米ドル/円のターゲットは110円。2014年は緩やかな円安トレンドへ
昨年11月から株式市場においてアベノミクス相場がスタートしたのとほぼ同じタイミングで、為替市場でも円安が加速。足元では狭いレンジでの揉み合い相場が繰り広げられてきたが、今後も円安トレンドは中長期的に円安トレンドが続くのか?

「投機の円売り」から「実需の円売り」にシフト

かねてからドル/円相場は2013年末に102円、2014年末に110円に達すると予想してきたが、そのトレンドが継続し、2015年末には116円、2016年3月末には118円まで円安が進むと判断している。日米金利差拡大が進むとみられるのもさることながら、貿易などに伴う「円の実需」が円売り要因として作用しそうだ。

9月末の時点で過去1年間にわたって20円以上の円安が進行したが、最大の牽引役はアベノミクスを手がかりとしたヘッジファンド勢の円売りだった。だが、一方で「実需の円売り」も持続的な円安をもたらしていた。経常収支と長期資本収支の中から為替の受給に影響を及ぼす部分だけを抽出して算出した「野村円需給インデックス」によれば、その間に11兆円もの円売り超過となっていた。

こうした「実需の円売り」は2015年まで継続している公算が大だと私は考える。一般的には、円安が進めば経常収支の悪化要因となってきた貿易赤字も縮小するとの見方もある。だが、短期的にはむしろ貿易赤字が拡大するものだ。そのうえで、やがて円安による輸出数量の拡大と輸入数量の抑制で収支が改善傾向を示していくはずである。

なぜなら、日本は輸入の7割超がドル建て決済で、円安は輸入価格の上昇に直結する。ところが、輸出の約4割は円建てで固定されており、輸出価格の上昇ピッチは輸入価格の上昇よりも鈍るのだ。また、海外での現地生産が進んだ結果、円安だからといって国内生産への回帰(輸出の拡大)が顕著になるとは考えがたい。原発が停止して火力発電向けのエネルギー資源の輸入が膨らんだことが貿易赤字の主因だと思われがちだが、それも誤解だ。貿易赤字の拡大は、大震災に伴うサプライチェーンの寸断で輸出が止まってしまったことが大きい。加えて、「アラブの春」に伴う資源価格高騰も貿易赤字拡大の一因となった。事実、輸入自体はさほど増えておらず、価格が高止まりする限り、原発再稼働でも赤字縮少には結びつきにくい。

仮にエネルギー価格が4割下がれば、貿易赤字を完全に打ち消せる。しかし、そこまで大幅な価格下落は、シェールガス革命の影響が表れる2016年以降となろう。このように、ファンダメンタルズ面は長期的な円売りを示唆する。

池田雄之輔(YUNOSUKE IKEDA)
野村證券 チーフ為替ストラテジスト

16年間、一貫して日本のマクロ・通貨を担当。投資フローの包括的分析ツールである「野村円需給インデックス」を開発した。日本の為替介入政策に関するリサーチも多数。1995年、東京大学経済学部卒。



この記事は「WEBネットマネー2013年12月号」に掲載されたものです。