痴漢冤罪は世のサラリーマンにとっては身近なリスクだ。もし、あなたが電車に乗っている際、「この人、痴漢です!」と突然手を掴まれたら──どうすべきか。

 複数の弁護士に一致したファーストチョイスは、「逃げる」ことだった。

「手を握られたら振り払ってでも逃げましょう。裁判で無罪を勝ち取ることはかなり難しい。たとえ裁判で無罪を獲得できても一度傷ついた社会的信用を回復させる困難。それを思えば逃げた方がいい」(ある弁護士)

 名刺を出して身元を明かした上で立ち去れ、と指南するマニュアルもあるが、弁護士たちは「一目散に立ち去れ」と口を揃える。では周りを囲まれたりして、逃げ切れなかったら……とにかく腹を括って自分の正当性を訴える。感情を露わにして怒るのだ。

「何を言ってるんだお前! 俺はやってない」

 女性に対して、この男と関わると面倒なことになりそうだな、との印象をできるだけ与えたい。相手が金銭による和解を目的とする痴漢冤罪の場合、それで沙汰止みになることも多い。

 それでも収まらないなら、法廷で白黒つけることになろう。だが痴漢で逮捕され、「否認」していると最大で23日間拘束される。その後、裁判で勝ったとしても、この代償は大きすぎる。

「社会的立場ってものがありますからね。現実には罪を認めて示談金を支払うという方法が最も早く騒動を収められるから、多くの男性はこの道を選びます。会社に知られることもないし、金額は通常10万〜30万円くらいが相場です」(同前)

 ただし、「痴漢した」という不名誉を認めなければならない。 そこで苦肉の策としてある弁護士が教えてくれたのが「ご迷惑をおかけしました作戦」である。

「罪を認めないと示談は基本的にできない。でも、やり方次第では、次のような言い分が認められるケースがあるんです。

<今回私の犯した紛らわしい行為のせいで、(女性が)警察や弁護士の世話になりご迷惑をおかけしたので、それについてのお見舞い金を○○万円払います>。

 痴漢という行為に対して慰謝料を払うのではなく、巻き起こった騒動について<ご迷惑をおかけしました>という態度です。社会的な面子を傷つけない現実的な落とし所として頭に入れておきたい」

 それにしても、最後は相手の気持ち次第。男性側の不利は変わらない。

「電車に乗るときは両手を高い位置に置く、酔っぱらったら身体が触れそうな場所にはいかない……事前の予防が大切です」(同前)

※週刊ポスト2013年11月1日号