「アジアを出ると自分たちの戦いができなくなると思うし、実際、アジアの中でやるのと外でやるのとでは内容に差が出てしまうことは認識している。そのことについては私の責任だと思う。ではどうしたらこの課題を修正できるのか。自分が先頭に立ってやっていかないといけないという気持ちだ」

 ベラルーシに0−1の敗戦を喫した直後の記者会見で、ザッケローニ監督はこうコメントした。

 しかしながら、問題の本質が本当にホームとアウェーという環境の違いにあるのとかといえば、それは違う。なぜなら、今年8月14日に宮城スタジアムで戦ったウルグアイ戦(2−4で敗戦)でも、さらに言えば5月30日に豊田スタジアムで戦ったブルガリア戦(0−2で敗戦)でも、同じように日本は自分たちの戦いができずに敗戦を喫しているからだ。

 指揮官が忘れっぽいのか、あるいは問題の焦点をぼかそうとしているのかは定かではないが、いずれにしても現在の日本代表が、ヨーロッパの第2グループ以下の国と戦っても、自分たちのサッカーができないということだけは間違いない。

 実際、このベラルーシ戦を振り返ってみても、そこに勝てそうな要素はひとつも存在しなかった。

 日本がボールキープできていたのは、ほとんどが日本の最終ラインと中盤が横パスをつないでいるときだけ。全体が連動してしっかりと網を張る相手の中盤の前でパス交換を繰り返すのが精いっぱいという展開は、4日前のセルビア戦と同じだ。さらに言えば、相手のプレッシングから、最終的に相手のFWと中盤に囲まれてボールを失ってしまうシーンも、セルビア戦同様だ。最も危険なボールの失い方である。

 失点シーンはまさにその象徴だった。ボランチの長谷部誠が中盤で相手のプレッシングに遭い、ボールを奪われたところから始まったベラルーシの連続攻撃が、結局はこの試合の決勝ゴールにつながってしまった。もちろん、たまたまボールを失ったのが長谷部なのであって、あの場面でボールを持っていたのが遠藤保仁でも、あるいは下がってボールを受けた香川真司でも、おそらく結果は同じだったと思われる。

 そもそも、相手はヨーロッパ地区のワールドカップ予選でグループ最下位に沈むチームであり、しかも4日前のスペイン戦とはGKを含めて7人ものメンバーを入れ替えてきたのである。

 そのベラルーシに対して日本は、終始、思惑通りに試合を運ばれてしまった。試合終盤には、あわやセルビア戦の再現とも言えるようなカウンターも受けていた。本田圭佑の必死の戻りと相手の稚拙なプレイによって失点こそ免れたが、この試合が4日前と同じスコアで終わっていても、まったく不思議ではなかったというのが実際のところだった。

 わずか4日前に起こった問題に対する修正の跡はまったく見られず、同じ過ちを繰り返す。もっとも、セルビア戦後に「2失点目は引いて守っていても仕方なかったから。個人的には今日は0−1のスコアだと思っている」と指揮官がコメントしているのだから、修正を望むことはしょせん無理な話なのかもしれない。

 今、懐かしく思い出されるのは、去年6月に行なわれたW杯アジア最終予選の最初の3連戦。とりわけ初戦のオマーン戦(3−0で勝利)で見せたザッケローニ監督の指導力である。

 12年2月に豊田スタジアムで行なわれた3次予選最後のウズベキスタン戦で、相手が狙っていたカウンターに対する備えをおろそかにしたことによって敗北(0−1)を喫した後、日本は親善試合でも同じようなカウンターを受ける場面が目に付くようになっていた。

 就任当初に見せた勝負に対するこだわり、あるいは自ら掲げるチーム戦術の徹底という部分で、もはや指揮官に妥協が見られ始めたのかと思われたが、ザッケローニ監督は最終予選までの間に、もう一度チームを基本に立ち返らせ、カウンター対策を完璧に修復してみせた。

 それはまさしくヨーロッパの最前線を経験した指揮官の面目躍如と言えるような指導力だった。イタリア人指揮官らしい、勝負に対するこだわり、戦術の徹底ぶりだった。

 ところが最近のザッケローニ監督は、カウンター対策のみならず、ピッチ上で起こっている問題に対して目をそらすようになっている。少なくともコンフェデレーションズ杯以降、いや、今年に入ってからと言ってもいいが、攻守両面における問題点はいまだに放置され続けている。

 確かに、選手の駒不足など指揮官の力だけではどうしようもない部分はあるかもしれない。だが、就任してから最初の2年間でできていたことが、今できなくなっているというのは大きな問題だ。選手個々の力が2年前より下がっていることは物理的にもあり得ないし、むしろ選手はこの2年間で多くの経験を積んでいるのだから、そこは指揮官の指導力の問題だと言っていいだろう。

 オーストラリア代表は、このタイミングで希望の見えないオジェック監督に見切りをつけた。韓国も予選通過後に指揮官を代えた。明るい兆しどころか、悪化の一途を辿っている日本が、このまま指をくわえて本番に臨んでいいわけがない。

 11月にはオランダ代表と、そしてもう1試合はおそらくベルギー代表と親善試合を行なう。今回の2試合より1ランクも2ランクも上の、ワールドカップに出場するチームの中でも上位に位置する強豪である。

「自分の責任」、「自分が先頭に立ってやっていかなければいけない」という、今さら感たっぷりの台詞(せりふ)ではあるが、発した本人がそこにどれほどの重みを感じているかは、来月にはっきりするはずだ。

 指揮官は以前のような指導力を発揮して、チームが決定的なダメージを負うことを防げるのか? 仮に何の修正も施さないまま強豪に挑んだとしたら、試合結果にかかわらず、そこで見切りをつけるしか道はない。指揮官がドラスティックな変化に着手できないのであれば、もはや協会がそれを実行するしかないと思われる。

 半年間でチーム力を上昇させた例など、過去にたくさんあるのだから。

中山淳●文 text by Nakayama Atsushi