『ハガレン』『るろ剣』『テルマエ』…あのヒット作漫画家、実は今こんな漫画を描いてた!

写真拡大

ドラマ化や映画化もさかんな日本の漫画作品。さまざまなタイトルが脚光を浴びるなか、「そういえばこの原作者、今は何を描いてるんだろう?」と気になったことはないだろうか。

「ウレぴあ総研」でこの記事の完全版を見る【動画・画像付き】

今回は有名な作品の原作者が、現在どんな漫画を描いているのか――ヒット作を経た後の“進化”と“変化”について調べてみた。

■『鋼の錬金術師』作者が描く農業エッセイ

錬金術をモチーフに骨太なドラマとバトルを描き、発行部数6千万部を超えるという大ヒット作『鋼の錬金術師』。その作者・荒川弘(あらかわひろむ)氏は現在、農業がテーマの作品2つに取り組んでいる。

1つは今年夏にアニメ化され、第2期の制作も決まっている『銀の匙 Silver Spoon』。受験戦争からドロップアウトした主人公が北海道の農業高校へ入り、人間的に成長していく姿を描いた良作だ。

しかし、ここでお薦めしたいのはもう一方のエッセイ漫画『百姓貴族』。少年向けに良くも悪くも落ち着いた描写の『銀の匙』と比べ、こっちは圧倒的にシニカルで毒舌。ホンネをぶっちゃけまくる“荒川節”が冴え渡っている。

そもそも作者の実家「荒川農場」は、テレビにも出演したことがあるリアル農家。ご先祖は明治時代に北海道へ入植してきた開拓農民という、ガチの農業一族なのだ。そこで娘として生まれ育って(荒川氏は女性である。念のため)農業高校にも通っていた作者の体験談が、ゆるい絵柄&容赦ないトークによって赤裸々に語られる。

深夜の牛舎でクマの気配を感じ死を覚悟した話、野菜ドロボーや災害による大被害、何度も死にかけ生還した父親のダイ・ハードぶりなど、マジでそれ実話ですか?とツッコミたくなるようなエピソードが満載。

農業高校時代の話には『銀の匙』で見たようなシーンも描かれており、ファンの人は元ネタ探しをしても楽しいかも。もちろん純粋なエッセイ漫画としても屈指のおもしろさを誇る。

■『テルマエ・ロマエ』作者が描く伝記

ローマ時代の浴場技師がタイムスリップして現代日本の風呂文化にカルチャーショックを受けるという、斬新なアイデアで大ヒットした『テルマエ・ロマエ』。阿部寛さん主演の映画版もまだ記憶に新しい。

その作者・ヤマザキマリ氏は現在、iPhoneなどで知られるアップル創業者スティーブ・ジョブズを描いた伝記漫画に取り組んでいる。

「で、いつジョブズはタイムスリップするの?」と気になる人もいるだろうが、今回そういったファンタジー要素はなし。というのも、そもそも同名タイトルのベストセラー書籍『スティーブ・ジョブズ』が原作(ウォルター・アイザックソン著)になっているからだ。

発売中の第1巻には、養子に出されて育った幼年期から、エンジニアとしての第一歩、ゲーム企業「ATARI」への入社、インド放浪までのエピソードを収録。ダイナミックな構図が目立った『テルマエ・ロマエ』に比べれば、絵もコマ割りもいたってシンプル。

また、女性コミック誌「Kiss」に連載されているせいか、技術的な描写は控えめで、もっぱらジョブズの特異な人間性・考え方・周囲の人々との関わりについてページが割かれている。

『テルマエ』ファンとしては少々物足りない感じを受けるかもしれないが、随所に見られるセリフまわしや温かい筆致はヤマザキ氏ならでは。特に原著をまだ読んでいない人は、こっちの漫画版で偉大なエンジニア、ジョブズの生きざまを楽しむのもアリだろう。

■『のだめカンタービレ』作者が描くPCオタク

クラシック音楽をモチーフに個性的なキャラクターたちを描いた『のだめカンタービレ』。アニメ、ドラマ、実写映画と広くメディアミックスされた人気作だ。

その作者・二ノ宮知子(にのみやともこ)氏は現在、PCの自作、そのなかでも特殊分野「オーバークロック」を主題にした『87CLOCKERS』で新境地に挑んでいる。

オーバークロックとは、PCの頭脳(CPU)を規定値よりさらに激しくブン回し、リスクと引き換えに高い演算能力を引き出す行為のこと。いわば軽自動車をスポーツカー並みの速度で走らせるようなものだ。

