以前に比べ、起業や独立へのハードルが低くなったと言われる現在。元ライブドア社長の堀江貴文氏は、とあるイベントでその結果を目の当たりにしたという。

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 いわゆるスタートアップというベンチャー企業の初期段階を支援するインキュベータという業態がある。

 数百万〜数千万円の範囲で出資をして、シェアオフィスも提供し、手取り足取り経営を会計面やビジネス立案、人脈まで含めて総合支援するのである。

 そのうちの一つで「サムライインキュベート」という会社がある。そこが主催するビジネスプランコンテストに審査員として出席してきた。

 応募した数十社から数社に絞りこまれた会社の代表がプレゼンテーションをするのだ。最初の数十分は代表と私でトークセッションをしてから、後半は数分の持ち時間で的確に自分たちのビジネスプランをプレゼンテーションする。その後、私との質疑応答があって、出資をしたり、協業をしたりなどを判断する。

 もちろん、出席者同士のコミュニケーションも取られるので、一種の異業種交流会的な側面もある。プレゼンテーションの後の懇親会では、参加者数十名から名刺交換攻撃(笑)を受け、2時間ほど立ちっぱなしで彼らのビジネスモデルについての助言をして、それはそれで有意義だったのだが、けっこう大変だった。

 驚いたのは、彼らのレベルが、私が現役で投資ファンドを運営していた数年ほど前に比べるとかなり高くなっているということである。規模の大小はあれ、全てがかなりの確率で収益化に成功して、うまくいきそうな案件だったのだ。以前だったら全社投資をしていたかもしれない。まさによりどりみどり状態なのだ。

 そういう状況になった一番の理由は、やはり起業のハードルが物凄く下がったことであろう。パソコンは数万円で手に入るし、シェアオフィスは机一つあたり月額数万円で借りることができる。

 ソーシャルメディアを使えば、良いサービスならすぐに拡散され、短期間でビジネスを立ち上げることができるし、ほとんどお金もかからない。だから気軽に週末起業的に立ち上げて、うまくいったら法人化とトントン拍子に進むことができるのだ。

 そんな彼らに投資をするシリアルアントレプレナー(連続起業家)と呼ばれる投資家も多数存在する。彼らは自分自身に起業経験があるので、アドバイスも的確だし、リスクを取ることに躊躇(ちゅうちょ)しない。創業間もないベンチャー企業に数億円を投じることすら厭わないのだ。

 そういう環境が整ったことで、今までは大企業に埋もれていたかもしれない優秀な人材がチャレンジすることに躊躇しなくなっているのだ。

 私も彼らとこれからコラボレーションをしていくつもりだ。なにより私が起業したころは夢にも思わなかった状況が生まれていることは素直に嬉しいし、多くの人たちがもっともっとチャレンジをして社会をより良くできたらいいと心から思う。

 夢をもって皆が生きられる社会ができるように、これからもこのようなイベントには時間の許す限り参加していこうと思う(ただし、鬼の名刺交換攻撃は勘弁して欲しいところだが……)。

週刊朝日  2013年11月1日号