読売巨人軍の監督として、史上最多の9年連続日本一「V9」を達成した打撃の神様・川上哲治氏。王貞治氏、長嶋茂雄氏の「ON」のみが突出したと言われる「川上野球」の実態は、世間のイメージとは異なったものであったと指摘しているのが、書籍『プロ野球、心をつかむ!監督術』です。東京六大学の気風を受け継いだ巨人は、猛練習の伝統と、自由な空気が両立したチームであったと言います。その空気が一変したのが、勝利のみを追求する川上哲治氏の監督就任でした。それまでの巨人は、エンドラン多用の「打たせて生かす」戦法。しかし、川上氏が追求したのは、確率を重んじ、犠牲バントで得点圏に走者を進める手堅い戦法。役割分担をしっかり決め、センターラインを中心としたディフェンス主体の「正統派戦術」です。投手に求めたのは、総合力。ただ投げることではなく、コントロールと打ち返された時のデイフェンスを重視しました。つまり、投手は"第5の投手"として機能することを求められたのです。今では、当たり前になった走者へのけん制や、走られないためのクイック投法をいち早く徹底した川上野球。それが出来ない投手は、ローテーションに入れてもらえませんでした。ディフェンスの野球にとって最大の課題は、投手・捕手・二遊間・中堅のセンターラインの強化。「V9」時代の巨人は、これらのポジションに捕手の森祇晶、二塁手の土井正三、遊撃手の黒江透修、中堅手の柴田勲など、滅私奉公が出来る守備の名手を揃えました。センターラインの強化後に、初めて打線に着手しました。長嶋茂雄、王貞治の2本柱を中心に、柴田・土井が1、2番を構成し、6番には黒江、8番に森を固定しました。抜けている5番を他球団から来たベテランで埋め、7番は若手育成のために打順とするなど、打線の"線"を重視する目的は明快でした。つまり、川上氏によって作られた「V9」の実態は、根幹にONを置いた「センターラインを中心にしたディフェンスの野球」であったのです。川上氏の野球に感銘を受けた王氏は、後に「川上野球は自分の範とする野球」と明言。読売ジャイアンツ、福岡ダイエーホークス、2006年WBC日本代表の監督として、川上氏のDNAを伝承しました。
『プロ野球、心をつかむ! 監督術 (朝日新書)』 著者:永谷 脩 出版社:朝日新聞出版 >>元の記事を見る

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