身近にある児童虐待にどう向かいあうか?<映画『子宮に沈める』特別対談>
 明日、11月9日公開の『子宮に沈める』は、「大阪二児置き去り死事件」をもとにした映画です。今春、母親には懲役30年という児童虐待死としては異例の厳しい判決が決定しましたが、それについてもネット上ではいまだに「子殺しをした母親は死刑」という言葉に溢れています。この事件を緒方貴臣監督は、「あえて弾劾も非難も同情も庇護もない視点」で描きました。そして、この映画を見た一般社団法人GrowAsPeople代表・角間惇一郎氏は「行動せよ」と語ります。

緒方:『子宮に沈める』は、あくまで、身近に起こりうるかもしれない物語というように描くのが僕の大前提でした。映画である以上、それは難しいかもしれないけれど、なるべくそう思って欲しいって。そこで、主人公のお母さんのバックグラウンドをなるべく見せないようにした。夜で働いているような描写はありますけど、それが、風俗なのかキャバクラなのかわからないようにするとか。

角間:映像論とかには詳しくないですが、映画はマンションの一室だけを描き続けますよね。外で母親はどう過ごしているのかとかは一切ない。孤立した部屋の定点観測で、ただ、時間の経過はディテールが如実に示す。ピンヒールが部屋に散乱して、アイロンやコテが散乱し始めるとか。よく見てるなって思いました。

緒方:あまり大阪の事件についてだけ調べると僕自身が偏ってしまう気がしたので、事件については客観視できるレベルの情報までしかいれてないんです。あとは、子育てをしているお母さんたちに話を聞いたり。大阪の事件がきっかけであり、ベースにはなっていますが、他のさまざまな虐待やネグレクト、海外の事件を調べて、僕の中でオリジナルなものにしている。ただ、作り手の存在を感じさせないために、カメラはほとんど動かしてないんです。説明的にならないように、カメラは固定でカットも割らないようにしました。

角間:僕、この映画はすでに何回も見ているんですが、なかなか、映画を見てから拍手しづらい映画っていうのは久しぶりでしたね。観終わった後、「ええーっ」みたいな。果たして泣けばいいのかどうか。でも、明らかに拍手はないでしょ?

緒方:ないですよね。

角間:詳細は避けますが、後半以降、観るものはみんな思うんですよ。「子どもを助けてあげたい」って。ドラえもんの道具に物語の世界に入れる「絵本入りこみぐつ」とういう道具があるんですが、ホント、「絵本入りこみぐつ」があればいいのにって思いましたもん。それがあれば、映画館から子供たちを助けにいける。でも、僕らは助けられない。だって映画だから。この映画は、観ている側に圧倒的な無力感を与えるんですよね。

でも、逆にそこにすごく価値がある。終わってから拍手はできない。あるいは、泣いてすっきりもできない。「いい映画だったね〜」ちゃんちゃんで終わるのではなく、95分間で抱いたモヤモヤ、助けにいきたくてもそれを許さない映像。「助けたい」と思ったならば、何かこの現実の世界の行動につなげろよ!って話になるんです。この映画はその先の行動まで含めて完結する映画だなって思いましたね。

緒方:そうですね。観て終わりではなくて、その後の行動や意識が変わるきっかけに、なってほしいなと思います。幼児虐待やネグレクトに対して、行政も変わってきていて、サポート体制もできている。それがうまく利用されていないというところもありますが……。ただ、行政が云々というのではなく、一人ひとりの意識がちょっと変われば救えることもある。ダンナでもいいし、友達かもしれないし、自分の兄弟でもいいし。周辺の人たちが少しでもアンテナを立て、手を差し伸べることで何かしら阻止できるんじゃないかとは思っています。