アメリカPGAツアー(以下、米ツアー)の2013−2014シーズン第2戦、シュライナーズホスピタルオープン(10月17日〜20日/ネバタ州)が開催され、注目の松山英樹が疲労性の腹痛で棄権した一方で、米ツアー2年目の石川遼が通算18アンダーの2位タイでフィニッシュした。優勝は、通算24アンダーのウェブ・シンプソンだった。

 最終日、ホールアウトした石川は、取材陣への対応後、真っ直ぐ練習グリーンに向かった。

 4日間の戦いを終えたばかりで、練習する選手などまずいない。まして石川は、米ツアーにおける自己最高タイの成績を残したのだ。それなりの充実感と、疲労感があって当然なのに、誰もいないグリーン上で短い距離のパッティングを繰り返していた。

「今日はパッティングがいい感触だったので、それを忘れたくなかったんです。2位という結果は、自分に一定の評価をしてあげたいけど、首位と6打差ですよ。6打差あったら普段は10位であってもおかしくない。それは単純に悔しいしことだし、純粋に情けない話です」

 そうは言っても、上位争いに加わった開幕戦フライズドットコム・オープンの結果(21位タイ)と合わせ、シード権(125位以内)取得に必要なフェデックスカップポイント(米ツアーのシリーズトーナメントの各試合で与えられるポイント)は、すでに先シーズンとほぼ同等のポイントを獲得した(293ポイント。昨季は298ポイントで141位)。これから何が起こるかわからないとはいえ、シード権を目指す戦いから解放され、自ずと海外初優勝が目標となっていく。

「今後、勝つためには、上位争いを繰り返していくことが大事になると思いますね。(2011年に4位タイだった)ブリヂストンインビテーショナルや、2012年のプエルトリコ・オープン(単独2位)のように、これまでトップテンに入ったときはパッティングがすごく良かった。今週はそんなことなくて、最終日こそ3m〜6mぐらいのパットが入りましたけど、3日間はまったく入っていなかったし、4日間で10m以上のロングパットが一度も入らなかった。それでこの位置というのは、今までとはちょっと違うな、と思います」

 いわばこれまで経験した優勝争いは、ラッキーを伴ったものだった。それゆえ、パターに不満を残しながらも2位という今大会の結果は、石川にとって近い将来の初優勝へ期待が膨らむものだったに違いない。

 米ツアー本格参戦1年目の先シーズン(2013年1月〜9月)は、腰痛による練習不足がたたり、前半はショットが安定せず、中盤以降はミドルレンジのパットに苦しんだ。石川にとっての転機は、7月のカナディアンオープンだった。久しぶりに会った松山英樹と練習ラウンドをともにし、以降、全米プロ選手権(29位タイ)、ウィンダム選手権(26位タイ)では難なく予選を突破。2013?2014シーズンの出場権を争う下位ツアーとの入れ替え戦、ウェブドットコムツアー・ファイナルズ(4試合)では3試合でトップテン入りを果たした。

「先週、今週もそうでしたけど、英樹と(7月の)カナダで久しぶりにハーフを一緒に回って、そのあと全米プロ、ウィンダムでも一緒に回って、英樹と回れば回るほど、『オレもこいつみたいに強くならなきゃいけない』と思わされるんです」

 石川は松山から、何か特別なアドバイスをもらったわけではない。互いに健闘を誓い合うような熱い言葉を交わしたわけでもない。同い年のライバルが、同じ立場で同じ舞台を戦うその事実だけで、自然と刺激を受け、刺激を与えるような関係になっている。

「お互いにアドバイスするほど、余裕はないですよ。ちらっとパッティングに関して意見交換をするぐらい。一緒に回るだけですごく楽しい」

 シュライナーズホスピタルオープンで、石川の順位を押し上げたのは、ショットの安定感だった。標高約600mの高地、ラスベガスが舞台。普段よりボールがよく飛び、距離を合わせるのが難しい環境の中で、最終日はアイアンの距離間がピタリと合って、短い距離のバーディーチャンスが続いた。

 2008年のプロデビュー以来、石川はスイング改造を繰り返してきた。今年の1月にも、腰に負担をかけないスイングへの修正を行なったが、以来この10カ月は、ほとんどスイングを修正することはなかったという。

「クラブの軌道、ヘッドの軌道が安定してきたと思います。1月、2月は(腰痛の影響で)本当につらかったんですけど、その経験があったからこそ、この1年間は自分の体と向き合うことを覚えて、トレーニングの種類も増やしていた。自己管理ができているという面では、この1年で大きく変わりました」

 体調の不安が軽減され、ショットへの自信を深めているからこそ、今後の課題は明確となった。

「ゴルフでいちばん重要なのは、僕はパッティングだと思う。ゴルフというスポーツは、パッティングの占める割合が80%ぐらいで、あと15%ぐらいがメンタルで、残り5%がショットだと思っている。自分の中でパッティングは、ショットみたいにどんな状況でもリズムが崩れないという域には達していない。日本で平均パットが1位になったことはありましたけど、下手なものは下手なので......。これからは、パッティングが重点的にやっていくべきことだと思っています」

 だからこそ、石川は2位という結果に満足せず、日没が迫ったラスベガスのグリーンで居残り練習を行なったのだ。石川の視線の先にあるのは、米ツアー初優勝しかない。

柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji