米国出口戦略により為替はドル高。欧州危機が再燃し、新興国は崩壊へ!?
2014年の投資戦略には「解」が見つからない。日本も含めてグローバル経済は混沌とし、投資リスクは最大級に高まる。唯一見通せることは、米国の出口戦略によりドル高傾向が強まること。外貨投資を軸に戦略を組み立てよう。

米国の出口戦略着手で長いドル高相場が始まる

2014年以降のグローバル経済の行方は米国FRBの出口戦略に強く影響されるだろう。9月のFOMCでは量的緩和の縮小を見送ったが、来年には、出口戦略に着手することは間違いない。第1段階では現在実施されている毎月850億ドル(約8兆2400億円)の債券購入額を徐々に縮小し、第2段階では市場に出回っている余剰資金の回収を図り、第3段階では利上げに踏み切る。

第1段階に入る前からドル高傾向が強まっているが、ステップを踏むにつれ、世界は明白な「ドル高」に見舞われるはずだ。

出口戦略の進展を見越して新興国からは投資資金が流出しているが、今後もその傾向は続くはずだ。そのことに関してはFRBのバーナンキ議長も懸念を示しているが、新興国が抱える問題については、資金流出を止めれば解決するわけではない。

新興国が抱える問題とは経済成長率の鈍化である。経済が成長して国民生活が豊かになるにつれ、国民はさらなる生活の向上を望み、賃金アップを要求する。そのため、世界の工場として君臨していた中国沿海部の賃金は、あと数年で米国南部の賃金に匹敵するところまで上昇しており、それがまた経済成長の足を引っ張るという負の連鎖に陥る。新興国の中でも、5年のタームで見ると中国、ロシア、ブラジルが危ない。中国とロシアは政治崩壊による混乱の恐れが強く、ブラジルはバブル崩壊の危機にある。リオデジャネイロオリンピックの開催にすら、影響が出るかもしれない。

また、欧州危機は沈静化したように見えるが、各国が抱える財政危機は水面下で拡大しているので、再燃することは間違いないだろう。欧州危機を救うためにはドイツが資金を提供するしかないが、9月のドイツ連邦議会選挙(総選挙)の勝利で国民の税金を危機国に投入することに消極的なメルケル首相が3選された。そのため現状の先送り策が継続され、いずれポルトガル、イタリア、スペインから火の手が上がるだろう。すでにポルトガルの国債利回りは6%台前半から7%台で推移している。まだマーケットは問題視していないが、いずれ国民が緊縮財政に不満の声を上げて政権が財政規律を緩めるようなことがあれば、マーケットは敏感に反応するだろう。

外貨投資は米ドル集中。米国向け輸出企業に注目

日本経済も回復する要素は何もない。安倍政権が目指す脱デフレが実現する保証はない。現在、物価が上がり始めている最大の原因は、ドル高(円安)による輸入物価の上昇である。企業は値上げをもくろむどころか、円安に見舞われながらも値上げを控える努力をしている。値上げをすれば消費者が消費を控えることが明確だからだ。しかし、4月からの消費増税により、消費者の負担は確実に増える。モノの値段が上がり、消費が冷え込む。目先は財政出動と増税前の駆け込み需要によって支えられているが、来年4月以降は厳しい状況に追い込まれる。日本経済が明るさを取り戻すのは米国からの安価なシェールガス輸入が始まり、エネルギーコストが下がる2017年以降だろう。

では、2014年の資産運用はどう考えるか。日本経済のインフレ転換は不透明だが、長い目で見てドルのジリ高が続くことははっきりしている。そこで外貨投資(ドル)と輸出関連企業が投資対象となるが、個別銘柄を選ぶことは非常に難しい。あえて言うなら、セクターに関係なく米国向け輸出比率が高い企業を狙い、中国関連銘柄には注意することだ。内需では何が育つのかは不透明だが観光、農業、医療・バイオ関連は期待できる。ただし、マーケットの物色が進んで株価に成長が織り込まれている可能性が高く、個別銘柄に落とし込むのは難しそうだ。東京オリンピック開催決定で脚光を浴びた不動産関連は業績以上に株価が上がりすぎている感があり、今から買うのは怖い。

