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先週からスタートしました当連載、第2回目は「堺トラム」。大阪唯一の路面電車・阪堺電気軌道にこの夏デビューした超低床式の路面電車を紹介したいと思います。……まあ詳しいスペックその他についてはニュースに任せるとして、とりあえずここは実物を見てみたい、乗ってみたいということで、実際に見に行ってまいりました。

○庶民的な雰囲気の阪堺線を走る"電車っぽくない"新型車両

筆者が乗車したその日は、ちょうど台風が向かってきているところで、浜寺駅前駅周辺も、まだ雨は降っていないものの、非常にタチの悪そうな雲が上空を埋めている状態でした。そんな不安定な空模様の下、従来型の阪堺電車の写真を撮りながら、お目当ての「堺トラム」が到着するのを待っていました。

阪堺線の終着駅である浜寺駅前駅は、すぐ近くの南海線浜寺公園駅に負けず劣らず古そうな建物です。小屋みたいな古い駅舎の前には、簡素な屋根とベンチがあるだけ。それはもう、「健康で文化的な最低限度の終着駅」といった風情です。

筆者は駅のベンチに座り、電車を何本か見送ったのですが、どの電車も乗客は2〜3人程度。平日の昼間で、しかも悪天候というのもあるのでしょうけど、なかなか寂しげな風景でした。一方、駅を発着する従来型の電車の大半が、車体のほぼ全面に、パチンコ屋さんや不動産屋さんの名前がでかでかと描かれた派手なカラーを身にまとっています。そのビビッドさが、余計に駅周辺の寂寥感を際立たせているような気もしました。

お昼2時ちょっと前、お目当ての「堺トラム」がようやく到着しました。この車両はまだ、広告の"魔の手"にはかかっておらず、落ち着いた緑色・茶色系のボディはまるで、高級な高速バスのようです。……そう、電車っぽくないのです。その原因は何なのか? としばらく考えてみたのですが、最終的に「表面がつるっとしているから」という、なんとも文系な(?)結論にたどり着いたのでありました。

それまで浜寺駅前駅を発着した数本の電車はほぼガラガラだったのに、「堺トラム」が入ってきた途端、どこからともなくわらわらと乗客が集まってきて、座席はほぼ埋まってしまいました。皆さん、よくご存知なんですね。

実を言うと、この車両の「超低床」という点に関して、「従来の車両では停留所との段差が40cmあったのに対し、『堺トラム』では5cm……」と説明されてあったのを事前にウェブで見ていて、「えー! 5cmって、底擦るやん」とか思っていたのですが(笑)。

実際に乗ってみると、それは「停留所のホームから5cm」なのであって、地面からではない、ということが判明しました。そらそうですよね。地面から5cmだと、床下機材はおろか、車軸も入りませんよね。

いままでの路面電車は、乗り込んだ位置から2段ほどステップがあったのに、「堺トラム」ではまったくなくなっていました。床が低く、扉から入ってそのまんまの高さで車内を移動できる、というだけで十分魅力的な乗り物になります。

筆者は「堺トラム」に対して、その外観から高級バスのような乗り心地を想像していたのですが、実際に走り出してみると、やはりそこは阪堺線。けっこう横揺れします。おそらく軌道の問題が大きいのでしょう。車輪からの振動も拾うようで、ガタゴト言います。それにインバーターの音もしました。これは阪堺線では新鮮です。

ちなみにこの車両、1両かと思いきや、3連接の車体になっています。以前、筆者はスイスでトロリーバスに乗ったことがあり、それと似たような構造に思えました。昔、つくば博で走っていた連結バスも、「堺トラム」と似たような乗り心地だったかもしれません。

「堺トラム」が走り出してすぐ、激しい雨が降ってきました。降雨レーダーのアプリで見ると、いまいるエリアの降水量は50〜100mmと、いきなり怖い数字が出てきました。まさしく猛烈な雨です。窓が曇って、運転士さんが頻繁にサイドの窓を拭いています。その様子を眺めながら、さっき浜寺駅前駅で電車を待っているとき、こんな大雨に遭遇しなくて本当に良かったわ……、と胸をなで下ろす筆者なのでありました。

(おじま あきら)