バブル景気隆盛前夜の1983年に面白い調査報告が発表された。当時まだ珍しかった億ション購入者の申告所得に関する調査報告だった。


都内一等地にある4億円超の高級マンションを買った約400人のうち、申告所得1000万円未満の者が40%、1000万円から3000万円未満の者が33%、3000万円から1億円未満の者が18%、おそらく妥当な申告所得1億円以上の者がわずか2%、そして無所得の者が7%もいたのだ。


悠々自適な不労所得者という考え方も成立するが、それにしても7%というのはあまりにも多い。そもそも金額のデカさからすれば、申告所得1000万円未満というのも現実味が薄い。この両者をあわせると47%、つまり約半数の者があり得ない買い物をした計算だ。


また、同時期に800万円超の高級外車購入者のうち、9%の者がやはり無所得であった。短絡的な表現で恐縮だが、帳簿上はすってんてんのおけらが億ションに住み、高級外車を乗り回していたことになる。


ところが、この数字は30年後の現在もそれほど変化がない。


2012年度に販売された5億円超のある高級マンション購入者のうち、申告所得ゼロの者がなんと11%もいたというのだ。一部の抽出とはいえ30年前より4ポイントも増えている。こんなご時世に購入者の10人に1人が高等遊民とでもいうのか?


地下経済研究者によれば、バブル崩壊、平成大不況、リーマンショックを経験してなお、日本のアングラマネーは拡大を続けているという。30年前におよそ70兆円規模と言われていたが、現在は100兆円を超えるという試算もある。純然たる税収のなんと250%が地下経済に隠れているのだ。


言うまでもなく、地下経済の住人はもっぱら非合法組織人である。だが、一般庶民のささやかな節税がその一角を支えている現実もある。それは国の経済政策に不満を抱く国民のささやかな反政府運動でもある。もちろん、脱税を容認するつもりはないが、地下経済の数字から国民の心情が垣間見られることもまた事実なのだ。


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