[其ノ三 投信ファンダ編]好調の米国・日本、不調の新興国投信
FRBの量的金融緩和策の維持をめぐる攻防が新興の経済にも波及している。今年に入ってからの騰落率では、東南アジアやトルコ関連の投信が苦戦中だ。

好調な日米の陰で苦戦を強いられる東南アジアなどの新興国

昨年末以降、順調に右肩上がりの上昇を続けていた世界の株式市場ですが、8月、シリア情勢の深刻化と米国の量的緩和の縮小観測を背景に軒並み下落しました。

その後9月に入り、2020年の東京オリンピックの開催決定や米国FRB(連邦準備制度理事会)が現行の量的金融緩和策の維持を決めたことなどが好材料となり、日米を中心に株価は再び反発しました。

このように、足元では主に米国の金融政策が株式市場の動向を左右するという状態が続いています。

そこで、リッパー分類別に算出した年初来の平均騰落率を見てみると、「ベスト」の首位には「株式型 日本株 中小型株」がつけました。国内中小型株は、スマートフォン向けのゲームやバイオテクノロジーの関連銘柄が急騰し、各投信の運用成績を牽引しました。

また、欧州債務危機の影響により低迷が続いていた「株式型 米国株」や「株式型 欧州株」といった欧米株のカテゴリーも反発しました。

下半期に入ってからは、このところ米国株を主要投資対象とする投信の新規設定も相次いでいます。

一方、米国市場の陰に隠れて見えにくくなっているのが、新興国経済の動きです。「ワースト」の上位10位までには、インドネシアやASEAN(東南アジア諸国連合)諸国といった東南アジア地域のほか、トルコ、ブラジルなどの新興国に投資するカテゴリーがずらりと名を連ねました。

東南アジアはここ数年高い経済成長を遂げてきましたが、足元では国内消費が減速しています。

さらに、米国の量的緩和縮小の可能性が台頭したことで新興国通貨が売られ、株安と通貨安が同時に起こるといった事態となりました。米国が量的緩和を縮小し利上げに踏み切ると、高いリスクを負ってまで新興国に投資する意味が薄れてきます。

世界の投資家が新興国から資金を引き揚げたことで、ブラジルレアル、インドネシアルピア、インドルピー、トルコリラの4通貨は今年6〜8月の3カ月間で10%以上(対円)も下落しました。

世界を震撼させたリーマン・ショックから丸5年が経過し、新興諸国もこの5年の間にずいぶんと力をつけてきました。とはいえ、新興国市場は経済情勢がまだ不安定で、証券市場も脆弱な面があります。リーマン・ショックの直後は、一部の新興国株投信で、わずか1カ月の間に基準価額が40%近く下落したものもありました。

足元の下落幅は当時ほど深刻なものではないとの見方が強いものの、これまで右肩上がりの上昇が続いてきたこともあり、不安に感じられている投資家も多いと思います。

なお、9月中旬に米国FRBが量的金融緩和策、すなわちゼロ金利政策の事実上の継続を発表した後は、新興国市場の株式、為替がともに再び上昇に転じました。

新興国市場の乱高下の背景には、それぞれの国のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の悪化のほかに、米国の金融政策という大きな要因が働いています。

米国の動向にばかり注目が集まる昨今ですが、あらためて新興国に投資する際の心構えなどについて考えるよい機会にしていただきたいと思います。

今月の海外投信ノ「値」約10年ぶり

米国NYダウ平均の3銘柄同時入れ替え

国内投信のベンチマークとしても採用されているダウ工業株30種平均の銘柄が入れ替わり、新たにゴールドマン・サックス、ビザ、ナイキの3銘柄が採用されました。3銘柄が同時に入れ替わるのは2004年以来、約10年ぶりのことです。

【今月の投信師匠】
篠田尚子(SHOKO SHINODA)
トムソン・ロイター・マーケッツ

慶応義塾大学法学部卒業。リッパー・ジャパンに所属するファンドアナリスト。情報量の多さと分析の鋭さは天下一品!



この記事は「WEBネットマネー2013年12月号」に掲載されたものです。