情報で溢れた私たちの生活。歩いているときも携帯でニュースを読み、分からないことがあれば、会話の途中でも調べ、望んでいない情報までも受信してしまいます。そんな現代以上に情報に囲まれた未来を描いたのが、小説『know』です。『know』の作中では、2040年に「情報材」という物質が開発されたことで、情報インフラは革新的な発達を遂げます。「情報材」で作られた建物や道路は、通信インフラの一部となり、私たちの身の回りのものが、常時周囲の状況をモニタリングし、相互に交信し合うのです。「あらゆる情報が、あらゆる場所で取得できる時代」――"超情報化社会"の到来で莫大な情報に囲まれることになった人類は、果たしてどうなってしまったのでしょうか?「昔の人は携帯用の情報デバイスを持ち歩いて、自宅ではコンピュータを使って、補助器具に助けられながら押し寄せる情報津波に対抗しようとしていたが。結局それらを扱うのも人間の脳でしかなく限界は明白だった。(略)インフラが整った先進国から順に情報強迫症や情報性鬱病が頻発し、自殺原因の上位は情報障害疾患の独占が数年続いた。二〇五一年にはついに国内の総流通情報量を規制しようというなんとも後ろ向きで自虐的な法案まで出されてしまう。人類は自ら退化の道を選ぶ寸前まで追い詰められていた。」情報に晒され、囲まれすぎたがあまり処理できず、病気になってしまう人が続出したのです。そんな可哀想な人類が救ったのが「電子葉」という発明でした。2053年、「電子葉」が初めて人間の脳に植えられます。「電子葉」は、ネットワークと通信して情報を取得できる人造の脳葉。脳外部からの情報の処理を行い、脳神経の状態を非接触的にモニタリングし、同時に非接触的に介入を行えるのです。脳の中に、とても性能の良いiPhoneが入っているようなイメージでしょうか。「電子葉」の登場によって、人類の情報処理能力は著しく向上しました。そして、登場人物たちは、さらなる「人類の発展」を目指す冒険に出かけるのです。『know』の世界は、私たちが生きる現代のネット社会の延長線上。想像しやすい未来が描かれています。68年後の『know』の未来をのぞいた後に、2013年の現在を見直すと、新しい発見があるかもしれません。
『know (ハヤカワ文庫JA)』 著者:野崎まど 出版社:早川書房 >>元の記事を見る

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