当たり前の世界です。

 でも、そんな高い肉ばかり食べてられないでしょう? 安くて美味い肉があればその方が良いはずです。2000円でステーキを食べるのであれば、脂注入していない固くてパサパサの肉と、脂注入してある柔らかくてジューシーで旨みのある肉のどちらを食べますか? 私なら断然後者です。

――インターネットには、安い赤身肉をいかにしてやわらかく焼き美味しいステーキをつくるか、といったコツを記したレシピが山ほどありますね。でも、レシピ通りやったところで、もともと固い肉をやわらかく焼くなんてできません。脂を注入した加工肉なら、中まで火を通した焼き方にしないとなりませんが、コストパフォーマンスがよい美味しい肉料理が楽しめますね。

B-B:脂注入肉は、食べ物を粗末にしないことをテクノロジーで実現したエコロジーな食べ物です。ですから、何もしていない肉と加工した肉とを区別して、加工肉には新しい名前をつけ、それぞれ別物として楽しむべきですよ。