「ダイアナとハスナットの恋愛には心揺さぶられる」と話す、オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督/撮影/野口彈

写真拡大

1997年8月31日、36歳の短すぎる生涯を閉じたダイアナ元英国皇太子妃は間違いなく、世界で最も愛されたプリンセスだと言える。彼女の突然の死から15年以上経った今でも人々はダイアナについて語り、彼女の美しさを思い出す。ダイアナが皇太子と離婚し王室を離れ、ひとりで歩いた最期の2年間を描いた映画『ダイアナ』(10月18日)が公開される。監督は『ヒトラー 最期の12日間』(04)で知られざるヒトラーの姿を描いたオリヴァー・ヒルシュビーゲル。実在した人物を描くために年密なリサーチを重ね、重厚なドラマを創る名手だ。来日したヒルシュビーゲル監督に、ダイアナになりきったナオミ・ワッツの演技や撮影秘話について聞いた。

【写真を見る】制作するにあたりダイアナをリサーチ。“掃除魔”だったという事実を知って親近感を持ったという/撮影/野口彈

映画の中心で描かれるのは、ダイアナと心臓外科医のハスナット・カーン(ナヴィーン・アンドリュース)の秘められた恋だ。「私がこの映画の脚本を読んだときに最も惹かれたのは、普遍的なラブストーリーだということ。たとえ主人公がダイアナとハスナットでなかったとしても、ふたりの恋愛には心を揺さぶられるものがある」

映画のためにダイアナに関するリサーチを進めるうちに、知られざる彼女の姿が明らかになっていった。例えば、まだAIDSの治療法も見つからず不治の病だと考えられていた頃に、ダイアナはニューヨークの病院に患者を慰問し、抱きしめて彼らを勇気づけた。そして、映画でも描かれているように、相当な“掃除魔”だったらしい。「ダイアナがハスナットの自宅に忍び込み、キッチンを掃除するシーンはおかしくも愛らしいシーンだ。ダイアナはストレスを感じると宮殿中を掃除して回っていたらしい。プリンセスなのに(笑)。そのことを知ってから、彼女のことをずっと身近に感じられるようになった」

実際の事件や実在の人物を多く描いてきたヒルシュビーゲル監督は、ナオミ・ワッツの渾身の演技を引き出した。「監督の最も大事な仕事はキャラクターにぴったりの役者を見つけること」と前置きした上で、彼女の演技について語ってくれた。「ナオミもナヴィーンも第一希望の役者だった。どんな映画を観てもナオミは役柄になりきっていて、ナオミ・ワッツが演じていることを忘れてしまう。彼女はダイアナの過去の映像から発声方法、目の動き、所作などを真似し、自分のものにしていった。ふたりの演技に通じるのは、『彼女(彼)が自分の中に生きている』という強い意志を持って演じていることだと思う」

そして、監督がこだわったロケーションも映画の成功に一役買っている。ダイアナの秘められた恋というセンシティブな題材を扱う映画にも関わらず、英国王室は実際のケンジントン宮殿での撮影を許可。「最初は、ハイド・パークにケンジントン宮殿風の門を作って撮影するつもりだったが、オリンピックの影響で難しくなってしまった。そこで王室広報が『ケンジントン宮殿で撮影してはいかがですか?』と言ってきたんだ。宮殿の中に立ち入らなければ問題ないと。英国王室は撮影にとても好意的だったよ」

元々ダイアナに興味がなかったヒルシュビーゲル監督だが、リサーチすればするほどにダイアナに惹かれていったという。そんな監督がダイアナの人生を徹底的に調査し忠実に描いた本作。その渾身の一作をしっかりと受け止めてほしい。【取材・文/平井伊都子】