もっとも素朴だが、なかなか答えが出ない問題、良い会社とダメな会社の違いについて、大前研一氏が解説する。

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 良い会社とダメな会社の最も大きな違いは何か?

 これまで40年にわたって国内外の企業の経営コンサルティングを手がけてきた私の経験からすると、それはたった一つのことに集約される。「経営トップが業績を立て直すためにどんな方針を掲げるか」ということだ。良い会社の経営者は「我が社の問題はこれだ」と一つのことしか言わない。一つのことを、4〜5年かけて徹底的に実行させる。

 好例が、先ごろ100歳で亡くなった豊田英二・元トヨタ自動車最高顧問だ。トヨタ“中興の祖”と呼ばれた英二氏は「乾いたタオルでも知恵を出せば水が出る」と、無駄をなくすことだけを言い続け、トヨタの代名詞となった生産革新「カンバン方式」を確立した。

 常に強い危機感を持ち、私がトヨタ幹部社員1500人を集めた研修会に講師として呼ばれた時も「慢心は最大の敵だ。間違ってもトヨタを褒めないでくれ。トヨタがいかにダメか、それだけを言ってくれ」と何度も念を押されたほどである。

 一方、ダメな会社の経営者は、改善策を10も20も並べ立て、それらを全部やらせようと檄を飛ばす。しかし、社員は次々に出される指示に追いつけなくなり、結局は何も実現しない。

 良いコンサルタントとダメなコンサルタントとの違いも同じである。良いコンサルタントは、問題点を最も大きな一つに絞り込み、その改善策だけ提案する。

 ところがダメコンは、会社を分析して出てきた問題点が30あったら、そのすべてを指摘し、それを反転した改善策を羅列する。問題点の逆さまが改善策だと思っているからだ。しかし、会社は30もの改善策を実行できるわけがないので、どれも中途半端か、全く実行されずに終わってしまう。

※週刊ポスト2013年10月25日号