iPhoneの値引き合戦で一歩リードするau。その安さのカラクリとは?

写真拡大

ドコモ、au、ソフトバンクの3大キャリアによる「iPhone戦争」。各社とも独自の値引き合戦を繰り広げているが、どこがもっとも“お得”なのか?

発売直後、取材班が都内のケータイショップを回ったところ、機種代金の実質負担で最も安かったのがauだった。

例えば、「5s・32GB(MNP/2年契約)」の場合、端末の実質負担はドコモ1万80円(420円×24ヵ月)、ソフトバンク1万320円(430円×24ヵ月)に対し、auはなんと“マイナス”1万680円。

※上記はいずれも、取材日(9月下旬)の都内ショップで見つけた価格です

auだけ、なぜこんなに安いのか?

「月月割(ソフトバンク)や月々サポート(ドコモ)など、毎月の割引は他社でも定番ですが、auの場合はそこへさらに機種代金の値引きが加わります。ちなみに、『5s(32GB)』の値引き額は2万1000円です」(auショップ店員)

そこに「毎月割(2825円)」が加わり、端末の実質負担はマイナス1万680円になるわけだ。通信ジャーナリストの神尾寿氏が解説する。

「端末代や基本使用料、パケット代などは各キャリアが設定しますが、店頭でのキャッシュバックなどは店側の裁量で決まります。そこで、auは新型iPhone発売に当たり、店側に莫大なインセンティブ(販売奨励金)を用意しているのです」

auが用意したインセンティブは、そんなに強烈?

「MNPによる新規契約1件ごとに、KDDIから店側に6万5000円以上が支給されているようです。業界相場は新規契約1件につき3万円前後ですから、その額の大きさがわかるでしょう。販売店のなかには、発売から10日間で1年分の利益を上げた店もあるほどです」(神尾氏)

となると、3キャリアの熾烈な争いではauが一歩リードか。

「これから在庫が潤沢になる年末までが第1ラウンド。その勝者となるのはおそらくauでしょうね。他社を上回る値引きやキャッシュバック、それにLTEプラチナバンド対応もユーザーにとっては魅力です」(神尾氏)

だが、いつまでもauの優位が続くとは限らない。

「MNP獲得のために積んでいる異常なインセンティブが引き金となり、auは必ず失速します。というのも、現在のMNP獲得コストを回収するには18ヵ月から20ヵ月は必要になると見込まれます。つまり、それだけ長く利益を生まない客を抱え込んでいる状況にあるのが今のau。契約期間は24ヵ月ですから、そこには利益が出始めた頃に客に逃げられるリスクもあります」(神尾氏)

神尾氏によれば、一般的に10ヵ月ほどで顧客の獲得コストを回収し、それ以降に出る利益を基地局増設などの設備投資に回すというのがキャリアのビジネスモデル。

「自らのクビを絞めるように、今、auはその原資が得づらい収益構造をつくっています。今後、自慢のプラチナバンドも、ユーザー数の増加に追加のインフラ投資が間に合わなければ“目詰まり”を起こす恐れもあります」(神尾氏)

iPhone購入を考えている人の悩みは、まだまだ続きそうだ。

(取材/興山英雄)