NBA2013−14シーズン開幕直前、「狂気のリバウンド王」が緊急来日した。現在、そしてあの日のNBAを、かつてシカゴ・ブルズで黄金時代を支えたデニス・ロッドマンが語る。紫煙の向こう、永遠の悪童がニヤリと笑った――。

ロッドマン:さあ、なんでも聞いてくれ。

―― まずは、今季のNBAで注目すべき点を教えてください。

ロッドマン:マイアミ・ヒートが最強であるのは、誰の目からも明らかだ。「対抗するチームはどこか?」がポイントだろうな。

―― ヒートのエースであり、NBAの顔でもあるレブロン・ジェームスについて、どう思いますか?

ロッドマン:彼はヒートで2度、優勝している。過去のレジェンドたちと肩を並べたと言っていいだろう。来シーズン以降、(以前所属していた)クリーブランド・キャブスに戻って優勝することができれば、経歴はいっそう輝く。まあ、あいつはキャブスには戻らないだろうがな(笑)。

―― ヒートが最強だとおっしゃいましたが、あなたがかつて所属し、スリーピート(3連覇)を成し遂げた1990年代後半のシカゴ・ブルズよりも強いですか?

ロッドマン:はあ? 話にならない! いいか、あのころの俺たちは、もっと強い、もっとタフなチームと毎晩のように戦ってきた。比べるまでもないだろ? ファウルの笛は、今のようには簡単に鳴らないタフな時代だ。今のルールなら、マイケル(・ジョーダン)は毎試合50点取るだろう。俺も1試合、最低25本はリバウンドを取るね。

―― では、もしNBAファイナルで、当時のブルズと現在のヒートがベスト・オブ・セブン(4戦先勝制)で対戦したら?

ロッドマン:5戦ないしは6戦で、俺たちが勝利する。「ゲーム7」は必要ない。

―― あなたは、10センチ以上身長の高いクリス・ボッシュとマッチアップすることになると思いますが?

ロッドマン:余裕だね。口笛を吹きながら、公園を散歩するくらい余裕だ。躍起になるだろうが、ボッシュが15得点できるようなゲームには間違いなくならない。保証する。あいつにとっては最悪の、俺にとっては素晴らしい1日になるだろう。

―― レブロンとマッチアップするのは、スコッティ・ピッペンでしょうか?

ロッドマン:そのマッチアップ、すっごい見てみたいな! ディフェンシブ1stチームに8度選ばれたピッペンのディフェンス力を、ぜひ堪能したい。レブロンが今、難なくこなしているプレイは一切できないだろう。それでヒートは、マイケルに誰をつけるんだ? (ドウェイン・)ウェイド? 冗談はよせ(笑)。

―― 1980年代や1990年代のNBAと、現在のNBAの一番の違いはどこだと思いますか?

ロッドマン:一番の違いは、フィジカルだ。あのころは、バスケットの本質がより問われていた時代だった。相手との身体のぶつかり合いの中で、俺の闘争心も強くなっていった。押す、ぶつかる......、その痛みと苦痛が、俺の仕事だと強く思えた。

―― あなたの奇抜な髪型や言動は、常に注目を浴びました。しかし、一度コートに立てば、リバウンド、ディフェンスというダーティーワークをいとわなかったのはなぜですか?

ロッドマン:ダーティーワーク? 仕事に奇麗も、汚いもない。あるのは、与えられた仕事をやるか、やらないかだけだ。俺はスラムで生まれ、ガキのころから働いてきた。修理工場でオイルにまみれ、エンジンを直した。農場で3年間、働いたこともある。どんなに寒くても朝5時半には起床し、牛にエサをやった。エンジンが動くようになること、牛がちゃんと育つこと――そこに達成感を感じたし、誇りだった。ヘッドコーチに、「リバウンドを取ってこい!」と言われたから、相手が大きかろうが、強かろうが、己の仕事をこなしただけだ。

―― なるほど。

ロッドマン:与えられた仕事を懸命にやる。そして報酬を手にする。しかも、棚ぼたでもらった仕事ではない。自力で掴んだ仕事だ。命がけでやらずしてどうする? レブロン、(デリック・)ローズ、(ケビン・)デュラント、今のNBAにも才能あふれる素晴らしい選手はいる。だが、多くの若い選手は勘違いしているんじゃないか? 才能はあっても、富や名声に心を奪われがちだ。大型契約を結んだ直後、活躍できなくなる選手が多いのが、残念でならない。ファンは、ちゃんと仕事をするアスリートが好きだろう? 選手は富や名声のためじゃなく、やるべき仕事をするべきだ。

―― つまり、やるべき仕事をする選手が集まったから、あのころのブルズは強かったということですか?

