消費税の増税はネガティブだが、日本株から降りるのはまだ早い
株式市場の動向を大きく左右するとされる消費税率引き上げ問題。果たして、外国人投資家はこの問題をどう見ているのだろうか。新たに浮上している成長戦略の評価も含め、白川浩道さんに検証してもらった。


消費税引き上げなら外国人買いは期待薄?

8月下旬、政府は有識者60人に対して、消費税引き上げの是非、引き上げた場合と引き上げを先送りした場合の景気や財政再建への影響などの意見を聞く「集中点検会合」を開催した。

クレディ・スイス証券チーフエコノミストの白川浩道さんも、有識者の一人として集中点検会合に出席している。ここでは、消費税率引き上げ問題を中心に安倍政権の政策や今後の相場動向について話を聞いた。

「海外のエコノミストやストラテジストの間でも、消費税引き上げに関して意見が分かれているのが実情です。今のところ、彼らの6割程度が消費税引き上げを『時期尚早』と捉えている印象で、反対派は『消費税引き上げに耐えられるほど日本経済は回復していない』『日本再興戦略の効果を見極めてから引き上げるべき』というスタンスです。要は、消費税増税が行なわれた場合、半分以上の外国人投資家が日本株買いに消極的になる可能性が高いということ。個人的にも、景気への影響やデフレ脱却が遠のくことなどを考えても、いま消費税率を引き上げるべきではないと考えています」

白川さんは、基本的には直近の消費税増税には反対だが、「毎年1%ずつの増税ならインフレ期待が高まり、金利上昇もある程度抑えられるので、株高となる可能性がある」と指摘する。

「ただ、増税を小刻みにする、あるいは見送った場合は、地方自治体の反発が強まり、政治問題化することも考えられます。10月1日の日銀短観の内容次第ではありますが、現状では予定通りの増税が発表される可能性のほうが高いといえるでしょう」

もちろん、安倍首相も消費税引き上げという?ムチ〞だけでは、デフレ脱却が遠のく可能性があることはわかっている。そこで、?アメ〞の政策として打ち出しているのが法人税の減税だ。

規模のサプライズや需要側の政策が必要か

現在、日本の実効法人税率は、先進国の中では米国と並んで最高水準にある。これが引き下げられれば、日本企業の国際競争力が高まるのは必須だろう。

「実は、法人税減税についても外国人たちは懐疑的。日本では、これまで何度も法人税率の引き下げが取りざたされてきましたが、結局は実行されませんでした。だから、今回も『どうせしないだろう』と考えているようです。また、実行したとしても、すでに日銀の金融緩和によってマーケットには資金があふれているのに、これ以上企業のキャッシュフローを増やしてもあまり効果がないとの見方もあります。そう考えると、安倍首相が数%程度の法人税減税に踏み切っても株式市場を大幅に押し上げる効果は期待できません。一気に20%台半ばまで引き下げるなど、ある程度の規模のサプライズを伴ったものでないと効果は限定的でしょう」

安倍首相は成長戦略として、農業などの競争力強化や特定の地域に限定して規制を緩和する「国家戦略特区」の創設なども打ち出している。これらが成長戦略の?秘策〞として株式相場浮上の契機になるとの声も聞かれるが、市場ではどう捉えられているか。

「安倍首相は規制緩和策などを通して『外国企業の対内直接投資を2020年までに現在の2倍にする』との方針を打ち出していますが、10年先の目標では買い材料にはなりません。そもそも、これまで打ち出されてきたアベノミクスの成長戦略が期待外れだったため、外国人投資家の日本株に対する期待感も相当落ちているようです」