消費税の増税はネガティブだが、日本株から降りるのはまだ早い
言い換えれば、法人税減税や特区での規制緩和は、すべて供給サイドについての政策。これだけでは経済全体を押し上げるには力不足といえる。たとえば、エコカー減税のような需要サイドの浮揚策が出てこない限り、成長戦略によって相場が大きく押し上げられることはないと白川さんはみているようだ。
また白川さんは、直近の米国株安についてこう言及する。「米国のQE3(量的緩和第3弾)の縮小やFRB(連邦準備制度理事会)の議長交代という?不確実性〞が高まっていて、それがリスクオフの動きを生み、米国の長期金利上昇、株安につながっています。現在は、その不確実性を市場が織り込んでいる最中といえますが、興味深いのは、米国の実質長期金利が大きく上昇したのにもかかわらず、ドル/円相場が上昇していないこと。日米の実質金利差を考えると、1ドル=105円以上にドル高(円安)が進んでもおかしくはない状況です」
円安・株高シナリオ実現の可能性も残る
一方、現状では可能性はあまり高くないものの、消費税率の引き上げが先送りか小刻みになり、QE3縮小も小規模にとどまれば、目先は日本にとって円安・株高という最良のシナリオが訪れそうだ。幸い2020年のオリンピックが東京に決定したことも追い風となりそうだ。
「最良のシナリオとなった場合は、QE3や消費税増税の決定前に議論の内容などが漏れ出てくる可能性を考えると、9月末くらいから相場は反転をはじめ、11月ごろまでには日経平均が1万6000円を突破する可能性があります。爆発的に日本株だけが上がることはないと思いますが、秋までは大幅上昇の可能性があるので、いま慌てて撤退する必要もないでしょう」
白川浩道
クレディ・スイス証券 チーフエコノミスト
1983年、日本銀行に入行。91〜94年には欧州通貨危機、北欧金融危機の中、OECD(経済協力開発機構)の経済総局エコノミストとして活躍。97〜98年、国際会議で総裁補佐を務める。日本を代表するエコノミスト。
この記事は「WEBネットマネー2013年11月号」に掲載されたものです。