過熱するNISA口座開設に意外な落とし穴

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来年1月からスタートするNISA(ニーサ)を巡り、金融機関の口座獲得競争が過熱している。

NISAとは少額投資非課税制度のこと。そのモデルはイギリスで1998年からスタートしているISA(アイサ)だ。概略としては、非課税期間は5年で、年間100万円、総額500万円まで投資した分に発生する値上がり益、配当金、分配金が非課税になる。対象は株式ならびに株式投資信託であり、REIT(不動産投資信託)やETF(上場投資信託)も含まれる。また一部のネット証券会社は、米国株なども対象にする予定だ。ただし、現在保有している商品は移管できない。あくまで新規購入分が対象となる。

NISAを利用するためには、金融機関にNISAの口座を開設しなければならない。ただし、口座開設ができるのは、1人1金融機関のみ。ネット証券会社と銀行の両方にNISA口座を開くことはできない。それが一段と口座獲得競争を激しいものにしているのだ。口座開設受け付けは10月からだが、6月の時点ですでに一部の金融機関は、事前予約を受けつけたり、キャッシュバックのサービスを展開していた。

ただし、金融機関選びには、くれぐれも慎重を期したい。というのも1度口座を開いてしまうと、最低4年間は金融機関の変更が認められないからだ。制度上は、4年経過した時点で金融機関の変更が認められているものの、変更する人はほとんどいないと思われる。なぜなら、あまりに利便性に欠けるからだ。

たとえば2014年から毎年100万円ずつ投資すると、17年の時点で、NISA口座には投資元本ベースで400万円が積み上げられている。

問題はここからだ。最初にNISAの口座を開いた金融機関Aに対して何らかの不満があり、口座を他の金融機関Bに移そうとした場合、まず金融機関AのNISA口座にある400万円を全額解約しなければならない。

しかし、金融機関Bに移管できる金額は100万円まで。積み上げていた400万円のうち300万円は、行き場を失う。非課税メリットを受けられた金額が、その時点で100万円になってしまうのだ。それでも金融機関を変更したいと思う人は、まずいないだろう。

したがって、最初の金融機関選びがとても重要になってくる。キャンペーンにつられて、あるいはなじみの金融機関だからと軽々しくNISA口座を開いてしまうと、激しく後悔することになるかもしれない。

では、どの金融機関に口座を開けばいいか。大事なのは、商品の選択肢が多いかどうかという点だ。特定の投資信託会社のファンドばかりに取り扱いが偏っている、あるいは同じような資産クラスに投資するファンドばかり扱っているというような金融機関は、やめたほうがいい。

また、せっかく非課税メリットが享受できるのだから、購入に際してのコストはできるだけ抑え、高いリターンが期待できる商品が選べれば、それに越したことはない。高いリターンが期待できる商品は、リスクも高いが、非課税メリットを活かすなら、それでもハイリスク・ハイリターン型の商品を選ぶべきだろう。3%のリターンよりも、30%、あるいは50%のリターンに対して非課税措置を受けたほうが、はるかに非課税効果は高い。その意味では、個別銘柄やレバレッジのかかるETFなどに投資できる金融機関のほうが得策だ。NISA口座でリスクの高い商品を購入しても、保有ポートフォリオ全体でリスクをコントロールすればいい。

商品の選択肢が広く、かつローコストでそれらの商品を取引できるとなると、NISA口座を開設する金融機関としては、インターネット証券会社が最適ということになるだろう。

(ジャーナリスト 鈴木雅光)