長瀬智也(35)主演のドラマ『クロコーチ』で再注目されている「三億円事件」。事件を44年間取材し続けてきたジャーナリストの近藤昭二さんと、『20世紀最大の謎 三億円事件』の担当編集者・欠端大林さんの2人に、いまも好奇心をくすぐられる“7つの謎”について、解説してもらった。

【1 モンタージュ写真の謎】
 三億円事件といえば、すぐに連想されるのが、白いヘルメットをかぶった白バイ警官のモンタージュ写真。だが……。

「じつは事件前に事故死している実在の男性の写真に、加工をほどこしたものなんです。警察は走査線上にあがったのが少年だったため、苦肉の策として少年に似た男性の写真を使用したようですが、なぜそんな常識はずれなことをしたのか?」(近藤さん)

【2 自殺した少年の謎】
 事件発生直後から、警察にマークされていた19歳の少年がいる。ところが事件発生から5日後、この少年は青酸カリを飲んで自殺する。

「父親が白バイ隊員であったこと、仲間が発煙筒をダイナマイトに見せかけスーパーでレジを襲うという、三億円事件と酷似した事件を起こしていること、少年が仲間に『東芝や日立の現金輸送車を狙う』と話していたことなど、疑わしい点がいくつかありました」(近藤さん)

【3 伝説の捜査員の謎】
 捜査が進展せず、事件発生から4カ月ほどして特捜本部に投入されたのが、故・平塚八兵衛さんだ。帝銀事件、下山事件などを手がけ、吉展ちゃん事件では犯人に自供させて「落としの八兵衛」といわれた名刑事だ。

「事件前に銀行に送られた脅迫状の切手から採取された血液型が、19歳の少年のものとは異なり、複数犯でなければ成立しません。八兵衛氏は単独犯説を裏付ける決定打がないのに、こだわり続けたため、少年をシロとしました。なぜこれほどまでに固執したのか、謎です」(近藤さん)

【4 遺留品の謎】
「当時は思い込みによる強引な取調べから、科学捜査へ移り変わる過渡期。また証拠品の扱いもぞんざいで、犯人のものと思われるハンチング帽も、複数の刑事がかぶってしまった。そのため、内側に残っていただろう汗から、血液型を特定できなかったそうです」(欠端さん)

【5 現金輸送ルートの謎】
 盗まれた3億円は東芝府中工場のボーナスであったため、半年に一度のチャンス。なぜ犯人は輸送日と、そのルートを知っていたのか。

「それが東芝の内部犯行説にもつながったと聞きます。また銀行に送られた脅迫状には、運転手のことを『ウンテンシャ』と警察で使用される用語を使っていたり、白バイが現金輸送車を止めるときの左手の仕草が、本物の警察官と似ていたため、警察内部犯行説もあったようです」(欠端さん)

【6 最後の容疑者の謎】
「少年の周辺にいたある男性は、事件翌年に喫茶店を開店したり、その後高級外車を買い換えたり、不動産会社を設立して年間数千万円を動かしていました。時効ギリギリに別件逮捕され『最後の男』といわれましたが、警察は『金の出どころも解明され、シロと断定せざるをえない』と発表しました」(近藤さん)

【7 消えた3億円の謎】
「3億円を墓場に隠すのではと、7年間、関東一円の墓地を捜し歩いた刑事もいましたが、現金は見つかっていません。盗まれた500円札のナンバーに該当する紙幣を『持っている』というたれ込み情報もありますが、現物を見たことはありません」(近藤さん)