【インタビュー】ハニカム編集長 鈴木哲也が語る、『honeyee.com』『.fatale』に込めた想いと、新たなファッションシーンへの展望 (第2回/全2回)

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文: 服部円  写真: 鈴木親  英語翻訳: Oilman  撮影協力: モントーク

 

東京のストリートファッションシーンのキーマンである WEBマガジン『honeyee.com』『.fatale』の編集長・鈴木哲也。先日、経営体制の変更を発表し、新たな展開を迎えるというこれからのハニカムについて話を聞いた。

 

 (第1回/全2回)【インタビュー】honeyee.com / .fatale 編集長 鈴木哲也氏 - ハニカムのこれまでと今後

 

- 特集で扱うブランドだけでなく、ブロガーには LOUIS VUITTON JAPAN (ルイ・ヴィトン ジャパン) の PR や Sister (シスター) のバイヤーなど、多様な人が参加していますよね。『.fatale』はファッションメディアとしてどのような立ち位置を目指しているのでしょうか?


© .fatale

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ある“シーン”をつくりたいとは考えています。そして、誤解されるのを承知で断言すれば“シーン”というのはマーケットのことでもあるわけです。当初、『honeyee.com』は裏原というシーンが先行してあって、そのシーンをフォローするメディアだった。その意味では、ウィメンズファッションの世界にメディアは数多くありますが、世界的な普遍性を持ったシーンを独自に作っているメディアはない。これを僕らがオーガナイズしたいのです。こうした考えはメンズの方法論であって、ウィメンズには通用しないなどといろいろな人に言われてきました。けれど、僕はそんなことはないと思っていますし、今、自分の手で実証しようと考えています。そのための『.fatale』です。ブロガーはある視点というか、僕たちと同じ方向を向いている人にお声がけして参加してもらっています。単なる友だちだからという理由ではありません。そういう意味で言えば、ある方向性やテイストを意識的に配しています。

THE CONTEMPORARY FIX (ザ・コンテンポラリー・フィックス) の吉井雄一さんとは、最初、彼が green (グリーン) を扱っていたことで興味を持ってコンタクトしました。今思えば、『honeyee.com』の雑誌版『honeyee.mag (ハニマグ)』で唯一特集したウィメンズが green でした。green はコンセプトをもって“ブランド”をつくるという姿勢が『honeyee.com』で扱ってきたブランドの方法論と一致しているように思えました。クリエイションに対する迫力はもちろん、ビジネスのあり方までシビアにやっていた姿に共感しました。「ほら見ろ、メンズもウィメンズも同じじゃないか」と僕に気づかせてくれたのが green だったんです。


Photography: Chikashi Suzuki


Photography: Chikashi Suzuki

- 『honeyee.com』『.fatale』では鈴木親さん、新津保建秀さんをはじめフォトグラファーを贅沢に起用している印象があります。ファッションメディアとして、ヴィジュアルに関してどのようなこだわりを持っているのでしょうか?

ファッションにおいては、そのブランドやデザイナーを紹介するにあたり、評論めいたテキストよりもヴィジュアルで見せたほうが直感的に伝わるものが大きいという信念があります。僕自身は自分をファッションヴィジュアルのプロだとも思っていますし。2013SS に『.fatale』で Saint Laurent (サンローラン) の特集をした際、奥山由之くんという若手のフォトグラファーで撮影をしました。彼は非常に印象的な写真を撮るのですが、実はストレートなヴィジュアルを作るタイプです。レイヤーを重ね、ひねりを効かせているようで、実はシンプルな構図が生む強さが特徴であり、彼の良さなんですね。そのあたりが現在の Saint Laurent にも通じるのではないかと思い、奥山くんの一見テクニカルで、でもストレートな表現を当ててみた。結果的に、Saint Laurent のスタッフにもそのニュアンスが伝わり好評でした。


© .fatale

ブランドの世界観を単に伝えるだけでなく、独自の視点をもってヴィジュアルをつくることは、ある種の批評であるとも考えています。一部の読者からすれば、あえてカッコ悪い表現を選んでいるように見えるヴィジュアルもあるかもしれません。けれど、それは扱うテーマやブランドとモデルやロケーションとのギャップやコントラストが、何かを浮かび上がらせる時もあるということです。カッコイイだけのヴィジュアルは簡単につくれます。それをあえてギャップを作り、ある種の違和感を作ることで“批評”となるようなヴィジュアル。それが僕の目指すコンテンツのひとつです。

- 種明かしをしてしまうようですが、『honeyee.com』『.fatale』はロケで撮影することも多いですよね。しかも、編集部の裏や近くのどうってことのない道で撮影する。もちろん、スタジオを用意してキメ込んで撮影することもありますが、その洋服を着ている日常のシーンを切り取るという点では、東京の道というのは非常にリアルだなと。

東京の街を撮ることで、そこにある雰囲気を撮りたい。服をフィルターにしてその場所や時代のムードを撮りたいんですよね。日本人のモデルを多く起用するのも同じ理由です。その面白さがクリティックでありジャーナリズムでもある。それは WEB であろうが紙であろうと関係ない。僕らが撮りたいのはリアルではなく、“リアリティ”というフィクションです。そして、このリアリティこそが現代における最も魅力的なファンタジーなんだと僕は確信しています。


© honeyee.com


© .fatale

ファッションの面白さは、やはり時代の無意識を先取って表現していることだと思います。それを敏感に感じとることで、未来予測的にこれから社会に何が起こるかが見えてくる。具体的な形をもつ前の雰囲気やムードを誰よりも早く捕まえるゲームなんです。だからこそ、流行があり、世の中の流れは少しずつ変化していく。その意味でも、ファッションはアートと同じなのです。先日『.fatale』で取材したアーティストの田中功起さんがテーマにしている「恊働」といったキーワードも、今はまだリアリティがないかもれませんが、10年後20年後には当たり前の価値観になっているかもしれない。村上隆さんのスーパーフラットという概念もそうでしたよね。現在のムードあるいは来るべき時代のニュアンスを服というフォーマットで具象化する。そして、さらに着る者がそこに自分の感覚を込めていく。それがファッションの面白さなのだと思います。

 

 (第1回/全2回)【インタビュー】honeyee.com / .fatale 編集長 鈴木哲也氏 - ハニカムのこれまでと今後

 


Photography: Chikashi Suzuki

鈴木哲也(すずき・てつや)
アップリンク、宝島社を経て2005年ハニカム設立に参加。以来、WEB マガジン『honeyee.com(ハニカム)』の編集長としてファッション、ライフスタイル情報を中心としたコンテンツ作りを行う。また、2011年には女性向けファッションWEBマガジン『.fatale(ファタール)』をスタートさせる。

『honeyee.com』
URL: http://honeyee.com

『.fatale』
URL: http://fatale.honeyee.com