「半沢直樹」で描かれたように、銀行員の世界は独特な部分が多い。管理職にはならず、得意分野を生かして第一線で活躍し続ける──銀行員にはそんな働き方はない。極端に言えば、出世か出向の二者択一だ。

「仕事をしなくて済むように、早く偉くなりたい」

 1997年に経営破綻した北海道拓殖銀行に勤めていた男性(55)は30代の頃、そんな理由で出世を目指していた。不渡りを出した融資先に内容証明を送りつけ、経営者を追い回す。大蔵省(当時)の検査が近づくと、1カ月間は検査をクリアするための資料づくりに追われ、疲れ果てた。

 自由気ままな海外勤務を満喫し、帰国直後に拓銀は破綻。もう銀行はこりごり、と取引先の子会社に再就職した。引受銀行に再雇用された元同僚は、合併後のポスト削減のせいで弾き出された。

 一方、信託銀行に勤める男性(29)は、最近は出世願望のある行員は少ないとみる。

「評価は減点主義で、ミスの責任は連座制。責任の範囲が広がり、部下のミスで管理責任を問われてはたまらない。出世しすぎず暮らすほうが気楽です」

 銀行員は50歳前後で事実上定年となり、子会社や取引先に「片道切符」で出向する慣例がある。取引先のほうがおおむね給料は高いが、仕事内容が大きく変わるため、人気が高いのは子会社だ。今後はバブル大量採用組の出向ラッシュで受け入れ先の確保が難しくなりそうだが、

「銀行の一部門を子会社化していけば何とかなるのでは」(メガ・総合職・51歳男性)

AERA  2013年11月4日号より抜粋