海外の投資家から見れば、日本株がいま最も魅力ある投資対象だ
9月も終わりに近づき、ひところよりはかなり涼しくなり、そこはかとなしに秋の気配が感じられるようになった。それとともに秋相場への期待感が高まってきている。夏枯れ相場でドスーンと売られることが多く、秋風の到来を待ち望む声が投資家や市場関係者の間から聞こえてくる。今年はそれに加えて、海外からの大きな買いが期待できる。今回はそのあたりに焦点を当ててみよう。

世界の投資マネーを集めた新興国株式市場がズタズタになっている

いま世界中の投資対象を見渡すと、投資魅力は日本株が一番といえるだろう。

この7〜8年ほど世界中の投資マネーを一手にかき集めてきた新興国の株式市場がズタズタに弱くなっている。中国をはじめ、ブラジルやロシアなど、ほとんどの新興国市場の株価は、見るも哀れな水準にまで低下している。

先進国の機関投資家を中心に大きな期待感を持って積極的にポートフォリオの組み入れを進めてきた新興国株だが、いまや大きな評価損を抱えるに至った。将来成長力が高いゆえに、どの運用者も中長期投資の観点でめいっぱいに組み込んできたから、どう対処するかで大変である。

また、まずいことに新興国株式市場の大半は先進国の機関投資家が牛耳っている。国内の投資家はほんの一部。中国などの新興国の景気減速を嫌気して、海外の年金などの機関投資家が一斉に売りを出してきたが、そうなると買い手はどこにもいない。その結果、ほとんどの投資家が新興国市場特有の流動性の問題に直面しているというわけだ。

なにしろ先進国の機関投資家は、みな同じようなタイミングで同じような投資をしようとする。昨年までは買いたい投資家であふれていたのに、それがいまや売り一色。国内投資家からの買いがほとんど入らないから、先進国の機関投資家は売るに売れないことになる。

そんなわけで、新興国株式市場で塩漬けを余儀なくされている機関投資家マネーの現金化が進むにつれ、今度は日本株投資に向かうことになる。

もっとも、そんなにのんびりしておれないといった買いは、もっと早い段階から入ってくるはずだ。海外の年金などにとって、日本株の投資ポジションはおしなべて低すぎる。一刻も早くポジションを高めようと、彼らは相当に焦っている。

企業の利益成長という投資価値の高まりを買うのが株式投資の魅力

昨年までだったら、金投資にある程度の投資ポジションを振り向けたいとする年金資金はそれなりに多かった。なにしろ、2011年8月に1オンス=1920ドルをつけた後、金相場はずっとスピード調整の値固めを続けている気配が濃厚だった。

ところが、今年に入って値崩れが加速し、6月には1200ドルを割り、9月5日現在、1390ドル前後となっている。それでも、この先どのような展開となるかはちょっと読めない。そう、初めから終わりまで金投資は相場もので、投資家の人気次第なのだ。

その点、株式投資は企業の利益成長という投資価値の高まりを買うことができる。株式市場が売りたい投資家ばかりだろうと、われわれ長期投資家は下げ相場でもお構いなしに買い向かえるわけだ。なにしろ、丁寧にリサーチして個別企業の株を選別投資するのだから、現在の投資家人気などまったく気にならない。

次に米国債だが、そろそろお役御免の段階に入りつつある。ユーロ危機やら、新興国の成長にブレーキがかかったことによる世界景気の腰折れ不安やらで、最も安全な投資対象とされる米国債にこれまで世界のマネーは群がってきた。それが、米国の長期債10年物が流通利回り1・3%台という未曽有の低水準、つまり高値まで買われる状況を引き起こした。現在の2・8%台も、米国の長期債の歴史的水準からすれば、信じられないほど低い状況だ。

そういったリスク回避一点張りの投資姿勢が、ここに来て薄らいでいく方向にある。なによりも、米国の景気立ち直りの様相が色濃くなってきた。中国経済の3倍規模である世界最大の米国経済が回復に向かうとなれば、もはやリスク回避よりも積極的に投資収益チャンスを求める段階である。

米国株よりも出遅れが著しい日本株投資への魅力が増していくことに

逆に、景気回復のピッチが上がるにつれて、債券投資のリスク意識が高まってくる可能性すら出てきた。景気が回復に向かえば、金利は上昇し始め、それは債券価格の下落と直結することになる。

やみくもに米国債へ逃げ込んできた投資姿勢が弱まるのと反比例して、株式投資の魅力が再認識される。とりわけ、米国株よりも出遅れが著しい日本株投資の魅力は増していくことになるだろう。

もちろん、米国株も相当におもしろい。だから、米国株は史上最高値を繰り返し更新する状況にある。その点、日本株は史上最高値どころか、2008年9月のリーマン・ショック以前の水準さえ下回っている。

海外の年金資金などからの買いが引き金となって、秋口から年末にかけての日本株は大いに楽しみである。

その先は、投資マネーの?債券から株式へ〞のシフトが本格化してくるだろう。いわゆる「グレート・ローテーション(大転換)」というやつだ。ともかく、いまは日本株をめいっぱい買っておこう。

澤上篤人(ATSUTO SAWAKAMI)
さわかみ投信取締役会長

1947年、愛知県名古屋市生まれ。73年、ジュネーブ大学付属国際問題研究所国際経済学修士課程履修。ピクテ・ジャパン(現・ピクテ投信)代表取締役を経て、96年にサラリーマン世帯を対象にさわかみ投資顧問(現・さわかみ投信)を設立。『5年後の日本をいま買う長期投資』(小社刊)、『今から長期投資を始めて2億円にしよう!』(主婦の友社)など著書多数。



この記事は「WEBネットマネー2013年11月号」に掲載されたものです。