2014年1月からスタートする『NISA (少額投資非課税制度)』。すでに、専用口座の開設数は200万を突破した模様で、最終的には600万に達するという予測も出ています。NISAの最大のメリットは、「少額投資非課税制度」と呼ばれるとおり、NISA用の専用口座で購入した株式や投資信託によって利益が生じた場合、その値上がり益(キャピタルゲイン)や、分配金または配当金(インカムゲイン)はすべて非課税になることです。2014年1月からは、キャピタルゲインやインカムゲインに対する税率は20%となるだけに、お得な制度であることは間違いありません。年間の投資上限枠は100万円といった様々な条件はありますが、このメリットの分かりやすさが、口座開設が好調であることの主因といえるでしょう。

 ただ、NISAについて、ちょっとした違和感を覚える方もいるかもしれません。日本の財政事情は日に日に切迫している状況であり、2014年4月からの消費税引き上げも正式に決まりました。そんななか、投資や資産運用で得られる利益を非課税とするNISAについて、?お金持ち優遇の政策?といった印象は拭えないところです。しかし、NISAがスタートする背景を理解すれば、そのイメージは大きく変わってくると思います。

 もともと、NISAは、株式や投資信託に対する「軽減税率」の撤廃による、株式市場へのダメージを和らげる?予防措置?的な制度でした。軽減税率というのは、03年に導入されたもので、キャピタルゲインやインカムゲインに対する税率を20%から10%に引き下げた制度です。低迷していた株式市場を活性化しようという、一種の景気対策でした。この軽減税率10%を、14年1月から元通りの20%に戻すことが正式に決まり、その影響で株式市場が下落しないように、NISAが策定されたという経緯があります。

 さらに、NISAには、もうひとつ重要な背景があります。それは、「家計の資産形成のサポート」です。これは、金融庁がはっきりとコメントしているのですが、なぜ、金融庁が家計の資産形成のサポートを目指しているのでしょうか? それは、日本国内に、金融資産がゼロ、つまり、貯金がまったくない世帯が増加していることに対する危機感があるからです。

 下のグラフをご覧下さい。1963年から2012年までの、金融資産ゼロ世帯の推移です。

グラフ

 このグラフを見ると、預貯金などの金融資産をまったく保有していない世帯は、72年に3.2%だったのが、その後、ほぼ右肩上がりに上昇し、12年には26.0%に達しています。なんと、4世帯に1世帯以上が金融資産を保有していないという結果が出ているのです。こうした状況を踏まえて、金融資産ゼロ世帯を始めとした家計の資産形成をサポートする必要性が生じてきました。

 そもそも、NISAは、1999年からスタートした、イギリスの『ISA』(個人貯蓄口座制度)を参考にして作られた制度です。イギリスのISAには、イギリス国民の年金制度に対する不安に対処するために、老後資金の確保に向けて、個人の自助努力を促すという目的がありました。イギリスのデータをみてみると、09年度までに口座を開設した人は、2389万人で、総人口の38.4%にのぼっています。イギリス国民の3人に1人がISA口座を保有している計算になります。

 さらに、興味深いデータがあります。イギリスでISAを利用している人の55.4%、半分以上の人は、所得水準が2万ポンド以下。1ポンド=150円とすると、2万ポンドは日本円にして300万円となります。つまり、ISAを活用しているのは、中低所得層の人たちの方が多いのです。NISAは、これまで投資や資産運用をしてきた人たちだけを対象としたものではありません。投資や運用をしたことがない人や、20代、30代の若年層にも積極的に活用して欲しいという狙いがあるのです。

 日本は、イギリスなどの欧米主要国をはるかに上回るペースで、高齢化が進んでいます。日本こそ、老後資金の確保に向けて、個人の自助努力が必要とされている国はないと言えるでしょう。次回では、高齢化社会の実態について、もっと詳しく解説したいと思います。

(文/目黒陽子)

目黒陽子

めぐろ・ようこ。1975年生まれ。成城大学経済学部卒業後、大和証券に入社。2001年に退社後は、フリーキャスターに。『お元気ですか 日本列島』(NHK総合)、『ウェークアップぷらす』(読売テレビ)など、情報番組を中心にキャスター、レポーターとして活躍。現在、『news every.』(NIB長崎国際テレビ)に出演中。また、ファイナンシャルプランナーとして、メディアやセミナーを通じ、資産運用を個人に身近なものとするための情報発信を続けている。マネー関係の著書として『金トレ!』(マガジンハウス刊)がある。