高速鉄道内で思い思いに過ごすサラリーマンたち【撮影/荒木尊史】

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1974年、鹿児島県生まれ。邱永漢氏に師事し、2005年より、チャイニーズドリームを夢見て北京で製パン業を営む荒木氏。ますます悪化する北京の大気汚染。冬の間だけ南の国に居を移す富裕層や移住を考える日本人居住者たちの話を耳にするようになった今、中国版新幹線のなかで荒木さんが考えたこととは……。

 すっかり間が空いてしまったが、北京から近況のレポートをお送りしたい。

 このレポートは、北京から上海に向かう高速鉄道(中国版新幹線)の中で書いている。北京−上海の移動手段として、この高速鉄道が私のオススメだ。

中国版新幹線は景色もビールも楽しめる

 スケジュールが詰まっている時は飛行機を利用するが、時間に余裕があれば高速鉄道を迷わず選択する。空港での搭乗手続きなどを考えたら到着時間の違いは1〜2時間程度だろう(しかもありがたいことに遅延はない)。

 理由の第一は安い。とくにビジネスでの出張の場合、直前まで日程が確定できないので、飛行機だと正規運賃に近い片道1200元(約1万8000円)程度かかる。その点、高速鉄道は553元(約8300円)だ。ちなみに一等席が900元(約1万3500円)ほどで用意されているが、ほんの気持ち程度座席にゆとりがあるだけで、日本のグリーン車をイメージしているとガッカリすることになるので注意が必要だ。

 理由の第二はネットができる。無料の無線LANもあるがこれは接続者が多すぎて使いものにならない。ただトンネルや山間部を除けば3G回線がだいたい拾えるので、メールの確認やWeb検索程度であればストレスなくこなせる。

 第三の理由は車窓に広がる景色を楽しめること。私にとってはこれがいちばん大きい。とくに済南の近くにある泰山と、蘇州の数々の湖を越えていく景色が好きだ。

 北京から上海へは、2000キロ近い距離を北から南にほぼ真っ直ぐに下る。色彩の少ない煉瓦造りの平屋が続く華北地域。2階建ての白壁造りの建物が現わ れる華南地域。人から教えてもらうまではまったく気が付かなかった無数の先人たちの墓。ドラゴンクエストのように、街から平原を越えてまた別の街への旅 路。なかなかの風情が感じられるはずだ。

 風景を観察していると誰でも気付くはずだが、北の農民は貧しく、南の農民は豊かだ。北はレンガ造りの平屋で、畑も痩せており、ひどいところは石や岩だらけだ。ところが南へ行けばいくほど田畑は青々と実り、水にも恵まれ、家屋も大きく立派になる。

 大半の農民は、たまたま生まれた場所で先祖から受け継いだ田畑を耕しているだろう。ちょっと南に移動しさえすればもっと楽な生活ができるというのに、さまざまな理由で生まれた土地にしばりつけられているのだ。
 
 最後に、北京−上海間のフライトではビールが飲めないが、高速鉄道にはレストラン車両がありビールも買える。帰路に一杯やりながら車窓の風景に思いを馳せるのが、私の至福のひと時である。

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