ロッドマン:まさに、そうだ。マイケルやピッペンだけじゃない。スティーブ(・カー)、ルーク(・ロングリー)、誰もがあのチームでプレイするのが好きだった。彼らや俺は、たいしたキャリアもなければ、大学時代、スター選手でもなかった。だが、自分を信じ、役割を見つけ、それを徹底した。そして生まれたのが、あのチームだ。もはや何物にも代えがたい。

―― では現在、あなたのDNAを受け継いでいる選手はいると思いますか? 例えば、クリス・アンダーセン(マイアミ・ヒート)はどうでしょう?

ロッドマン:誰だ、それ? ああ、「バードマン(アンダーセンの愛称)」か。あいつは、なかなかやるな。ここにきて、やっと自分とフィットするチームに巡り会えたということだろう。

―― あなたの後継者になり得る選手は?

ロッドマン:もうワンランク、ツーランク、レベルアップが必要だが、ケネス・フェリード(デンバー・ナゲッツ)には注目している。今後、大型契約を勝ち取った後にどんなプレイするか、そこまで見届けなくてはいけないけどな。

―― 昨年、一昨年と注目を集めた、アジア人のジェレミー・リン(ヒューストン・ロケッツ)については?

ロッドマン:良いタイミングで、良い場所にいたと言えるだろう。運を持っていた、と。ロケッツなどで何度もカットされたが、ケガ人の多いニューヨーク・ニックスに拾われた。そして、わずかな期間で結果を残した。運がある。しかし、こうも言える。トレーニングキャンプに呼ばれるには、技術が必要。そして何より、あいつは何度カットされてもあきらめなかった。アジア人の少年たちに希望をもたらしたのは間違いない。

―― 日本人選手でも、NBAに行くことは可能だと。

ロッドマン:才能を教える事はできないがな。15歳や18歳、中学や高校を卒業する時点でバスケを続けるのか、やめるのか、分岐点が現れる。多くの少年は、「俺はそこまでうまくない」と思うだろう。だが、本当にバスケットボールを愛しているのなら、自分がどこまで行けるか、試してみるのもいいじゃないか。大切なのはあきらめないことだ。いつどこで、何が起こるかは誰も分からないんだから。あきらめないことが肝心だ。

―― あなたがまさに、そうでしたね。

ロッドマン:ああ。俺がNBAに入ったのは、25歳と遅い。エージェントは、「NBAは無理だ。ユーロリーグでプレイしたらどうだ?」と、何度も言った。だが、俺はあきらめなかった。そして、ピストンズの一員になれた。いつ、どこで、何が起こるかなんて、誰にも分からない。

―― いつか、日本の少年たちにバスケを教えてくれませんか?

ロッドマン:タイミングさえ合えば、いつだって教えるさ。国によってバスケのスタイルは違う。それぞれの国のバスケ文化がある。それを肌で感じるのは、非常に面白いことだ。ひとつ言えるのは、日本人やアジア人は、本当にシュートがうまいということ。俺、以上にな。ハハハハッ! 俺にとってのリバウンドのように、己の武器に自信を持てと言いたい。

―― 素晴らしいアドバイスだと思います。

ロッドマン:じゃあ、俺からひとつ聞いてもいいか?

―― なんでしょうか?

ロッドマン:このあたりで、イカすネーちゃんが集まるクラブを知っているか? この前、行った六本木のクラブは、ひどい女ばっかりだったんだ(笑)!

デニス・ロッドマン
1961年5月13日生まれ、ニュージャージー州トレントン出身。1980年代から1990年代にかけて活躍し、リバウンド王に7度輝いたNBA屈指の名パワーフォワード。1986年ドラフト2巡目27位でデトロイト・ピストンズに入団。激しいディフェンスでスタメンを勝ち取り、1989年、1990年と2年連続でNBA優勝を果たす。1993年から2シーズン、サンアントニオ・スパーズでプレイし、1995年にシカゴ・ブルズに移籍。1996年〜1998年のブルズ3連覇に貢献した。203センチ。

取材協力:WOWOW

水野光博●構成・文 text by Mizuno Mitsuhiro