円安傾向に歯止めがかかり、株価もやや伸び悩み。その結果、市場金利も弱含み、住宅ローン金利も今年の最低水準近辺にまで低下してきた。そして、低金利を武器にしたネット系銀行の住宅ローン貸し出し攻勢の影響で、メガバンクはもとより、地方銀行もローン金利の引き下げに動いている。その結果、金利だけを見ると、「どこの銀行で借りても大体同じ」といった状況が生まれている。

 そんな中、一部の銀行は、金利水準とは違った面で、住宅ローンの特色を打ち出している。ローンに付帯する、さまざまな保険のラインナップを増やしているのだ。住宅ローンに付帯する基本的な保険について解説しておくと、まず「団体信用生命保険」がある。これは、住宅ローンの返済期間中に、借りている人が死亡、あるいは高度障害となってしまった場合に、保険金によって残りの住宅ローンを完済する保険商品だ。借りる側と貸す側(=銀行)双方のリスクヘッジをしている保険といえる。

 以前は、団体信用生命保険を掛けるには、別途保険料が必要だったり、ローン金利に金利が上乗せされたりしていたが、今は銀行業界の住宅ローン貸し出し競争の影響で、ローンに組み込まれるケースも少なくない。最近は、この団体信用生命保険に、おもに特約という形で、様々な保障を付けるプランが増えているのだ。

■各社の異なる保障の内容に注目

 例えば、三井住友信託銀行の保障プランには、早期のガンと診断で判明しただけで住宅ローン債務残高相当額が診断給付金として支払われ、ローン返済額に充当されるものがある。つまり、ローン残金がゼロとなるのだ。ガン以外にも、急性心筋梗塞もしくは脳卒中を発病し、60日以上その病状が継続していると診断された場合、残金がゼロとなる。このプランは、保険料として、ローン金利に0.3%が上乗せされるが、ガン・急性心筋梗塞・脳卒中のいわゆる三大疾病以外の病気やケガで入院したときでも、入院一時金や月々のローン返済分を支払ってくれる保障も付いてくる。

【松岡賢治のマネーtab】住宅ローンは「保障」で選ぶ時代へ

 千葉興業銀行は、上記の三井住友信託銀行の保障プランに、高血圧症・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変・慢性膵炎という5つの重度慢性疾患によって12か月間就業不能となった場合、加えて、疾患の種類にかかわらず余命6か月と診断された場合、ローンの残金がゼロになる保障が付く。また、借りた本人ではなく、その妻が乳ガンや子宮ガンといった女性特有のガンと診断されたときに、ガン一時金として100万円が支払われるという。保険料はローン金利に0.3%上乗せされる。

 静岡銀行は、千葉興業銀行とほぼ同じ保障プランながら、平成26年3月31日までにローンの借り入れ申し込みをすると、通常の保険料である0.3%分の金利上乗せ分が、1.5%になるキャンペーンを実施している。なお、静岡銀行には、『住宅新時代』という70歳まで借り入れが可能な住宅ローンもあり(最終返済時の年齢は満82歳未満)、独自色を打ち出している。

 ネット系銀行でも、保障が付いているプランがある。住信SBIネット銀行の『8疾病保障』は、がん・急性心筋梗塞・脳卒中の3つの特定疾病と、高血圧症・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変・慢性膵炎の5つの重度慢性疾患にかかり、仕事をすることが不可能となった場合に、残りの住宅ローンがゼロとなる。ガンは、上記の銀行の保障と違い、診断だけでは保険金が給付されないが、8疾病保障の保険料は無料で、コスト面での優位がある。

 最後に、こうした保障が手厚い住宅ローンを利用するときのアドバイスを。

 すでに自分が加入している生命保険などと、保障内容が重複するケースが出てくる。そこで、住宅ローンを借りる際に、自分の保険の見直しも同時に行ないたい。住宅ローン残金がゼロになる保険金というと、2000万円とか3000万円という金額になる。この金額を保障する定期保険ともなれば、毎月の掛け金も結構な負担。住宅ローンの借り入れを機に、保険商品の減額を実行して、その分をローンの支払いに充てる手もあろう。

 これまで紹介した保障プランの内容には違いがあり、その分、住宅ローンの金利水準も変わってくる。三井住友信託銀行と地銀を比べると、三井住友信託銀行のローン金利の方が低い。やはり、保障内容と金利水準、その他のコストを総合的に比較することが大切だ。

(文/松岡賢治)

マネーライター、ファイナンシャルプランナー/シンクタンク、証券会社のリサーチ部門(債券)を経て、96年に独立。最新刊に『人生を楽しむマネー術』(共編著)。