さて、この『87CLOCKERS』はスポーツカーどころか、オーバークロック界のF1レースともいえる“世界記録”を狙う男たちが主人公。恵まれた家庭で育った音大生が、ある寒い日に裸足でアパート外へ放り出された美女に一目ぼれ。だがその美女には献身的に尽くしている相手がいて、そいつこそオーバークロック分野で世界記録をもつ男だった。

自分の記録更新しか見えていない身勝手な男から美女を救い出すため、主人公もオーバークロックの世界に挑む……というお話。

なんといっても特徴的なのは、主人公の恋敵となるオーバークロック馬鹿・ミケ(通称)。『のだめカンタービレ』に例えるなら、生活力の低さはのだめ級、キレやすさは千秋級という短所をみっちり詰め込んだような男だ。主人公の一ノ瀬も、美人ヒロインのハナもこの男に振り回されっぱなしとなる。

“オーバークロックでミケに勝ち、ハナさんを解放する!”と意気込む草食系男子・一ノ瀬の奮闘がストーリーの中心。最初はPCの自作なんてまったくできなかった音大生が、まわりの人から助けを得ながらスキルを上げていき、ミケからも一目置かれるように成長していく様子はなかなか楽しい。

また、オーバークロック対決も単に数字を競うだけではなく、3Dゲームの試合で勝敗を決定するなどダイナミックに描かれ、読者を飽きさせない工夫がされている。

分野がマニアックなだけに『のだめカンタービレ』ほど一般客からは受け入れられないかもしれないが、濃さを増したキャラクターを自在に操り、“魅せる対決シーン”を描けるようになった作者の表現力は『のだめ』時代よりさらに進化しているように思える。もちろん独特の絵柄やキレのあるギャグも健在なので、機会があればぜひ読んでみてほしい。

■『るろうに剣心』作者が描くゴシックホラー

明治初期を舞台に“人斬り抜刀斎”と呼ばれた剣客の活躍を描いた『るろうに剣心』。少年ジャンプでの連載はずいぶん前に終わっているが、いまだにOVAやゲーム、映画が制作されている息の長いコンテンツだ。2014年には劇場映画の第2作と第3作が公開予定だという。

その作者・和月伸宏(わつきのぶひろ)氏は現在、活躍の場をやや対象年齢高めなジャンプスクエアに移し、『エンバーミング』でゴシックホラー・アクションとも言える分野に挑戦している。

中心となるモチーフは死体をつなぎ合わせた“人造人間=フランケンシュタイン”。19世紀ヨーロッパを舞台に、家族や幼なじみを人造人間に惨殺された主人公・ヒューリーがみずからも「人造人間を狩る人造人間」となり、復讐の旅を続けるというストーリー。

超人たちが繰り広げるド派手なバトルは過去の『るろうに剣心』『武装錬金』と変わらないが、全体的にダークな作風。描写面にしても、少年誌という足かせが外れたことで、今まで守りきっていた一線(女性の下着姿、幼い子供の惨殺死体など)を遠慮なく踏み越えている。

物語の構成もより複雑に進化した。あくまでメインはヒューリーの復讐譚だが、「人造人間になってしまった恋人を元に戻そうと旅する技術者」「悲しい過去と出生の秘密をもつが、その記憶を失ってしまった最強の人造人間」など、普通の作品ならソロで主人公になれるようなサブキャラも豊富に登場。

ほぼ一貫して主人公視点で描かれた『るろうに剣心』などとは違い、さまざまな立場のキャラクター視点から語られる“群像劇”の印象が強くなった。

まだまだ物語の着地点は見えてこないが、4作目の連載にして和月作品の集大成になりそうな予感がある。デビュー作の『るろうに』から知っている人は、この『エンバーミング』もきっと楽しめるはずだ。

こちらのレポートもどうぞ!
『黒子のバスケ』脅迫問題にみる、“リアル”に影響を与えた漫画の出来事 [ http://ure.pia.co.jp/articles/-/11086 ]
【漫画】コミックス売り切れ続出!!話題作『暗殺教室』は『ONE PIECE』に迫れるか? [ http://ure.pia.co.jp/articles/-/10689 ]
原作改変、残虐描写カット…業界人が語るTVアニメ"自主規制"事情 [ http://ure.pia.co.jp/articles/-/12377 ]
「黒歴史」「スタンバる」…実は"ガンダム発祥"な用語で、世代の上司とうまくコミュニケーションを取る方法 [ http://ure.pia.co.jp/articles/-/15215 ]
『坂本ですが?』『となりの関くん』…学園マンガの新トレンドは「職人系男子」! [ http://ure.pia.co.jp/articles/-/16392 ]