『Her』の上映でニューヨーク映画祭に登場した(写真左より)ホアキン・フェニックス、スパイク・ジョーンズ監督、エイミー・アダムス、ルーニー・マーラ、オリヴィア・ワイルド/[c]JUNKO

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第38回トロント国際映画祭に出展されたスパイク・ジョーンズ監督最新作『Her』(全米12月18日公開)が、第51回ニューヨーク映画祭のクロージング作品として上映され、スパイク・ジョーンズ監督、主演のホアキン・フェニックス、エイミー・アダムス、ルーニー・マーラ、オリヴィア・ワイルドという豪華キャストが記者会見に応じた。

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ジョーンズ監督にとって、世界的ベストセラー絵本を映画化した『かいじゅうたちのいるところ』(09)以来、実に4年ぶりに脚本・製作を手掛けた長編である本作の舞台は、近未来のロサンゼルス。愛し合っていたはずの妻キャサリン(ルーニー)との離婚で心に傷を負った孤独な作家のセオドア(ホアキン)が、新しく開発されたOSのサマンサという人工知能(スカーレット・ヨハンソンが声を担当)と恋愛関係に落ちるという、まったく新しい未来型のラブストーリーだ。ソーシャルメディアの発達で、人間同士のコミュニケーションが希薄になっていると言われる現代にマッチした題材だが、構想は10年くらい前からジョーンズ監督の頭の中にあったという。

「オンラインで、A.L.I.C.E.ボットか何かの人工知能のソフトウェアを見つけたのがきっかけだった。僕が『こんにちは!』というと『こんにちは!』と返してくるし、僕が『元気?』と聞くと、『元気だけど、あなたは?』って聞き返されて、『あんまり。ちょっと疲れてるよ』って答えたら、『それはよくないね』って、会話が成り立ってることにかなり衝撃を受けたんだ。覚えているものを繰り返しているだけで知的ではないけれど、賢いプログラムだと思ったよ。その後、長い間そのことは忘れてたんだけど、ある時、人間と、人間の意識を持ったOSとの関係を、恋愛関係として描いたラブストーリー映画にしたら面白いんじゃないかって思うようになったんだ」とメガホンを取ることになったきっかけを語ってくれた。

また、本作を製作する過程で「ロサンゼルスを舞台にロボットの恋愛を描いたアンドリュー・ガーフィールド主演の短編映画『アイム・ヒア』(10)でメガホンを取ったことも『Her』の脚本に影響を与えた」とジョーンズ監督が答えると、「短編って言っても、製作期間は5か月もあって長いんだよね」とホアキンが横やりを入れ、ジョーンズ監督が赤らめる場面もあった。

脚本について問われたジョーンズ監督がホアキンに話を振ると、ホアキンは「好きだね〜」とふざけモード。さらに、ホアキン扮するセオドアが住むアパートの住人で、コンピュータープログラマーでもある親友のエイミー役を演じたエイミー・アダムスが、「脚本を読む前から監督に会って話していて、ある程度自分の中にビジョンが出来上がっていた。本当に素晴らしいと思ったけれど、ちょうど子供が生まれたばかりで当時は自分には無理だって言ったの。でも、あまりに美しいビジョンがあったし、私だけじゃなくて、誰もが抱えている問題を見出せる作品だと思ったから断れなかったのよ」と答えると、「断ってよかったのに」と、ホアキンが茶々を入れる場面も。しかしエイミーが、「スパイクはとてもソフトだけど、結構強制的で断れなかったわ」と本音を打ち明け、会場の笑いを誘った。

ルーニーは、「私はこの役をやらせて欲しいって、自分からお願いしたの」とうつむきながら恥ずかしそうに答え、セオドアのブラインドデートの相手を演じたオリヴィアは、「私は脇役だけど、セオドアがサマンサに傾倒するきっかけになった存在という意味でも大事な役割を担っている役だったから、とても興味深いと思ったわ。それ以前に、スパイクと1時間半くらいこの作品について話し合ったことだけでも大満足だった」と明かした。

近未来のロサンゼルスが舞台であるだけに、セオドアのシャツや家のクッションなど、スクリーンの中はオレンジや赤などのビビットな色の世界が繰り広げられる。「ロサンゼルスやニューヨーク、特にロサンゼルスは食べ物もおいしいし、海や山に囲まれていて、どんどん便利で住みやすくなっている一方で、多くの人たちが孤独を抱えているという現状がある。ある時、この建物(リンカーン・センター)やハイラインを手掛けた建築家で語り手でもある女性と話すきっかけがあって、彼女が描く将来のイメージについて聞いてみたんだけど、『ユートピアのこと?それともディストピアのこと?』って聞かれて、自分はユートピアを描こうってビジョンが明確になったんだ。なんでも手に入る反面で孤独は付きまとうけど、それでも理想の世界として描こうって思った。イメージとしては『ジャンバ・ジュース』(野菜やフルーツを使ったカラフルなスムージーの店)だね」と語り、またもや会場は笑いの渦に包まれた。【取材・文/NY在住JUNKO】