日本株の上昇は外国人投資家の?買い〞によるところが大きく、その外国人投資家はアベノミクスの第3の矢である成長戦略の具体策と、日本企業の国際競争力を高める法人税引き下げの道筋に期待している。年内の日経平均株価は1万3000〜1万6000円のボックス圏で推移し、それを上へ抜けるためには、外国人投資家の買い意欲をそそる政策を打ち出す必要があるし、もし失望させてしまえば、株価の上昇は望めないだろう。

主な新興国の経済状況

ブラジル
実質GDP成長率
2012年実績:0.9
2013年予測:3.0
2014年予測:4.0
消費者物価指数
2012年実績:5.4
2013年予測:6.1
2014年予測:4.7
失業率
2012年実績:5.5
経常収支
2012年実績:−2.3
財政収支
2012年実績:−2.8
政府債務
2012年実績:68.5
一次産品輸出比率
2012年実績:62.7

ロシア
実質GDP成長率
2012年実績:3.4
2013年予測:3.4
2014年予測:3.8
消費者物価指数
2012年実績:5.1
2013年予測:6.9
2014年予測:6.2
失業率
2012年実績:6.0
経常収支
2012年実績:4.0
財政収支
2012年実績:0.4
政府債務
2012年実績:10.9
一次産品輸出比率
2012年実績:79.1

インド
実質GDP成長率
2012年実績:4.0
2013年予測:5.7
2014年予測:6.2
消費者物価指数
2012年実績:9.3
2013年予測:10.8
2014年予測:10.7
失業率
2012年実績:̶
経常収支
2012年実績:−5.1
財政収支
2012年実績:−8.3
政府債務
2012年実績:66.8
一次産品輸出比率
2012年実績:36.8

インドネシア
実質GDP成長率
2012年実績:6.2
2013年予測:6.3
2014年予測:6.4
消費者物価指数
2012年実績:4.3
2013年予測:5.6
2014年予測:5.6
失業率
2012年実績:6.2
経常収支
2012年実績:−2.8
財政収支
2012年実績:−1.3
政府債務
2012年実績:24.0
一次産品輸出比率
2012年実績:62.5

メキシコ
実質GDP成長率
2012年実績:3.9
2013年予測:3.4
2014年予測:3.4
消費者物価指数
2012年実績:4.1
2013年予測:3.7
2014年予測:3.2
失業率
2012年実績:4.8
経常収支
2012年実績:−0.8
財政収支
2012年実績:−3.7
政府債務
2012年実績:43.5
一次産品輸出比率
2012年実績:24.0

トルコ
実質GDP成長率
2012年実績:2.2
2013年予測:3.4
2014年予測:3.7
消費者物価指数
2012年実績:8.9
2013年予測:6.6
2014年予測:5.3
失業率
2012年実績:9.2
経常収支
2012年実績:−5.9
財政収支
2012年実績:−1.5
政府債務
2012年実績:36.4
一次産品輸出比率
2012年実績:19.1

米国の出口戦略により、新興国からの投資資金流出がいっそう鮮明になっている。外貨準備が積み上がっているのでアジア通貨危機の再現はないだろうが、各国とも成長は鈍化しそうだ。

※暦年ベース、単位は%。経常収支、財政収支、政府債務は対GDP比。一次産品輸出比率は総輸出額に占める割合。
出所:IMF「World Economic Outlook, April2013」など。

中原 圭介(KEISUKE NAKAHARA)
ファイナンシャル・プランナー

金融機関や企業への助言・提案や富裕層の資産運用コンサルティングを行なう傍ら、執筆やセミナーなどを通して金融教育・投資家教育の普及に努めている。著書に『これから世界で起こること』(東洋経済新報社)など多数。12月に幻冬舎より新著が上枠される予定。



この記事は「WEBネットマネー2013年12月号」に掲載されたものです。