全国津々浦々、5万店を超えるコンビニエンスストアの攻勢により、長きにわたり地域に根差してきた中小の食品スーパーが苦境に喘いでいる。

 日本チェーンストア協会が10月21日に発表した数字によれば、今年1〜9月の既存店ベースの売上高は前年同期比1.0%減で、なんと17年連続で前年実績を下回った。「地域を超えたスーパー同士の合従連衡が不可欠」(流通アナリスト)との見方が広がる中、ある異業種の存在がクローズアップされている。大手牛丼チェーンの「すき家」である。

 すき家を展開するゼンショーホールディングス(HD)は、一大外食企業として業態の多角化に余念がない。「なか卯」(牛丼&うどん)、「ココス」(ファミレス)、「ビッグボーイ」(ハンバーグ)、「華屋与兵衛」(和食)、「はま寿司」(回転寿司)、「モリバコーヒー」(コーヒー)……。これらすべてがゼンショーグループと聞けば、改めて驚く人も多いだろう。

「いまや牛丼チェーンの売り上げ依存度は50%を切っている」(前出のアナリスト)とも言われるゼンショーHDだが、目指すステージはなにも外食産業だけにとどまらない。

「外食日本一は通過点に過ぎない。フード業世界一を目指す」と公言する小川賢太郎社長(グループCEO)の強いリーダーシップの下、2009年に青果店の「ユナイテッドベジーズ」、そして2012年11月には中堅スーパーの「マルヤ」を傘下に収めてきた。今後、千葉県にある「マルエイ」や栃木県の「ヤマグチスーパー(山口本店)」といった食品スーパーの買収も予定している。

 ゼンショーHDが赤字企業も多い地場スーパーに狙いを定めているのはなぜか。外食ジャーナリストの中村芳平氏がいう。

「同社は北海道大樹町に自前の牧場を持ち、そこで育てた牛の肉をステーキや焼き肉用としてマルヤで売り出しています。つまり原材料の調達から製造・加工、物流、店舗での提供まで一貫して行うことで、牛1頭ムダになるところがひとつもない。そこで総合力をもっとも発揮できるのが食品スーパーだったのでしょう。これから牧場で絞った牛乳を売り出したって不思議はありません」

 製造小売り(SPA)を推し進めている点で、「外食業界のユニクロ」と中村氏は評価している。農業や水産業などの第一次産業が食品加工や流通販売まで行うことを6次産業と呼ぶが、確かにゼンショーのように外食企業が川下から川上まで大規模に事業の幅を広げるのは珍しい。

 では、今後もゼンショー主導による、業界の垣根を超えた買収劇が続いていくのか。中村氏はなんとも意味深なコメントを残す。

「小川社長は外食産業では不可能だと言われてきた売上高1兆円を当面の目標に据えています。今の規模からいえば倍以上ですが、まったくの夢物語ではないでしょう。地方のスーパーはいくらでも安く買えますし、外食の中にも2000億円、3000億円規模ありながら売られる可能性の高い材料は転がっていますからね。

 大型の買収案件をモノにすれば1兆円超えは可能だと思います。外食やスーパーを束ねてイオンのようにコングロマリット化を果たす日が来るかもしれません」

 ゼンショーの社名の由来は、「全部勝つ」の全勝と、「善なる商売」の善商、「禅の心で行う商売」の禅商という意味が込められている。こうしてみると、昨今の価格競争による牛丼チェーンの不振も、同社にとってみれば“小利大損”に過ぎないのかもしれない。