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景気の変動にかかわらず価格が変化しない商品を、「物価の優等生」と呼ぶ。よく引き合いに出されるのが玉子だ。じつはJR東日本・JR東海・JR西日本の運賃も、「価格の優等生」といえる。発足以来、消費税の上乗せ以外で値上げしてこなかった。

しかし、鉄道開業以来の歴史を振り返ると、東京〜横浜間の運賃が最低でも約5,000円、最高で約1万5,000円という時期があった。

現在、JR東日本の東京〜横浜間の運賃は450円だ。この区間で運賃の算定基準となる営業キロは28.8km。運賃表に照らし合わせると26〜30kmの区間となり、本来の運賃は480円。しかし実際は450円だ。この区間は「電車特定区間」といって、少し運賃が安くなっている。国鉄時代からの制度で、「特に乗客が多い区間」として利益を薄くしている。並走する私鉄も多いことから、価格で競争するという意味合いもあるようだ。

ちなみに、東京〜横浜間の鉄道が開業した頃の東京駅は現在の新橋駅で、しかも実際の位置は現在の新橋駅ではなく、いま汐留にある新橋停車場跡のあたりだったという。また、開業当時の横浜駅は、現在の根岸線桜木町駅にあった。現在、新橋〜桜木町間の運賃は東京〜横浜間と同じ450円である。

それにしても、いま450円の区間で約5,000円とは、高額すぎる運賃だ。「ぼったくり」である。もしいま、東京〜横浜間で高いきっぷを買ってみたらどうなるか? 特急「踊り子」のグリーン車に乗った場合、乗車券450円の他に、特急料金(通常期)1,010円、グリーン券が1,000円。ただし、特急のグリーン料金を支払うと、特急券が510円引きになるから、合計は1,950円だ。それでも5,000円には届かない。

寝台特急「サンライズ瀬戸」「サンライズ出雲」のA個室寝台「シングルデラックス」で計算すると、個室寝台料金は1万3,350円。特急券は510円引きで500円。乗車券は450円で、合計は1万4,310円となる。もちろんこんな乗り方は現実的ではないし、寝過ごしてもっと遠くへ行ってしまいそうだ。しかも、この料金をもってしても、約1万5,000円という東京〜横浜間の最高運賃には届かない。

○鉄道開業時のきっぷはかなり高額だった

東京〜横浜間の運賃が最低5,000円、最高1万5,000円とは、いつの時代の話なのか? じつはこれ、鉄道が開業した頃の運賃を、当時の貨幣価値に照らし合わせて、現在の価格に換算した金額である。

1872(明治5)年、東京〜横浜間で鉄道が開業した頃の運賃は3等級制で、上等が1円12銭5厘、中等が75銭、下等が37銭5厘だったという。なんだ、安いじゃないか……、と思ってしまうけれど、当時と現在では貨幣価値が違う。現在の貨幣価値に照らし合わせると、それぞれの金額は、上等が1万5,000円、中等が1万円、下等が5,000円に相当するというわけだ。

当時の物価としてよく挙げられる数字が、「米10kgで36銭」だ。これは東京〜横浜間の下等運賃の37銭5厘に近い。現在の米10kgは、ブランドや政府米、自主流通米などで変わってくるけれど、だいたい4,000〜6,000円くらい。間を取って5,000円とすれば、開業当時の東京〜横浜間の下等運賃は、「だいたい5,000円くらい」となる。中等は下等の2倍で約1万円、上等は下等の3倍で約1万5,000円というわけだ。

ちなみに、1871(明治4)年頃のかけそばの値段は5厘だったという。この値段で換算すると、下等運賃はかけそば75杯分となる。いまの時代、かけそばの値段は駅の立ち食いそば店で250〜300円程度だ。仮に250円として、かけそば75杯分を計算すると1万8,750円。米を基準にするより、ずっと高額になってしまう。

まとめると、鉄道が開業した頃の東京〜横浜間の下等運賃は、米10kgとほぼ同じ値段、あるいは当時のかけそば75杯分。どちらを基準に計算しても、かなり高額だった。

(杉山淳一)