今年は「ハリー・ポッター再ブーム」の年なのかもしれません。6月から9月まで六本木で「ハリー・ポッター展」が開催され、テレビ番組『金曜ロードSHOW!』では立て続けに映画「ハリー・ポッター」シリーズが放映されています。また来年には、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンには、映画シリーズをテーマにした新たなエリアがオープンします。そんな「ハリー・ポッター」に、過去に"ポッター戦争"と呼ばれる騒動があったことをご存じでしょうか。"ポッター戦争"とは、「ハリー・ポッター」の二次創作に関するファンと映画会社の闘いのことです。小説『ハリー・ポッター』シリーズの原作者であるJ・K・ローリングさんは、小説のファンたちが作る二次創作に寛容な人でした。また、イギリスの版元である出版社も、アメリカの版元である出版社も、二次創作に寛容の姿勢でした。ところが、1998年、J・K・ローリングさんから全世界配給権を購入した映画会社ワーナー・ブラザーズはそうはいきませんでした。ワーナーは、ハリー・ポッターの二次創作を扱っているウェブサイトの運営者たちに「排除勧告」の警告状を送りつけ、ハリー・ポッターの名前の無断使用を禁止したのです。ワーナーの措置に納得がいかないあるファンは、「暗黒魔術に対抗する会」というオンライン・マガジンを立ち上げ、関連商品のボイコットを呼びかけます。また、とあるファンは弁護士を雇って、ワーナーと闘うことに。ゴシップ紙の取材記事や、市会議員によるファン支援サイトの立ち上げなどの後押しを経て、世界中の掲示板はワーナーに対するマイナス感情で溢れました。そして、いつしかネット上の意見が、現実の人々を動かすようになります。イギリス中の伝道師たちが、ワーナーがファンに対して行った仕打ちを激しく非難したのです。この騒ぎを受けて、ワーナーは「この騒動は"情報と理解の不足が招いた誤解"だった」という声明をだしました。そして、ファンに対する高圧的な態度を改めることになるのです。それは、「ハリー・ポッター」のファンたちが、インターネットを通じて団結し、二次創作の自由を勝ち取った瞬間でした。"ポッター戦争"を紹介している書籍『のめりこませる技術』では、この出来事をこう締めています。「真の教訓は、自分が権利を有している物語と一所懸命つながろうとしている観客を攻撃するのは最悪だということ。(略)ヒトは、大好きな物語を何度でも語り直さなければ気がすまない動物なのだ。もし、何か飛び切り特別な意味を持つ物語に出会ったら、表面だけなぞって満足できるようなものではない。その奥にあるものを求めずにはいられないのだ。その物語の中に自分を想像してみずにはいられない。そしてその物語を自分でも語りたい。そして物語を自分のものにしてしまいたいのだ。物語と自分を結ぶものが強固であれば、"排除勧告"に恐れをなして言いなりになどならないのである」『のめりこませる技術』では"ポッター戦争"だけでなく、映画『ダークナイト』の宣伝で行われた有名なARG(代替現実ゲーム)「Why so serius?」に関する詳細な記述に始まり、ゆるやかに終焉を迎えている"現在のエンタテインメント"についての、豊富な事例と教訓が語られています。エンタメ業界に関わる方に、おすすめの一冊です。
『のめりこませる技術 ─誰が物語を操るのか』 著者:フランク・ローズ 出版社:フィルムアート社 >>元の記事を見る

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