ユース世代(14歳から21歳)の障害のあるアスリートのためのアジアの祭典、第3回アジアユースパラゲームズ(AYPG)が10月26日から30日にかけてマレーシア・クアラルンプールで開かれた。日本選手団は164名(選手93名、役員71名)で、実施14競技中6競技(陸上競技、バドミントン、ボッチャ、ゴールボール、水泳、車椅子バスケットボール)に出場。計85個(金40、銀20、銅25)のメダルを獲得し、2009年の前回大会に続く首位を守った。

 AYPGは若い選手に国際大会の機会を与え、競技経験を深め、国際交流を広める目的で2003年の香港大会から始まった。結果が直接、世界選手権やパラリンピックへつながる大会ではないが、ユース世代にとっては国際経験を積む貴重な大会として位置付けられている。特に今大会は2020年東京パラリンピックでの主力を担う世代が参加しており、日本チームにとっては7年後を見据えた意識とパフォーマンスが選手には期待されていた。

 そんな主役候補の一人が、陸上競技T54(車いす)クラスジュニアの部の西勇輝(19歳)だ。日本選手団の主将も任されていた今大会は、「主将として恥ずかしくないレースをしたい」という責任感を背負いながら、短距離3種目に出場。プレッシャーをはねのけ、見事に金メダル3個を獲得した。100mは16秒28、200mは28秒19、そして自身最終種目となった400mは「いちばん苦手」と言いながらも自己新となる53秒89という快走だった。

 西は東京都出身。地元開催となる20年東京大会への思いは強い。「(AYPGは)2020年に向けて、ちょうどいいタイミングでの大会になりました。いいところも、課題も見つかったのでよかった」と振り返った。

 良かった点はスタートダッシュで、元々得意にしていたが、今回海外勢のなかで戦ってみて、さらに自信が持てたという。課題はスタミナだ。400mも勝ちはしたが、ラスト50mからは「バテてしまった」と明かす。筋トレで長所を伸ばし、走り込みでスタミナ不足を解消し、「20年でメダルが獲りたい」と誓っていた。

 ゴールボール女子の若杉遥(18歳)は、今大会解団式で自ら志願して壇上に立ち、選手団を前に真剣な表情で、「東京で絶対に金メダルを獲ります」と力強く宣言した。熱い思いの裏には、前日に喫した手痛い敗戦の悔しさがある。日本は決勝に進み、中国と対戦したが、序盤から終始リードを奪われ、10−2と大差で退けられた。日本の2点はエースでもある若杉が試合終盤に挙げ、一矢報いた格好になったが、「もっとできたはず」との思いが残ったのは間違いない。

 ゴールボール女子は昨年のロンドン・パラリンピックで悲願の金メダルを獲得した。日本チーム史上、団体種目初の金という快挙だった。若杉はその世界王者チームの一員で、レギュラーではなかったが若手のポイントゲッターとして世界最高峰の戦いも経験済みだ。今回のユース代表ではチーム最年少ながら、その経験と実力を買われキャプテンを任された。頂点に立つことの喜びを知っている分、今大会も金メダルを目指し、強いリーダーシップで若いチームを決勝まで率いてきたが、中国の高い壁に跳ね返された。

 若杉の目標は3年後のリオを経て、東京での3連覇だ。「20年東京は年齢的にも私が主力選手にいなければいけない大会。成長を信じてもっともっと努力したい」という若杉。投球スピードを上げ、駆け引きを学び、日本の絶対エースになる。その覚悟はできている。

 一方今大会が「初めての国際大会」という選手も少なくない。たとえば、陸上競技T54(車いす)クラスユースの部に出場した城間圭亮(17歳)は海外での初レースに、「緊張したし、海外の強い選手の言葉を聞いて力にできるよう、英語を勉強したいと思った」とフレッシュな感想を話した。だが、競技面でも価値ある経験を得ている。800mでは大会記録を塗り替え、400mでは自己新をマークするなど、「こういう場で(記録を)出せて、強い自分になっていると自信になった。東京という目指す場所が出来たので、そこに向かってステップアップし、金メダルを獲りたい」と話した。

 また、個人種目によっては参加人数などの関係から東京大会での開催が未定のものもある。選手はただ実施されることを信じて、今は自分のできる努力を重ねるしかない。今回陸上競技で藤井美穂(18歳)が1m38cmの世界新記録(申請中)出した走り高跳び女子T42(大腿切断)クラスはパラリンピックではまだ実施されたことがない。藤井は、「もっといろいろな大会に出て、いい成績を出して、アピールしたい」と話した。また、AYPGでは実施されたバドミントンも、現時点ではパラリンピックの正式種目ではない。シングルスとダブルスで銅メダルを獲得した藤野大輔(19歳)は「今、僕たちが頑張ることが、東京での実施につながると信じ、もっと努力したい」と話した。

 2020東京パラリンピックの開催決定は若い世代に大きな、そしてくっきりとした目標を与えた。7年後は遠いようで意外に近い。ライバルより一歩でも早く心がまえをし、具体的なビジョンを掲げ、努力を始めることが目標達成へのカギである。アジアでの今大会が「東京世代」の選手たちに大きな刺激となり、その一歩を踏み出す後押しになったことは間違いないだろう。

星野恭子●文・取材 Hoshino Kyoko