プライベートバンクのメッカ・スイス・チューリッヒの街並み 

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 前回、ジャージー島の金融機関から送られてきた手紙を例に、タックスヘイヴンをめぐる国際環境が大きく変わりつつあることを書いた。

[参考記事]
●イギリス、ジャージー島の金融機関が情報開示へ EU居住者のタックスヘイヴンのメリットが消滅

 今回は、ロナン・パラン、リチャード・マーフィー、クリスチアン・シャヴァニュー『[徹底解明]タックスヘイブン――グローバル経済の見えざる中心のメカニズムと実態』(作品社)を紹介しながら、この問題を考えてみたい。

 本書の著者のうちパラン、シャヴァニューには『タックスヘイブン――グローバル経済を動かす闇のシステム』(作品社)という共著があり、本書はそれに新しい知見と調査結果を加えたタックスヘイヴン研究の決定版だ。

 著者たちは税の公正な執行を求める立場からタックスヘイヴンに批判的だが、その叙述は偏向したイデオロギーにはとらわれず、客観的なデータに基づき、中立的な立場から「税の楽園」の謎に迫ろうとしている。

世界最大のタックスヘイヴンはイギリスとアメリカ

 本書を一読すればタックスヘイヴンの歴史から現状、将来までを俯瞰できるが、400ページを超える大著に目を通す余裕のあるひとばかりではないだろうから、著者たちの主張を要約してみよう。

(1)タックスヘイヴンはグローバル経済の中心であるが、その事実はこれまで隠蔽されてきた

 タックスヘイヴンはヨーロッパの小国やカリブの島国、香港・シンガポールといった都市国家(地域)など“周縁”の問題だとされてきたが、「世界のマネーストック(通貨残高)の半分はオフショアを経由している」「外国直接投資(FDI)総額の約30%がタックスヘイヴンを経由して投資されている」との専門家が指摘があるように、タックスヘイヴンこそがグローバル経済の隠された中心だ。

 一例をあげれば、中国に対する最大の投資国は香港、2位は英領ヴァージン諸島で、その後に韓国と日本が続く(2007年)。また日本からの証券投資がもっとも多いのは米国向けの約94兆円だが、第2位はケイマンの約15兆円だ(2012年)。

 同書では、2004年6月現在、全銀行の預金総額14兆4000億ドルのうち5分の1の2兆7000億ドルがオフショアに保有されているというデータも紹介されている。

(2)世界最大のタックスヘイヴンはアメリカとイギリスだ

 アメリカはスイスやケイマンなどの低税率と守秘性(銀行秘密法)を厳しく批判しているが、非居住者による米国への投資には税の優遇措置があり、デラウエア州やネヴァダ州はきわめて企業に有利な法体系を有している。

 イギリスはジャージー島、ガーンジー島、マン島の王室属領、ケイマンやジブラルタルなどの海外領土、シンガポール、キプロス、バヌアツのようなイギリス連邦加盟国、香港などの旧植民地がタックスヘイヴンのグローバルネットワークを形成しているほか、ロンドンのシティ自体がイギリスの金融政策から事実上独立したタックスヘイヴンになっている(この問題はきわめて興味深いのであらためて書くことにする)。

 この両国(地域)に次ぐタックスヘイヴンとしては、スイスや香港、シンガポール、ドバイのほかに、グローバル企業に法人税の優遇措置を提供するオランダとアイルランドがある。

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