『ドクムシ』第1巻(双葉社)

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 ソリッドシチュエーションスリラーと聞くと大ヒット映画『SAW』シリーズを思い浮かべる方が多いのではないだろうか。最近映画などでよく聞くようになった単語だが、そもそもどういうジャンルを指すのかと言うと、非常に限られた状況に置かれた人間の極限状態をスリリングに描いた作品のことを指す。要は生死をかけたデス・ゲームだ。『SAW』以外にも有名どころを挙げれば、『CUBE』がその部類に入るだろう。また日本だと社会問題にもなった『バトル・ロワイアル』なども同じと言える。

『SAW』シリーズの空前の成功により、ソリッドシチュエーションスリラーを扱う作品が爆発的に増えた。それは映画だけではなく、日本のマンガにも波及している。実写映画が公開されている『JUDGE』がまさにそうだし、森恒二による『自殺島』も広い意味では当てはまるだろう。また、近年流行りの脱出ゲームは生死をかけないソリッドシチュエーションスリラーと言えなくもない。

 この衰え知らずのソリッドシチュエーションスリラーブームに乗って、新たに刊行されたのが『ドクムシ』だ。この作品、連載はあのE☆エブリスタだ。知らない方のために少し説明をしておくと、E☆エブリスタとはコミック・小説の投稿コミュニティのことで、有名な作品では映画化もされた『王様ゲーム』などがある。

『ドクムシ』はソリッドシチュエーションホラーの王道中の王道といえる設定を用いている。

 7人の男女が目覚めたのは、封鎖された廃校だった。壁には7日間をカウントダウンする電光掲示板があり、天井には監視カメラが設置されていた。そして別室には土鍋と肉切り包丁。7日間をカウントダウンする意味は? 土鍋と肉切り包丁が示唆していることは何か? そして7人が連れて来られた理由は? 悪夢のデス・ゲームが始まる――。

 上記だけを読んでいただければ『SAW』シリーズのファンならピンとくるはずだ。シチュエーションがとても『SAW2』に似ている。もちろん物語の中心となる7人は自分たちがなぜ廃校に連れてこられたのかなんて分からない。だが連れてこられたうちの1人が妙に冷静で何か知っていそうだったり、子供が1人含まれていたり、状況をかき乱す乱暴者がいたり、主人公には何やら暗い過去が隠されていたりとキャラクター設定も完璧だ。

 そしてソリッドシチュエーションスリラーにはつきもののグロテスクな描写だが、残念ながらまだ1巻ではグロと呼べるほどの描写はなかった。しかし、土鍋と肉切り包丁は人肉を調理するためのものと作中のキャラクターが予想していたため、2巻以降何かしら殺人目的で使われるのだろう。勢い余って食人描写もくるかもしれない。グロが大好きな方には今後の展開に期待が持たれる。

 今回、直接的なグロ表現はなかったものの、暴力的な描写は1巻中盤過ぎから加速していく。なんといっても注目はレイプシーンだ。本作は展開がスピーディーなのだが、1巻でレイプシーンが登場するとは思わなかった。割かれたのは4〜5ページだが、それだけでも十分に心が痛くなった。今後はグロだけじゃなく、エログロとしての性格も有していくかもしれない。

 本作は絵のタッチが少年マンガ風なので、パッと見の印象ではグロテスクやレイプなどの描写とは結びつきにくいかもしれない。しかし、内容は明らかな暴力と狂気、絶望だ。まだ1巻で物語が始まったばかりだが、単行本のラスト1コマに描かれたあるキャラクターの表情があまりに気味が悪く、恐ろしい。今後この物語がどう展開しているのか明示している。ぜひラスト1コマに向けて読み進め、作中のキャラクターとともに恐怖と絶望を味わっていただきたい。
(文/Leoneko)