トッテナム・ホットスパーのGKウーゴ・ロリスが、3日のエヴァトン戦でFWロメル・ルカクと接触した際に頭部を損傷しながらもプレーを続行したことが、大きな波紋を広げている。

78分に試合が一時中断され、怪我を負ったロリスはすぐさまトッテナムのメディカルチームによる治療を受けた。GKブラッド・フリーデルに交代するものと思われたが、当のロリスが途中交代を拒否してピッチに残り続けたのである。

彼の行動に当初アンドレ・ヴィラス・ボアス監督は困惑、フリーデルは苦笑いしていたが、画面に映るロリスは接触した際の衝撃からか記憶を失くしているように見えて、私は強い違和感を覚えた。実際、ヴィラス・ボアス監督が試合後に、「ロリスは接触事故のことを十分には覚えていない」と発言しているが、それはロリスが完全に気絶していたのか、あるいは一時的に意識を失ったのかは明らかにされていない。

ロリスをピッチに残らせる判断を下したトッテナムに対して、FIFAのチーフメディカルオフィサー、プロフットボーラー選手会及び頭部損傷に関するチャリティー団体から「GKロリスの健康に対してあまりにも無謀で無責任な態度だ」と激しい批判の声が挙がり、すさまじいディベートに発展したのである。

イングランドフットボール協会(FA)が掲げるガイドラインによれば、動けない、無反応、または意識を失った選手がプレーに戻ることは禁止されている。しかしながら、“一過性の”怪我の場合は、医療関係者の診断を仰いだ上で問題なければプレーの続行が認められている。

スパーズ側は、ロリスは高い評価を受けるクラブのメディカルチームによってピッチ上で診断され、プレーを続けても問題ないと判定したと反論。また、試合後に念のためにCTスキャンで検査したが、頭部に異常は認められなかったと発表した。

トッテナムのメディカルチームの中には、2012年に心停止してピッチに倒れたファブリス・ムアンバに応急措置を施したメンバーが含まれている。プロフェッショナルな彼らは「ロリスの健康の危険を冒した」と非難されて、憤りとフラストレーションを感じているに違いない。しかし、事故の瞬間を覚えていない選手を再びピッチに送り出すのは、やはり大きなリスクだったのではないか。

6日にトレーニングが再開され、トッテナムは7日、ヨーロッパリーグでFCシェリフと対戦するが、ロリスがチームに帯同するかどうかは定かでない。ここはひとつ慎重に議論を重ねて結論を出してほしいものだ。