【連載】Interian Color――日本独特の染色文化(社)日本パーソナルカラリスト協会 渡部尚子氏

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10月31日はハロウィン。秋の収穫を祝い、悪霊などを追い出すという行事で、その起源は古く、古代ケルト民族の祭りだと言われています。仮装をした子どもたちが「Trick or treat!(お菓子をくれないといたずらしちゃうよ)」と言いながら近所の家を訪ね、お菓子をもらうというシーンが、映画「E.T」の中で登場していたのを思い出します。日本ではあまりなじみのないイベントだったように思いましたが、ここ数年、「ハロウィン」は注目を浴びているようです。特に今年は、テレビでもよく話題になっていて、キャスターが毎日、仮装をして登場したり、ハロウィングッズを紹介するコーナーがあったりして、がぜん市民権を得たように思います。事実ハロウィン当日、仕事で遅くなった22時頃に東京・原宿駅付近を歩いていると、何人ものゾンビに遭遇しました。すぐに今日がハロウィンであることを思い出したので、叫び声を出すことはしませんでしたが、まさか日本の街中でゾンビに遭遇する時代がくるとは・・・!

日本のハロウィンは本来のものと少し違っているようです。仮装した子どもにお菓子を上げる役である大人が、自ら仮装していて、ハロウィンというよりは仮装をする日といった感じでしょうか。実際あるテレビ番組の調査では、ハロウィンがなんのお祭りであるか知らない人が半分以上いたそうです。おもしろいこと、楽しいことを自分なりにアレンジするのは、日本人ならではの特権かもしれません。
かつて中国から伝わってきた染色の技術は、日本に入ってくると同時に工夫され、アレンジされて、日本独特の文化として発展し、伝えられてきました。染め上がる色に独特の感性で色名をつけていくのも、日本人ならではのセンスが光ります。たとえば藍染めの中で、まるで藍甕を覗いただけですぐに出してしまったような、もっとも淡い水色の色名は「甕覗き」。それからだんだんと藍の色が濃くなるにつれて、違う色の名前をつけています。微細な変化にも敏感に反応して、それを楽しんでいるように感じます。もちろんそれぞれの色名の間に線が引いてあって、「ここまでは○色、ここからは○色」というわけではありません。それはその人の感性で判断されたり、それぞれの人が基準を持っていたりするのでしょう。染織家で人間国宝の志村ふくみさんは、「甕覗き」はなかなか染めることのできない、幻の色だとおっしゃっています。

先日開催された「カラーハンティング展」(6月21日〜10月6日 東京・21_21 DESIGN SIGHT)に展示された「みずいろハンカチ」。日本各地の水を使って染色したハンカチが並べられていました。もともと染料から染められる色にはかなりの幅があることは認識していましたが、同じ条件で同じ染料を使っているのにもかかわらず、水質の違いで色に差が出るというのは、新たな発見でした。色はこれほど繊細で、その色に出会うことがとても貴重であるということ、さらにはその人の感性で「色」が変わるということも、色の魅力なのだと思います。