錦織圭は、ATPマスターズ1000・パリ大会の3回戦で敗れ、2013年シーズンを終えた。

 マスターズは、テニスの4大メジャーであるグランドスラムに次ぐグレードの大会で、トッププレイヤーは全員出場を義務付けられており、ATPランキング19位(大会時)の錦織は、ノーシード(シードは16人)での戦いになった。だが、「別にそんなには深く考えていないです。今置かれている状況でやるだけです」と意に介さなかった錦織は、初戦をストレートで勝利した。

 2回戦では、第8シードのジョー・ウィルフィールド・ツォンガ(9位)に、2回のマッチポイントを握られながらも、1-6、7-6、7-6の大逆転勝ち。試合中、左ひざの治療を受けた錦織だったが、足にけいれんを起こしていたツォンガを振り切り、トップ10プレイヤーからの今季2勝目を挙げた。

 このパリ大会で2年連続のベスト16へ進出した錦織は、3回戦で過去3戦3敗の第9シードのリシャール・ガスケ(10位)と対峙。だが、錦織は精彩を欠き、ダブルフォールトを7回も犯し、本来得意なはずのリターンでは、ガスケのファーストサーブに対して、19%しかポイントを獲得できず、3-6、2-6で敗れた。

「アンフォースドエラーが多すぎた。いいフィーリングが今日はなかった。(ガスケの)仕掛けがうまくて、油断できなかったし、大事なところでサーブやストロークを決められた。(自分の)サーブが安定していないので、ファーストサーブの確率を上げて、セカンドサーブを振り切れるようにしたい」

 このように振り返った錦織は、2年連続してトップ20でシーズンを終えることとなった。狙っていたトップ10入りは果たせなかったが、6月17日付けのランキングでは、日本男子最高となる11位まで登りつめた。また、5月のマスターズ1000・マドリード大会3回戦で、当時ランキング2位のロジャー・フェデラーに初勝利したことは特筆すべきことだった。さらに、ローランギャロス(全仏)では、自身初のベスト16進出。日本男子としては、1938年の中野文照以来の快挙を成し遂げた。

「(13年シーズンは)一番いい年と言えると思います。最終ランキングは、去年と同じぐらいですけど、最高ランキングは11位までいきました。強い相手にも勝てている。力強いプレイになってきていると思う。最低ラインにはいっていると思うけど、来年はグランドスラムでベスト8より上を狙いたい」

 今シーズンの最終成績は、36勝19敗で、そのうちマスターズでは13勝8敗。さらにATPメンフィス大会で、日本男子最多となるワールドツアー3勝目を挙げた。

「どの大会でも上に行くことは必要になってくる。それができるようになれば、トップ10に入れると思う。マスターズとグランドスラムでは、もっと上に行けるようにしたいですね」

 シーズンをとおして、錦織はケガの予防のため試合中に右足首にサポーターを装着。左ひざにもサポーターを付け、さらにテーピングをするなどして、10カ月に及ぶ長いシーズンを乗り切った。

「痛みがないわけではない。どの選手にもあることだと思う。ただ、サポーターが取れるようになれば一番いいと思う」

 戦線を離脱するような大きなケガをすることなくシーズンを戦い切ったとはいえ、腰も含めてたびたび小さな故障に悩まされた場面はあった。そのため、引き続きフィジカルの強化は錦織の課題のひとつだろう。錦織自身、「(シーズンの間にも)オフにしっかりトレーニングをして、力強く1年を戦えるようにしたい」と語っている。

 13年シーズンでの錦織対トップ10 プレイヤーの対戦成績は、2勝7敗。再びランキングを上昇させるためには、自分より上位の選手に勝たなくてはいけない。

「もう少しミスを減らして、安定したプレイができれば、強い相手に勝てるようになると思うので、パワーをつけて臨みたい」

 来季は24歳で迎えるプロ7年目のシーズン。経験を積み重ねた錦織は、自らが掲げる大いなる目標達成のために、これからは1年1年が勝負になってくる。

「年を重ねるごとに、ランキングも上がっていますし、悪くはない。これから、25(歳)を越えてからが大事になってくると思うので、30(歳)ぐらいまでしっかり戦って、結果が出るように頑張らないといけない」

 マスターズ1000大会での初優勝について、錦織は、「まだマスターズはわからないですけど......」と言いながらも、ATPツアー4勝目に向けては、「できたらいいですね」と未来を見据えている。

 さらに、これまでは、出場することをイメージできていなかったワールドツアーファイナルズ(ATPツアー最終戦・年間ランキング上位8人しか出場できない)の出場を意識するようになった。錦織の目標意識に変化が芽生え、新たなモチベーションとなっているようだ。

「今年もチャンスがなかったわけではなかった。徐々に近くなってきている。トップ10入りに加え、そこ(ツアーファイナルズ)も目標にしていきたいです。(出場への自信は)まだなかなか持てないですけど、年の初めにしっかりスタートができれば、チャンスも出てくるんじゃないですかね」

 錦織は、「上へ」という言葉を何度も口にした。それは、かつて彼自身が「(トップ10に)一回入るだけでは意味がない。この何年かで、その地位を確立することが目標」と語ったこととつながっている。トップ10に定着し、グランドスラムでの優勝を狙える選手に成長することこそ、錦織の目標なのだ。

「大きな結果が出せれば」と自らが世界の頂点に立つ未来像を描きながら、錦織の双眸(そうぼう)は、鋭い輝きを放っている。

神 仁司●取材・文 text by Ko Hitoshi